Amazon(アマゾン)は、国内におけるAlexaの法人向け新たなソリューション
「Alexa Smart Properties」の日本での提供を開始する。Alexa Smart Propertiesとは、パーソナルAIアシスタントのAlexaをビジネス向けに提供するサービスで、Alexaを高齢者施設やホテル、マンションや、地方自治体などの公的サービスで利用できるというものだ。

左がアマゾンジャパン合同会社 Alexaインターナショナル事業開発本部 本部長 澤田大輔さんで、右はAmazon.com Alexa Smart Properties 担当ディレクター、ブラム・ドゥカブナイ(Bram Duchovnay)さん

 Alexaは天気予報などの情報収集や音楽再生に加え、家電コントロールなどのスマートホーム機能を音声で操作できるソリューションとして、アマゾンの各種デバイスや一部のサウンドバーなどに採用されてきた。2017年の日本発売以来順調な売上を続けており、身近な音声操作アプリとして幅広い世代に愛用されている。

 今回のAlexa Smart Propertiesは、そんな民生市場での支持をベースに、ビジネスや介護といった側面でも快適なインターフェイス(音声コントロール)を提供していこうという提案となる。

 具体的には企業や地方自治体が、Amazonと契約するソリューションプロバイダを通じてAlexaのテクノロジーを特定の施設に一括導入、管理、カスタマイズできるという。

 例えばAlexa Smart Propertiesを採用した企業が賃貸マンションを作る場合、あらかじめすべての部屋にEchoデバイスを設置し、照明やエアコンといった既存設置機器についてAlexaで音声操作ができるように設定しておく、ということだ。入居者は自身のAmazonアカウントを登録しなくてもAlexaを使ったスマートホームを使えるわけで、これは嬉しいだろう(テレビなどの個人が所有する家電については別途登録が必要)。

 また高齢者施設などでも各部屋にEchoデバイスを設置し、それぞれの入居者に向けて呼びかけをしたり、家族とテレビ通話をしたりといった使い方もできるようになっている。これにより入居者もAlexaを使って自分の知りたい情報にアクセスできるし、介護スタッフの作業軽減にもつながるという。実際に海外の採用事例ではスタッフの定着率が上がったという実績があるそうだ。

 特に日本人は機械に疑似人格を与えることに慣れており、今Alexaを使っている人の中にも単なる機械ではなくあたかもペットのように感じている方は多いだろう。高齢者向けにはEchoデバイスに猫耳などの装飾を付けてより身近に感じてもらえるような工夫も加えていきたいとのことだった(ウェイクワードをEchoに設定しておくと、“ネコ〜”と呼びかけても反応するケースもあるとか)。

 もちろん高齢者にはAlexaにどのように声掛けしてもらうか、そもそもウェイクワードを覚えてもらえるかといった問題もある。それについては手元にカードを準備し、それを読んでもらうことでAlexaが起動するようにするといった準備もなされている。

 他にも今回熊本市が高齢者世帯宅や地域包括支援センターへの導入及びその有効性の検証も行うそうだが、そこでは方言も問題になるという。イントネーションもそうだが、同じ品物(名詞)であっても地方独得の呼び方があるケースが多く、そのままではAlexaが判別できない可能性もある。その点についてもバックボーンに変換AI的なアプリを入れることで対応していくという。九州弁や東北弁を理解するAlexaはいつか見てみたい。

 今回Alexa Smart Propertiesによるサービス提供を開始する企業も紹介された。そのサービスは以下の通りだ。

高齢者施設:ニチイケアパレス「ニチイホーム南大井」
 株式会社ニチイケアパレスが運営する介護付有料老人ホーム。Echo Show 8を通じて、遠く離れた家族とのビデオ通話や、体操動画などのコンテンツを通じた趣味や娯楽を楽しむことができる。施設スタッフは、居住者に1日のスケジュールやレクリエーションのお知らせをしたり、居住者の生活状況を記録してLINEで家族に知らせることができ、業務軽減・効率化を促進可能。

ホテル・リゾート:東急ホテルズ&リゾーツ「SAPPORO STREAM HOTEL」
 SAPPORO STREAM HOTELは、東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が手掛ける新たなホテル。プレミアムカテゴリの客室にEcho Show 8をマルチリンガルモードで設置、外国から来た方は英語でAlexaに話しかけて必要な情報を得ることができる。ホテルの管理者やスタッフは、Alexaが宿泊客の一般的な質問に回答したり、外国語で情報提供することで、限られた時間や人材を、より質の高いサービスの提供へ集約することができる。

マンション:インヴァランス「CREVISTA品川西大井Ⅲ」
 株式会社インヴァランスの管理賃貸マンション「CREVISTA品川西大井Ⅲ」には、EchoShow 15が各部屋に設置されており、入居と同時にスマートホームを始めとするAlexaの様々な機能を利用し、賃貸管理会社とも手軽にコミュニケーションをとることができる。将来は、内見などの際もAlexaを通して施設やスマートホームなどの紹介ができるようになり、賃貸管理スタッフの業務を軽減し効率化を促進できるようになる予定でという。

マンション(実験集合住宅):大阪ガス「NEXT21」
 大阪ガス株式会社は、同社が管理し、主にその社員と家族が居住する実験集合住宅「NEXT21」の一部住戸において、Alexa Smart Propertiesを採用。各居室に設置されたEcho Show 8を通じてAlexaの様々な機能を利用できるだけでなく、Alexaスキルの「エネルギーダッシュボード」を利用して、電力の使用状況等の情報を得ることができる。また電力需給がひっ迫した際には、エネルギーダッシュボードを通じて同社から居住者に通知を送り、節電を促すこともできる。

https://www.osakagas.co.jp/company/efforts/next21/

地方自治体:熊本市
 熊本市は、高齢者宅や地域包括支援センター「ささえりあ」、民生委員の自宅にEcho Show 8を設置し、Alexaによる対面でのビデオ通話や地域路線バスの運行情報の提供、イベントやレクリエーションなどのお知らせ配信などの各種機能が、高齢者のQOL向上に有効であるかを検証する。これにより悪天候時や人手不足などにより困難であった高齢者宅への訪問をAlexaを通してビデオ通話で行うことができるようになり、業務の負担を軽減できるという。