ディスプレイ開発は、2年おきにテーマが変わる。2023年は、マイクロレンズアレイのMETAパネルが登場した。これは大イノベーションであり、毎年はさすがに無理だ。そこで2024年の有機ELパネルは、マイクロレンズアレイ(MLA)技術の第2弾として、回路での改良に力を入れた。

 LGディスプレイが画質改善を始めたのは、2022年の第2世代パネル「OLED.EX」がその第1弾(EXとはEvolution=進化とeXperience=体験の頭文字)。パネル寿命を長期化させる重水素効果により、ピーク輝度を30%高めることに成功した。第2弾が、2023年のマイクロレンズアレイ。ブランドは「META」(超越という意味)を与えた。

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WOLED方式は環境にも優しい

mini LEDよりプラスチック使用量が圧倒的に少ない

 それまでの構造では、発光層から出た光の多くがパネル内部での迷光反射によって外に発出できず、高輝度化にも限界があった。そこで極小のレンズ群を有機EL発光層の上に被せることで、光の利用効率を格段に上げた。マイクロメートルサイズの凸レンズの層――マイクロレンズアレイを有機ELレイヤーの上に置くことで、光を強制的に前方に向けさせるという仕組みを開発したのである。

 その数は超多い。77インチ(4K)の場合、1画素あたり5117個、合計424億個のマイクロレンズの層が形成されるという。OLED.EXパネルでは、ピークが1300nitsだったが、2023年のMETAパネルでは60%の輝度向上が実現し、2100nitsを得た。さらに視野角も改善した。

 2024年は、「META Technology 2.0」となった。つまりMETAはLGディスプレイのグローバルでの有機ELの技術ブランドで、その名の元に、毎年画質改善されていくというストーリーだ。その伝でいくと、昨年のMLAのバージョンは「META Technology 1.0」だ。

45型、240Hz駆動の曲率可変モニター。第2世代のMETAパネルだ

世界初、480Hz駆動の27型有機ELモニター

 では、META Technology 2.0は何が変わったか。

 ①ピーク輝度が3000nitsになった。昨年の2100nitsから42%輝度向上した。これに応じて、全画面輝度(平均輝度)も向上している。大胆なピーク輝度向上は、MLA部分の改良MLA+(Micro Lens Array Plus)で、過去1年間に蓄積されたMLAに関するデータに基づき、レンズの角度を最適化することで、より効率を上げるとしている。

 さらにアルゴリズム(回路)のMETA Boosterも刷新した。これまでも「MLA + META Booster」のコンビが使われていたが、新しいアルゴリズムは「META Multi Booster」とネーミング。細部をエンハンスする「Detail Enhancer」と共に動作する。

 ②カラー輝度の改良。カラー輝度とはRGBの各色のピーク輝度を合成した値だ。いわゆる「輝度」はRGBが合成された白の明るさを指すが、これは各原色の輝度だ。RGB発光なら、カラー輝度と輝度は、基本的に同一になる。

31.5インチの2K/4K可変モニター。フレームレートで解像度を変化させる

30インチ/2K、55インチ/4K、77インチ/4Kの透明有機ELパネルを開発済み

 LGディスプレイのWOLED方式(白発光する有機ELの光を、カラーフィルターで着色。輝度ブーストのために白のフィルターを加える)では、原理的に白のカラーフィルターが色再現に影響を及ぼしている。そのため白輝度よりカラー輝度の方が低くなる。2022年のOLED.EXでは白輝度1300nitsに対して、カラー輝度は450nits、2023年のMETA Technology 1.0では、白輝度2100nitsに対して730nitsだった。

 ところが、2024年のMETA Technology 2.0では、3000nitsの白輝度に対して、何とカラー輝度は倍増の1500nitsに向上したのである。これは「W」に頼らずとも、そもそもRGBで輝度を上げられるように、MLAの高輝度効果が効いていると解釈できよう。もちろん、META Multi Boosterも効いている。

 META Technology 2.0は55、65、77、83インチの4K、77、88インチの8Kに展開する。パネルメーカーの努力は、セットメーカーでの画質づくりに貢献するわけで、実際の新有機ELテレビの登場が、大いに楽しみではないか!

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