竹中直人と関川ゆかのW主演。妻を亡くした父と娘の物語を、物理学の概念、荘厳な音楽と映像で描いた映画「DAUGHTER」が、12月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開された。

 数々の映画、ドラマ、アニメやゲーム音楽など多ジャンルで音楽制作を行なっている作曲家・菅野祐悟が、初の監督作品として手掛けた本作。今年開催された横浜国際映画祭のクロージング作品として初お披露目され、好評を集めました。

 12月15日には、映画公開を記念し、初日舞台挨拶&ミニコンサートが開催され、主演の竹中直人と関川ゆか、キャストの上地由真、ED曲アーティストのKANATSU、そして本作の監督・音楽を務めた菅野祐悟監督が登壇した。
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 映画『DAUGHTER』初日舞台挨拶(ミニコンサート付)が12月15日、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行なわれ、ダブル主演の竹中直人、関川ゆか、共演の上地由真、エンディングテーマを歌うアーティストのKANATSU、チェリストの三宅依子、メガホンをとった菅野祐悟監督が登壇した。

 数々の映画、ドラマ、アニメやゲーム音楽など多ジャンルで音楽制作を行なっている作曲家・菅野祐悟の初監督作品となる本作。妻を亡くした父(竹中)と娘(関川)の物語を、物理学の概念、荘厳な音楽と映像で描いた異色作となっている。

 イベント冒頭、菅野監督と三宅による挿入歌『ACT』の演奏と、KANATSUによるED曲『Far Away』の歌唱を行なって観客を魅了し、ミニライブの余韻が残る中、行なわれたトークセッションで、映画を撮ろうと思ったきっかけを聞かれた菅野監督は「文化系男子としては映画というのは男のロマンと言いますか、映画は総合芸術だと思っていて、アート、美術、音楽、ストーリー、それぞれ一つひとつを選択して夢の世界を作ることで、そこに自分の趣味趣向が表現されるわけですけど、その世界でいつかやってみたいなという思いがずっとあって、プロデューサーとの出会いから映画を作る話になって今に至ります」と目を輝かせた。

 また、映画監督の一面を持つ竹中を主演に迎えての心境について菅野監督は「プレッシャーがありましたが、圧倒的な安心感といいますか、右も左も分からず、いろんなことを教えてもらいながら撮っていたので、そこに竹中さんの存在がドンといてくださると、映画の格も上がりますし、現場で竹中さんに『こういう演技にしていただけませんか』とかは言えなかったですけど(笑)、僕の思い以上の演技をしてくださって、アドリブもたくさんしてくださって作品をすごく膨らませていただいたので、本当に感謝しています」と頭を下げた。

 そんな竹中は、同劇場にプライベートでよく来るそうで「なんでここに俺がいるんだろうって、めちゃくちゃ恥ずかしくて……」と困惑し、加えて、自身が出演した作品は恥ずかしくて見られないことを明かし「監督には申し訳ないんですけど、見た友だちに感想を聞いて『ちゃんとやっていた』と聞くと安心する感じで、僕にとって映画は現場でしかなくて……。本当に自分って一生見られないですもんね。鏡に写っている自分は逆だし、背中は見られないし、自分で見られるのは手とか……。まさかスクリーンに映っている自分を見るなんて絶対あり得ないと思って見られなくて……。すみません」と謝罪しつつ、「久しぶりの横浜だったので、横浜の風景をすごく楽しませていただけて嬉しかったです」と笑顔を見せた。

 続けて、竹中は「まさか監督とは『軍師官兵衛』でご一緒だったんですね」と声をかけると、菅野監督は「(作曲家として)こっそりいろんなところで作品の中ではご一緒しているんですけど、同じ作品に関わっていても、お会いするのって打ち上げくらいしかないですし、コロナ禍になってから打ち上げもなくなっちゃって、僕も現場に行くことが少ないのでご挨拶する程度しかないんですけど、撮影でこんなに一緒させていただけて、貴重な経験をさせていただきました」と声を弾ませた。

 さらに、本作の内容にちなみ、両親との印象深い思い出を尋ねられた竹中は「お父さんと夏に釣りに行って、入道雲がゆっくり動いていて、僕はお父さんが釣りをしている姿をじっと見ているのが好きだったことを覚えていますね。それで目を逸らしたときにお父さんがいなくなっていて、探したらテトラポットとテトラポットの間で大きいのをしていたんですよ」と幼少の頃の思い出を回顧して会場の笑いを誘い、「波が高い日だったので心配したんですけど、お父さんはびしょ濡れで上がってきましたね」と懐かしんだ。

