2023年春、オーストラリアのメルボルンで創業し、香港に本拠を置くコーズ(Kordz)社から48Gbps(ビット/秒)対応の高品位ケーブル「PRS4」シリーズが登場した。このシリーズは0.5〜5.0mのPassive(金属導体)と10〜20mのActive Optical(光ファイバー)で構成され、すべての長さでHDMI2.1規格で定義された全機能に対応しているという。

 ここではコーズの「モノづくりフィロソフィー」について改めて整理しながら、PRS4のPassiveと同Active Optical、そして同社製HDMIケーブルのフラッグシップに当たる「Bravo」(金属導体)のパフォーマンスについてインプレッションを綴ってみたい。

プロが安心して使えるHDMIケーブル。信頼性と取り回しのよさを最優先に開発

 コーズが設立されたのは2003年。創業者のデヴィッド・メイヤー氏はもともと経験豊富なカスタムインストーラーで、米国CEDIA(Custom Electronics Design and Installation Association)の中心メンバーだった。コーズ設立の2年後の2005年、HDMI規格が定まるといち早くHDMIのライセンスを取得、その規格を厳格に守ったケーブルの製造に着手、現在同社はHDMIのアドプターの立場にある。

 彼らの出自を整理してみよう。2006年にブルーレイが登場し、金属導体の長尺のHDMIケーブルをプレーヤーとプロジェクター間に用いることがホームシアターで一般的になるにしたがって、インストールの現場で映像が途切れるとか映らないというトラブルが頻発。それがCEDIAの部会でも問題になり、当時最新のHDMI規格を厳密に遵守したHDMIケーブルを開発すべきという機運が高まった。そんな状況の中、CEDIA出身メンバーにより誕生したのがコーズである。

 つまりコーズはカスタムインストーラー等のプロフェッショナルが安心して使える製品というコンセプトを最優先事項としてHDMIケーブルを開発したことが原点なのである。信頼性の高さに加えて、設置現場に直面しているインストーラーからの要望である取り回しの容易さ、つまりケールの柔らかさや軽さも彼らのHDMIケーブルづくりで重要な要素となっている。これらのこだわりは、われわれエンドユーザーにとっても見逃せない利点といえよう。

 また、ケーブル出荷時にHDMIケーブルづくりをはじめてから現在に至るまで、全数検査を実施していることもコーズの大きな特徴だ。一部の製品を抜き取っての検査、なのではなく製造したすべてのHDMIケーブルを検査し、正しい品質が確保されているのかをチェックしたうえで出荷しているわけだ。そうした品質保証の入念さも相まって、電気回路の要らない金属導体タイプは<ライフタイム・ギャランティ>、つまり永久保証、光ファイバータイプは2年保証をしている。このように信頼性のこだわりが徐々に浸透し、ホームシアターだけでなく、映像が途切れることが絶対にあってはならない、プロの現場、医療機関とかテーマパーク、大学の研究室での使用例が増えた結果、ビジネス用途の顧客が主要販売先になっているとのことだ。

 先述したように、Bravoは48Gbps準拠のコンシューマー向けフラッグシップHDMIケーブルだが、金属導体タイプのみで光ファイバータイプはラインナップされていない。長さは3mまで。それ以上の長さになると48Gbps伝送時の規格を完全にギャランティできないからというのがその理由だそうだ。

 PRS4はPRSシリーズの4世代めで、これも8K/60p、4K/120pのHDR対応48Gbps準拠ケーブルだ。金属導体タイプは0.5〜5mで、光ファイバータイプは10〜20mが用意されている。BravoとPRS4の違いはケーブルとプラグの品質にあるそうだ(もちろんBravoが上)。

 また、BravoとPRS4については、受け手側(凹側)の端子を傷めないように端子の引っ張り強度に余裕を持たせているという(2kgまで)。その強度を維持するために、プラグの先端部は一般的な折り曲げ加工ではなく、ダイキャスト(鋳造)製。たしかにこの2つのケーブルは、レコーダーやAVセンターに挿したときのカチッとした感覚がきわめて良好だった。また、プラグ部分のハンダ付けは専用マシンによる超音波溶接。高周波領域の信号劣化を嫌って、手ハンダでの作業はいっさい行なわないという。

 

