作曲家の菅野祐悟が初めてメガホンをとった劇場作『DAUGHTER』が、いよいよ12月15日(金)より公開される。妻を亡くした父(竹中直人)と、娘(関川ゆか)のこじれた関係を、繊細なメロディにのせて情緒的に紡いだ注目の作品。ここでは、本作で初主演(W主演)を果たした関川ゆかに、役作りの苦労や出演の感想についてインタビューした。

――よろしくお願いします。いきなりですが、まず、ご自身のプロフィールを紹介していただけますか?
 よろしくお願いします。フリーで女優活動をしています。元々は、看護師になろうと思って、看護師の免許も取っているんですけど、小さい頃から憧れていた声優への夢が捨てきれずに、在学中から声優の活動も平行してやっていました。そうして声の活動をしていく中で、舞台への出演も経験させていただいて、それがきっかけで、映像のお仕事にも興味を持つようになって、演技の勉強を始めて、段々と演技(映像)の方にシフトチェンジしていきました。

――もともとは声優さんなのですか?
 はい。アニメや洋画作品の吹き替え、あるいはCMのナレーションなどをやっていました。

――その活動の中で見出された、と。
 そうですね。お世話になっている声優の事務所に、舞台出演のお話が来て、ちょっとやってみたいなと思ってオーディションを受けたら、見事に受かって! そこで舞台を経験したらすごく楽しかったんです! それが、演技の方面にシフトしたきっかけになります。

――声優とお芝居って、似ているようで結構違いませんか。
 いやもう本当に! 演技の勉強はまったくしたことがなくて、本当に体当たりだったんですけど、共演の皆さん、スタッフの皆さんがすごく(厳しく)優しく教えてくださったおかげで、段々とセリフの多い役をいただけるようになりました。本当に感謝していますし、そうしたサポートがあったからこそ、今こうして演技の仕事ができているんだと思います。

――ご自身の公式サイトなどはありますか?
 まだないんです。やはりあった方が分かりやすいですよね。これを機に作るようにします。

――さて、話を戻しまして、本作への出演の経緯を教えてください。
 菅野(祐悟)監督のことは元々存じ上げていて、いつかご一緒できたらいいなと思っていたんです。そうしたら映画を撮る、そのオーディションがある、という話を聞いて、これは絶対に受けないといけないと思い、オーディションを受けさせていただきました。

――その時には二役というは決まっていた?
 はい、オーディション用の脚本をいただいた時から美宙(みそら・娘)と美裕(みひろ・母親)の一人二役というのは決まっていて、そのギャップを見ていただく、という感じのオーディションでした。

 プロデューサーの酒井伸泰さんには、「髪型を変えると(前髪を下す、上げる)、すごく雰囲気が変わるね」と言っていただいて。普段は下しているので、その後すぐに前髪を変えた(上げた)プロフィール写真を作りました(笑)。

 それもあって、私を選んでいただいたようで、後日合格の連絡をいただいた時は、すごく嬉しかったです。ようやく(菅野監督と)ご一緒できると思って!

――決まったのはいつ?
 結構近々で、今年(2023年)に入ってからでした。そこから撮影開始までは、結構すぐで、もうバタバタしていた印象が強いです。

――それまで、二役の経験は?
 まったくなくてもう、どうしようって悩みましたけど、やらなければ始まりませんから、まずは、美宙と美裕との共通点を探していきました。そこで母娘の似た部分を出そうかと思っていたのですが、菅野監督から「絶対、似せないで」と言われたこともあって、台本を読んで美宙のことを探っていきました。基本的に素直になれない子で、ほぼ笑わないということに気付いたので、じゃあ、そういう感じの子をどういう風に表現しようかなと考えながら、役を作っていきました。

 一人二役をやることで、ある意味、自分を見つめ直すことができたように思います。素直じゃない部分は自分と似ているかなぁとも思いましたけど、(自分に)似せないようにして、もう素直じゃなくて可愛くないなぁとか、素直じゃないけど可愛いなぁと感じてもらえるような人物像を作っていきました。