 一方、竹中が演じる父親・晴人の娘である美宙(みそら)を演じた関川は、竹中と共演しての感想を求められると「お噂通りアドリブがすごく多くて(笑)、竹中さんのアドリブが逆にセリフより記憶に残っちゃっているんですけど、その場の空気を操るような空気感を持っていらっしゃって、そういう姿は本当に勉強になりましたし、これからの人生でアドリブとかも入れられる女優さんになりたいなと思いました」と羨望の眼差しで竹中を見つめ、「初日にすごく緊張していたんですけど、竹中さんが『いいんだよ、ありのままで』って言ってくださって、アドリブとその言葉に救われた撮影でした。ありがとうございました」と感謝した。

 そして、関川と上地の2人のシーンは、カット割なしで何度も撮影したそうで、上地は「監督のこだわりがすごくて、2人でワインを飲んでいるシーンなんですけど、飲み終わったグラスを置く位置とか、食べたあとのフォークを置く位置とか、座り方とかすべてこだわれていたので難しかったです」と苦労を明かすと、菅野監督は「最初、ワインじゃなくて赤いクランベリージュースを入れて撮影していたんですけど、ジュースがなくなっちゃって途中から本物のワインを使って撮影したら、2人とも調子が出てきちゃってすごく滑らかな演技になって、本当の親友かのようないいシーンが撮れました」と裏話を披露し、満足げな表情を浮かべた。

 また、エンディング曲をレコーディングした際の印象を聞かれたKANATSUは「もともとレコーディングは緊張するタイプで、緊張感はあったんですけど、スタッフのみなさんの“いい作品を作るんだ”という熱意をすごく感じる現場でした」と振り返り、「普段、ポップスをメインに歌っているんですけど、菅野さんは私の歌声のオペラ的な高音の部分を褒めてくださって、それが生きる曲でもあったので、すごく練習して頑張りました」と告白。これに菅野監督は「最後の歌で映画のすべての意味合いみたいなものを回収するように設計していたので、KANATSUさんの歌声と、オープニングのKIM SUNGJE(超新星)さんの2人の音楽によって、映画が底上げされたと言いますか、作品の質が上がったので感謝しています」と語った。

 そして、今回初めて映画を作ってみて、自分の中に映画監督と音楽家それぞれのスイッチのようなものを感じたかと尋ねられた菅野監督は「今まで4000曲以上作ってきていて、何百作品に携わっていると、音楽をやるのが自分の生活の一部みたいになってしまっているんですけど、自分が映像を撮って“もっと泣けるシーンになるはずだったのに……”って思ったときに、自分がポンと音楽を入れたらめっちゃいいシーンになって、“音楽すげー大事じゃん”、“自分が『DAUGHTER』の音楽担当でよかった”、“自分ありがとう”って思いながら音楽をつけていました」と吐露し、「いろんな監督さんが(音楽を)必要としてくれているんだなと感じて、今までもちゃんとやっていたんですけど、もっと頑張ってそれぞれの監督さんの思いに答えられるように、命懸けで一所懸命、音楽を作りたいなと認識できました」としみじみと語った。

映画『DAUGHTER』

ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中

<STORY>
幼くして母親を亡くした娘・美宙と、 死んだ妻の幻影を追い求める父親・晴人。交錯する愛情に翻弄される親子、そして突きつけられる悲劇…。生きること、死ぬこと、愛すること…そんな人生の問いに晴人は人生を掛け、彷徨い、到達した「答え」とは?

監督・音楽:菅野祐悟 主演:竹中直人 関川ゆか
上地由真 近藤勇磨 若林瑠海 松代大介 奥田圭悟 ゆのん 美莉奈 / かとうれいこ
脚本:宇咲海里 制作:Megu Entertainment株式会社 企画/プロデュース:酒井伸泰 エグゼクティブプロデューサー:染谷めぐみ 制作協力:株式会社POPBORN チーフプロデューサー:吉岡純平 ラインプロデューサー:土屋江里奈 監督補:UBUNA 撮影/ドローン撮影/編集/カラーグレーディング:Ussiy 照明/整音/音響効果/MA:中島浩一 録音:横田彰文 サウンドアドバイザー:岩浪美和 編集/カラーグレーディング/モーションタイポグラフィー:仁宮裕 編集:増本竜馬 Bカメラ:福田陽平 助監督:木下遊貴 ヘアメイク:安藤メイ テクニカルディレクター:曽根真弘 音楽制作:ワンミュージック レコーディング&ミキシングエンジニア:葛島洋一 レコーディングスタジオ:Sony Music Studios Tokyo ミキシングスタジオ:ワンミュージック スタジオ オープニング曲「Dream Again」KIM SUNGJE エンディング曲「Far Away」KANATSU 挿入曲 「ACT」チェロ:宮田大 ピアノ: Julien Gernay / 「Daughter」クラシックギター:朴葵姫 配給:SAIGATE
2023年/日本/G/53分
(C)Megu Entertainment