Metal HDMI Cable
PRS4 Passive

0.5m オープン価格(実勢価格11,000円前後)
1.0m オープン価格(実勢価格11,880円前後)
1.5m オープン価格(実勢価格12,650円前後)
2.0m オープン価格(実勢価格13,750円前後)
3.0m オープン価格(実勢価格16,610円前後)
4.0m オープン価格(実勢価格28,050円前後)
5.0m オープン価格(実勢価格31,350円前後)

●型式 : ウルトラハイスピード規格認証HDMIケーブル
●伝送帯域 : 48Gbps
●導体 : OFC単線
●ケーブル外径 : φ6mm(0.5〜3m)、φ8mm(4〜5m)
●対応機能 : 8K、10K解像度、HDR、eARC、QFT、QMS、ALLM、VRR

金属導体を用いたHDMIケーブルでコーズのセカンドラインに位置する製品。48Gbps対応という高性能と、コーズならではの高信頼性を確保しながら、求めやすい価格を実現したハイコストパフォーマンスケーブル。現在のホームシアターでは、4K映像伝送が安定的にするためには18Gbps伝送が求められるが、本ケーブルでは48Gbpsもの帯域性能を確保。18Gbps伝送時でもその高速性能は安定接続のなどの観点で、大きな意味を持つ

 

Optical HDMI Cable
PRS4 Active Optical

10m オープン価格(実勢価格88,550円前後)
15m オープン価格(実勢価格100,650円前後)
20m オープン価格(実勢価格156,200円前後)

●型式 : ウルトラハイスピード規格認証HDMIケーブル
●伝送帯域 : 48Gbps
●導体 : 光ファイバー+32〜26AWG 無垢銅
●ケーブル外径 : φ5.5mm(10、15m)、φ8.5mm(20m)
●対応機能 : 8K、10K解像度、HDR、eARC、QFT、QMS、ALLM、VRR

天吊り金具に設置されたプロジェクターなどとの接続には、ケーブルの引き回しが長くなり、しかも簡単にケーブル換装がしずらいため、長尺のHDMIケーブルでは、長期間に渡って安定して接続し続けるという信頼性が非常に重要となる。ホームシアター機器設置現場をよく理解しているコーズでは、「高信頼性」「安定接続」「取り回しのよさ」をポイントに長尺HDMIケーブルを開発、その最新製品で48Gbps対応品がPRS4の光HDMIケーブル版「PRS4 Active Optical」だ。10、15、20mの3製品をラインナップしている

 

Metal HDMI Cable
Bravo

1.0m オープン価格(実勢価格16,500円前後)
1.5m オープン価格(実勢価格18,700円前後)
2.0m オープン価格(実勢価格21,450円前後)
3.0m オープン価格(実勢価格24,200円前後)

●型式 : ウルトラハイスピード規格認証HDMIケーブル
●伝送帯域 : 48Gbps
●導体 : OFC単線
●ケーブル外径 : φ6mm
●対応機能 : 8K、10K解像度、HDR、eARC、QFT、QMS、ALLM、VRR

金属導体を用いたいわゆるメタルHDMIケーブルでのコーズ最上位モデル。HDMIコンソーシアムが定めるHDMIケーブルのウルトラハイスピード規格に対応するとともに、HDMI2.1規格で定義された全機能をサポート(PRS4も同様)。高い信頼性と高度なパフォーマンスを両立した。ケーブル自体が比較的細身で柔らかく、狭い空間での接続が強いられがちなAVシステムにおける使いやすさにも配慮されている

 

 

モニター調画質のPRS4 Active Passive
Bravoの情報量の豊富な音に驚く

 今回のテストは自宅のシアタールームで行なった。視聴したのは先述の通り金属導体タイプのBravoの1mとPRS4 Passive(金属導体)タイプの1.5m。それにPRS4のActive Optical(光ファイバー)タイプ15mだ。BravoとPRS4の金属導体タイプは、パナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1の音声専用HDMI出力端子とデノンのAVセンターAVC-A1H間に用い、PRS4 Active Opticalの15mは、DMR-ZR1とJVCのプロジェクターDLA-V9R間に使用し映像伝送を行なった。

 そうそう、忘れるところだったが、ぼくのサブシステムのパナソニックのレコーダーDMR-UBZ1とレグザの65インチ有機ELテレビ65X930間は、この夏以降Bravoの3mタイプで接続している。以前使っていたHDMIケーブル(金属導体タイプ)に比べて、ハイライトの伸びがぐんと良くなるとともにノイズの粒子がいっそう細かくなり、その画質向上効果に驚かされたことをまずご報告しておきたい。

 