――お母さん(美裕)は?
 美宙とは正反対なんですけど……。

――すると、美宙をベースにその反対に……。
 いえ、それも難しくて。美宙は、美裕と晴人(竹中直人)の血を引いていますけど、美裕は元々晴人とは別人だし、でも、美宙は、晴人の愛した美裕の要素も持っていないといけないしと、いろいろと考えてしまって……。しかも、(美裕は)美宙が3歳の時に亡くなっているので、(母親の)記憶も定かでないし、でもお母さんのようになりたいと思っているし、勝ちたいと思っているけど、すでに亡くなっているので、勝つこともできないし……という風に、複雑な気持ちを抱えているんだろうなって感じて。それをどのように表現しようかと考えて作っていきました。ただ、答え(正解)はないのかもしれません。

――そうお聞きすると、美宙のひねくれ具合がよく理解できました(笑)。さて、現場では、二役の撮影は結構バラバラだったのでしょうか?
 実はそうでもなく。美宙を撮ってすぐに美裕、美裕・美宙というように、結構入り組んでいました。私がというより、メイクさんが大変だったかなと思います。

 初日の最初に撮ったのが、美裕が亡くなるところだったんです。最初から死んでしまうのか~と思いながら、病院での撮影をシチュエーションごとに撮っていって、という感じでした。クランクアップは、ルームシェアのシーンでした。

――だから、そのシーンでは特に笑顔が弾けていたんですね(笑)。
 ハハハハハ、バレちゃいました。冗談ですけど(笑)。そうそう、あのシーンで使われている絵は、実は菅野監督が描かれたものなんです。ちょっとした美術なんかも監督が作っていらしたので、本当に多才な方だと思いました。

――冒頭のレストランのシーンで、美宙から美裕に変わるところで、はじめは二役と気が付きませんでした。
 あっ、本当ですか! 嬉しいです。

――髪型が違うと、雰囲気はだいぶ変わりますね。
 ありがとうございます。そこも、美宙と美裕の撮影は入り組んでいましたから、大変ではありました。でも、それ以上に竹中さんとの共演は緊張しました。

――やはりアドリブが満載?
 噂通りでした(笑)。でも、そのおかげで緊張もだいぶほぐれましたので、本当に感謝しています。

――どんなアドリブ?
 台本の延長上にあるものから、急に飛んでしまって、まったく別のことを仰ったりと、時と場合によりますね。カットがかからない場合もあるので、ひたすらというか、必死になってそれに応えていく感じです。レストランでの、「むかつくな、オマエのその顔」はアドリブです。

――演じる際、美宙と美裕はパっと切り替えられましたか?
 難しかったですね。ただ、二役の時は、竹中さんとご一緒することが多かったので、アドリブを含めて、竹中さんにとても助けていただきました。中でも、竹中さんの目――美宙を見る目と、美裕を見る目が全然違うんです。今は美裕として見られているので、美裕(奥さん)としてここに居られる、美宙として見られているので、美宙(娘)として居られる、という気持ちで演じることができました。

――そうなんですね。後半、病院で二人が会う際の、竹中さんの美宙を見る目は印象に残りました。
 本当にそうですね。そこは、竹中さんがああいう雰囲気(お芝居)でいてくださったので、こちらも感情を高めることができました。

――ちなみに、作中に出てくる「ゼロポイントフィールド」の件は理解できましたか?
 出演するにあたって勉強はしましたけど、そういうものがあるんだ、という程度の理解しかできませんでした。でも、いまだ解明されていないからこそのロマンも感じましたね。病床のシーンでの、晴人と美裕の魂を巡るやりとりはロマンチックだなと思いましたし、二人にしかない愛の形を描いているようで、好きなシーンです。観終わって、あぁいいなぁ~って、思いました。

――終盤、美宙が手紙を読むシーンも印象に残りました。
 ありがとうございます。そこは最初、背中から撮る構図にはなっていなかったんです。でも私の中では、孤独(独りぼっち)というイメージがあったので、背中から撮りませんか、と監督にお伝えしたら、そうしようとなって! 実際に採用していただいて嬉しかったです。

