ベルギーのギャラクシー・スタジオで開発されたイマーシブ・フォーマット、AURO-3Dは、資本構成を変え、新会社NEWAUROB.V.の元で新展開している。

 昨年までは、オーディオ・ビジュアルマニア向けのイマーシブオーディオコーデックというイメージが強く、製品も高級なAVアンプにほぼ限定されていたが、CES 2023で、ストリーミングとスマートフォンの新世界に参入を宣言。さらにストリーミングのためのスケーラブル・オーディオコーデックAuro-Cxも発表した。

Auro-3Dサウンドバーのリファレンスモデル。今年は商品化が予定されている

かつての盟友、ストームオーディオで再生

 CES 2024では、その方向に添った新しい展開が打ち出された。チーフ・テクノロジー・オフィサーのBert VanDaele氏は、「Auro-Cxにて、さらにネットワークとの適合性を高めました」と言った。Auro-Cxは通信の伝送スピードが変わると、それに応じて伝送情報量を変化させて対応する適応性が強み。速い速度から、①ロスレス、②ニアロスレス、③ロッシー……と自動的に対応する。

 今年は変化する通信環境に応じてスケーラビリティを強化する新機能が追加された。まず、①チャンネル数変更機能。オリジナルコンテンツが7.1.4などの多チャンネルであっても、通信状態や相手の機器に応じて、デコードするチャンネル数を減らす。受信デコーダーが高級なAVアンプで、しかも通信状態が良ければ、7.1.4のまま再生。相手が、例えばローエンドなスマホなら、同じストリーム信号から2チャンネルにミックスダウンする。

Auro-3D対応スマートスピーカーは、ウィーンのストリーミングオーディオ機器メーカー「ストリーム・アンリミテッド・エンジニアリング」のSoCを搭載する

ストリーミングオーディオ機器メーカー「ストリーム・アンリミテッド・エンジニアリング」のSDK

 ②スケーラブル・サンプリングレート。ビットレートはそのままに、サンプリング周波数を変える。オリジナルが192kHz/24ビットであっても、スマホやタブレットでは、「24ビット」はそのままで、デコーダーでサンプリング周波数を例えば48kHzに落とす。このようなスケーラビリティでは、MQAが開発した通信用のコーデックSCL-6も似た仕組みを持つが、メカニズムが異なる。

 ベネチアンホテルの一室でのデモンストレーションでは、さまざまなモードに変化させて聴いた。音質的にも違いは少なく、切り替え時のクリックノイズも検知できなかった。またAuro-Cxのデコードには未対応(従来のAuro-Codecには対応)の機器用にリニアPCMへのトランスコードもサポートされた。

 デモンストレーションでは他にも、サンフランシスコのStreamsoft社の音楽ストリーミングプラットフォーム「アーティストコネクション」からのAURO-3D信号を、Auro-CodecでエンコードしたリニアPCMに変換し、AVアンプ(ストームオーディオ)で再生した。

スマートフォンではアーティストコネクションのアプリで再生

左はNEWAUROB.V.のCEO、Rudy Van Duppen氏。旧Auro Technologies出身だ。右はチーフ・テクノロジー・オフィサーのBert Van Daele氏。旧Auro Technologies時代から、技術開発に従事

 具体的には512kbpsのイマーシブ信号をセットトップボックス(Nvidia Shield TV Pro)でAuro-CodecエンコードのリニアPCMに変換して、AVアンプで再生したところ、元々のAURO-3Dの良さが活き、とてもリッチなサウンドが聴けた。そこからサウンドバーのリファレンスモデルでの再生も聴いたが、これもとても明瞭だった。ここではバーチャルイマーシブのAuro-Sceneが使われ、ひじょうに広い音場が確保された。実際の製品は、今年に有名メーカーから登場予定という。

 「アーティストコネクション」からのAURO-3D信号は、スマートフォン、タブレット、スマートスピーカーでも再生できる。これらはアーティストコネクションのアプリで再生。Auro-Sceneだから、意外に拡がる音だ。スマートスピーカーはウィーンのストリーミングオーディオ機器メーカー「ストリーム・アンリミテッド・エンジニアリング」のSDK(ソフトウェア開発キット)を搭載する。

 今年のAURO-3Dは面白くなる予感が満載のスウィート取材だった。

Auro-3Dの採用メーカーが増えた