「WASABI」は「吉田兄弟」の吉田良一郎が中心となり、4人の和楽器奏者たちで結成された邦楽ユニット。1月24日には、ソニー・ミュージックレーベルズ移籍後第一弾となるアルバム『BEAMING』が発売される。最新作『BEAMING』がどのようにして作られていったのか、彼らの音楽制作のこだわりについてうかがった。(ステレオサウンド編集部)

※本記事は『ステレオサウンド No.229 2024年WINTER』(発売中)から転載しています。

WASABIが拓く、新たな邦楽の地平

 伝統的な和楽器の邦楽ユニットであるWASABI。ニューアルバム『BEAMING』が、今年1月24日に初回限定盤CD+DVDと通常盤CD、そしてハイレゾという3形態でリリースされる。

 WASABIのネーミングは、「和」と、盛り上がりの「サビ」から。津軽三味線の兄弟デュオ「吉田兄弟」の吉田良一郎が呼びかけ、2008年に尺八の元永拓と太鼓&鳴り物の美鵬直三朗の3人で発足した。その2年後には筝&十七絃の市川慎を迎えた4人体制となり、本格的に活動をしている。これまでにCDアルバム『WASABI』(2012年)、『WASABI2』(2014年)、『WASABI3』(2019年)の3作品を発売。4作品目のアルバム『BEAMING』は、ソニーミュージックからの初リリースである。録音とミキシングは東京・麻布台のサウンド・シティで行なわれ、マスタリングはソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二氏が担当した。

 ひと足先にCDの音を聴くことができた私は、アルバムのジャケット撮影でソニーミュージックに集まったWASABIに、インタビューできる機会を得た。

三浦 はじめまして。WASABIが奏でる和楽器の音世界は実に興味深く、サウンド的にも刺激がありました。オーディオの世界では、昔から和楽器は再生の難しい音源として知られているんです。津軽三味線の吉田さんは、吉田兄弟としてSACDもリリースされていましたね。WASABIは、コンサート以外に学校での公演を重視していると聞きました。

吉田 弟の吉田健一と「吉田兄弟」としてデビューして演奏活動を行なういっぽう、学校でも披露して生徒たちに和楽器に親しんでもらいたいと思って活動してきました。「吉田兄弟」のデビューから10周年を迎えるにあたり、私は学校公演について再考したんです。そこで、他の和楽器の奏者にも参加してもらおうと、民謡でつながりのある太鼓の美鵬くんに相談しました。その縁で尺八の元永さんにも加わってもらい、WASABIが誕生したんです。実は学校には三味線や尺八がほとんどなくて、でも琴はあるんですよ。だったら琴の名手も欲しいと、2年遅れで市川くんにも参加いただいて現在に至ります。

市川 津軽三味線と琴という共演は、それまでほとんどなかったんです。小ぶりの三味線と尺八と琴が演奏するというのは、純邦楽ではあるのですが。

             吉田良一郎(津軽三味線)

             市川慎(筝・十七絃)

三浦 WASABIが奏でる音楽は、民謡の和楽器による響きと純邦楽の和楽器による響きの化学反応ではないかと思いました。オーディオ的にもスリリングで惹かれる音でしたね。音の立ち上がりが素早い楽器ばかりなので気持ちいい。それから、アジアンでもエスニックでもない雰囲気だったことも印象的でした。

吉田 私たちはオリジナル曲にこだわっています。カバー曲は演奏せず、WASABIらしさをなによりも重視して、そのなかに伝統的なフレーズも取り込んでいるつもりです。子供たちが聴いてもカッコいい曲を目指していますね。津軽らしさが感じられる曲もありますよ。

三浦 私は津軽出身ですから、聴いていて楽しかったです。少し意外でもあり、でも効果的だと感じたのは、鳴り物=シンバルの音色が多彩だったことです。

美鵬 厳密にいえばシンバルは和楽器のカテゴリーとはいえませんが、WASABIの楽曲には、とても役立っています。

三浦 パルス的な音色の和楽器が揃っているぶん、新作『BEAMING』の録音は難しかったのではないですか。

美鵬 WASABIは、一斉に演奏する一発録音が基本なんですよ。太鼓の生音は大きいので、私がスタジオの広い空間を占有します。3人はスタジオ内のブースにそれぞれ入って同時に演奏するわけです。

三浦 収録曲の「光耀」だけは鳴り物が含まれておらず、しかも8分を超える曲でした。出だしの尺八の音色が深々と響きましたが、尺八には種類があるのでしょうか。

元永 尺八は穴が5つだけなんです。ですから、曲調や音域にふさわしいよう選んでいます。長さが一尺八寸の尺八をよく使いますが、半音高い一尺七寸や低めの二尺など6本ほどを用意していますよ。

吉田 実はこの「光耀」は10年ほど前から演奏していて、音楽の重心が低いのでコンサートでは締めに使うことが多いんです。これまでのCDでは披露したことのない、とっておきの曲になります。

             美鵬直三朗(太鼓・鳴り物)

             元永拓(尺八)

 WASABIには録音と公演をサポートする、第5のメンバーがそれぞれにいるという。新作の録音とミックスは、マスタリングを担当した鈴木氏のかつてのアシスタントで、DSD録音にも関わった波多腰英靖氏が行なっている。彼は録音における第5のメンバーなのだ。

 新作のCDの音を聴いた私は、ジャズ・フュージョンに親和性のあるワールドミュージックだと感じた。全曲インストゥルメンタルで音のアタックが素早く、小気味良いテンポの楽曲も多い。鋭角的かつ音の色彩感が豊かなWASABIの音楽は、多くのオーディオファイルに受け入れられるだろう。

インタビューは10月中旬に、六本木にあるソニー・ミュージックレーベルズのオフィスで行なわれた。写真左手から吉田良一郎、市川慎、元永拓、美鵬直三朗。新作『BEAMING』について、吉田氏は「WASABIとして、10年以上一緒に演奏してきたからできた作品」と笑顔で語る。

ニューアルバム『BEAMING』 2024年1月24日発売

初回限定盤(CD+DVD)¥4,000(税込)
(ソニー・ミュージックレーベルズ MHCL3060〜61)

通常盤(CD)¥3,000(税込)
(ソニー・ミュージックレーベルズ MHCL3062)

 

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