――最終的に、お父さんと分かり合えたのでしょうか?
 そうですね。ようやく、愛されていたと気づいたのではないでしょうか。

――さて、今回出演しての感想をお願いできますか。
 本当に菅野監督が全体を引っ張っていってくださったおかげで、無事に完成したと思います。加えて、最初に菅野監督が、「映画をいいものにしたいので、皆さん、思ったことを何でも言ってください」と仰っていたこともあって、スタッフの皆さん、本当にいろいろな意見を出されていました。常に、もっといいものにしたいって、皆さんで考えているような感じでした。そういう環境があって、チームワークが磨かれて、いろいろな意見が取り入れられていったことで、素晴らしい作品になったと感じています。

――何か影響を受けたり、成長を感じたことはありますか?
 初めての主演(W主演)でしたから、右も左も分からないような状態で臨ませていただいたのですが、現場で菅野監督の姿を拝見して、大きな影響を受けました。常に全力を出し切るというポリシーをお持ちのようで、毎日コンスタントに100%以上の力を出されているんです。映画を創って、音楽も創って。しかも映画を創りながら、他の作品の音楽も創っていらっしゃって。いつ寝ているんだろうっていうぐらいでした。そうした気持ちで作品に向き合っている人がいるのに、自分が中途半端な気持ちではいけない! そう思うともう、皆さんの期待に応えるだけじゃだめだ、100%じゃだめなんだ、期待を上回らないといけない! 常に全力以上の力で、向き合い続けることの大切さを教えていただきました。

――最後に今後の目標、抱負をお願いします。
 月並みなことかもしれませんけど、この役は関川さんにやってもらいたい、関川さんじゃなくちゃできないよね、って言ってもらえる女優になりたいです。この作品に出演させていただいたことで、作品への向き合い方を教えていただきましたので、今後は、どんなに難しい役が来ても、全力で臨んでいきたいですし、自分が出せるもの以上を出していきたいです。そして、基礎を大事に、演技力を積み上げていく。そういう女優になりたいと思っています。

映画『DAUGHTER(ドーター)』

12月15日(金)より ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開

監督・音楽:菅野祐悟
主演:竹中直人 関川ゆか
上地由真 近藤勇磨 若林瑠海 松代大介 奥田圭悟 ゆのん 美莉奈/かとうれいこ

脚本:宇咲海里 制作:Megu Entertainment株式会社 企画・プロデュース:酒井伸泰 エグゼクティブプロデューサー:染谷めぐみ 制作協力:株式会社POPBORN チーフプロデューサー:吉岡純平 ラインプロデューサー:土屋江里奈 監督補:UBUNA ドローン撮影・編集・カラーグレーディング:Ussiy 照明・整音・音響効果・MA:中島浩一 録音:横田彰文 サウンドアドバイザー:岩浪美和 編集・カラーグレーディング・モーションタイポグラフィー:仁宮裕 編集:増本竜馬 Bカメラ:福田陽平 助監督:木下遊貴 ヘアメイク:安藤メイ テクニカルディレクター:曽根真弘 音楽制作:ワンミュージックレコーディング&ミキシングエンジニア:葛島洋一 レコーディングスタジオ:Sony Music Studios Tokyo ミキシングスタジオ:ワンミュージックスタジオ オープニング曲「Dream Again」KIM SUNGJE エンディング曲「Far Away」KANATSU 挿入曲「ACT」チェロ:宮田大 ピアノ:Julien Gernay / 「Daughter」クラシックギター:朴葵姫 配給:SAIGATE
2023年/日本/G/53分
(C)Megu Entertainment

関川ゆか プロフィール
1995年9月25日生まれ、埼玉県出身。
2019年から芸能活動を始める。
2019年「瀬戸の花嫁 再再演」で初舞台を踏み、その後もドラマ・映画・CM・広告などで幅広く活動中

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