取材は山本浩司さんのご自宅ホームシアター「お一人様限定オレ様シアター」で行なった。110インチスクリーン+6.1.6サラウンドシステムでBravo(1m品)とPRS4 Passive(1.5m品)、PRS4 Active Optical(15m品)の3本を試した。なお、65インチ有機ELテレビを用いたサブシステムでは、今夏からBravoの3m品も愛用しているとのこと

 

Bravoのヘッドシェル(Kordzの印字がある部分)はアルマイト処理のアルミニウム合金製、実際にHDMI端子に差し込むコネクター部分は、ソリッドメタルによるダイキャスト一体成型。多くのHDMIケーブルでは、コネクターを金属を折り曲げて作られる製品が多い(コネクター部をよく観察するとご理解いただけよう)。コーズでは、カチッと嵌りつつ、挿入される端子側に過剰な負荷がかからないような高精度のダイキャスト加工を行なっている。こうした細部のこだわりの積み重ねによる高い信頼性、ユーザー目線でのモノづくりこそがコーズのアイデンティティとなっている

 

 

 では、プロジェクターのDLA-V9Rと大型スピーカーのJBL K2S9900を使ったメインシステムでのテスト結果について述べる。現状ぼくは映像用、音声用ともに定評のある光ケーブルタイプのフィバーPURE3を使っている(映像用は10m、音声用は2m)。それとの比較でレビューしていこう。

 まずはUHDブルーレイ『ロックダウン・セッションズ/エリック・クラプトン』から。画質についていうと、PURE3のほうがピーク輝度が高く感じられ、PRS4はよりフラットな印象。じっくり見ていくと、PRS4のほうが輝度信号とクロマ信号のバランスが整っているのがわかる。PRS4はよりモニター調の画質と言ってもいいかもしれない。

 映画のUHDブルーレイ『最後の決闘裁判』も観てみたが、『ロックダウン・セッションズ』とほぼ同じ印象だった。PRS4は暗部階調の見せ方がじつにナチュラルで、リファレンス的な魅力があった。

 音のチェックに移ろう。PRS4の金属導体タイプとPURE3の2mを『ロックダウン・セッションズ』で比較すると、PRS4は音場が立体的な広がるというよりは音の重心が下がり、ヴォーカルの生々しさが増す印象だった。『最後の決闘裁判』でもダイヤローグの力感が印象的で、真に迫った声を聴くことができた。

 Bravoは、PRS4以上に音像に厚みが加わり、情報量が増える。『最後の決闘裁判』のガヤ(人々の歓声など)の音数が明らかに増え、その変化に驚かされた。また、このケーブルは方向性(どちらの端子を入力側にするか)のメーカーからの指定はないが、両方向を試したところ、ケーブルに記された英文字のアタマをプレーヤー側にした方が音像のまとまりと音場の広がりが好ましかった。購入される方はぜひご参考に。

 

パナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1のセパレートHDMI端子に、Bravo(左)とPRS4 Active Optical(右)をつなぐ。ケーブルはいずれも細身で柔らかく、狭いラック内でも負荷をあまりかけずに接続できるはずだ

 

AVセンターはデノンAVC-A1H。取材時はZR1からのHDMIケーブルだけをつないだが、ストリーミング端末やゲーム機など、多数のHDMIケーブルがつながれることの多いAVセンターでは、コーズHDMIケーブルに共通する細身のケーブルと小型ヘッドシェルは特に使いやすいはずだ。なおBravoの方向性は、メーカーでは特に指定していないとのことだが、実際に試すと本文にある通り、ケーブル外皮印字の文字の流れを基準した向きの印象がよかった

 

東芝レグザ65X930とパナソニックのDMR-UBZ1をBravoの3m品を使って接続。テレビ背面向かって右脇のHDMI端子につないでいる。後方側面に接続端子を備えるテレビが増えているが、その場合も取り回しがしやすいHDMIケーブルはたいへん便利だろう

 

 

 高信頼性を何より大切にHDMIケーブルに取り組んでいるコーズ製品の真面目さ、真摯さに感心させられた今回の取材記事だったが、いかがだっただろうか。ソース機器とプロジェクターを長い距離で接続するならPRS4 Active Opticalを、レコーダーや動画ストリーミング端末とテレビ、あるいはソース機器とAVセンターをつなぐならのなら、Bravoの短尺タイプがベスト・チョイス。それが今回のぼくの結論です。

 

問合せ先 : (株)エミライ

 

本記事の掲載は『HiVi 2024年冬号』