A-PAB(一般社団法人 放送サービス高度化推進協会)は本日、「スゴいぞ、4K・8Kキャンペーン発表会」を開催した。

 この12月1日に、BS4K/8K放送のスタートから5年を迎えることを受け、その高精細・高画質の魅力を訴求しようというものだ。既報の通り、同日からNHKのBS放送が再編され、新BS2Kと新BS4K、BS8Kの3波体制となる。今回はそのNHK以外にも民放局の4KチャンネルやWOWOWなどの有料放送も加えて、どんな4K/8Kならではのコンテンツを放送していくかが紹介されている。

 冒頭に登場したA-PAB理事長の相木宏之氏は、「2018年12月1日の放送開始から5年が過ぎました。その後コロナ禍などもあり、放送を取り巻く環境は大きく変化しました。4K/8K放送は対応機器の充実も進み、ユーザーの認知は広がっていますが、まだまだその魅力を充分に伝えきれていないと思います。そこで今回は4K/8K機器を買っていただく、見ていただくことができるようなキャンペーンを行います」と述べた。

 「現在の4K/8K放送はスポーツ、ドラマ、旅番組などが放送されています。近年はネット環境の充実も進んでいますが、超高画質の4K/8K放送には価値があると思っています。先日も右旋の新しい4K放送事業者様も決定しております。今後も新BS4K/8K放送をよろしくお願いします」と話していた。

 続いて総務大臣政務官の小森卓郎氏が登壇、「4K/8K放送はそれまでのハイビジョン(2K)を超える高精細映像で、視聴者に新しい体験をお届けしています。4K/8Kコンテンツのさらなる充実も進んでいくことと思われ、総務省としても、関係団体の皆様と一緒に4K/8K放送の推進に努めていきます。新しいワーキンググループも設立し、4K/8K放送の普及や新しいあり方について検討を進めていきます」と語っていた。

A-PAB理事長の相木宏之氏(左)と、総務大臣政務官の小森卓郎氏(右)

 その後、NHKや関連団体の代表者からのビデオメッセージが上映され、さらにBS4K/8K放送の新しいキャラクターとして「ヨンハチさん」がお披露目された。ステージに登場したヨンハチさんは、「これからたくさんの人たちに4K/8Kの魅力を訴求していくよ。4Kボタン押してね〜」とこれからの抱負を語った。ヨンハチさんのポスターや各種グッズも準備されているとかで、これから全国の販売店などで見かける事も増えていくのだろう。

 そしてここから、各放送局が予定しているキャンペーン番組の内容も紹介された。NHK・民放5局の合同キャンペーンとしては第7弾になるという。その詳細は以下の通り。

背中にパラボラアンテナをしょった、ヨンハチさん

●NHK BSP4K/8K
「はるかなる古代文明」第1回 マヤ生命はめぐり神は降臨する(12月9日18:00~)、第2回 幻の黄金を求めてアンデス・インカ(12月16日)
「謎解き!ヒミツの至宝さん」ゴッホ「ひまわり」(12月10日20:00~)、空也上人立像(12月17日20:00~)※BS8K
●BS日テレ4K
「森高千里の暮らしてみたい 世界この街」(12月2日18:52〜)
「京都 天下人が愛した美 北川景子が迫る明宝の秘密」(12月27日21:00〜)
●BS朝日4K
「スーパー4Kマジック第9弾」(12月10日21:00〜)
「あなたの知らない京都旅 都のナンバーワン巡り 2時間スペシャル」(12月21日21:00〜)
●BS-TBS 4K
「〜迷湯パラダイス〜湯かりの人」(12月10日21:00〜)
「麵鉄〜メン食い鉄道 絶景の旅〜」(12月17日21:00〜)
●BSテレ東4K
「秘境黒部100年物語〜未来へ紡ぐ守り人たち〜」(12月26日19:00〜)
「上田晋也アートスペシャル バンクシーから読み解く“分裂の世界2023”」(12月30日20:54〜)
BSフジ4K
「巨大魚・秋の陣2023」(12月3日12:00〜)
「昭和歌謡パレード」(12月9日13:55〜)

 内容としてはこれまでの人気番組を中心に構成されており、残念ながら4K/8Kならではの高精細を活かした新しい提案はなかったが、その分手慣れた、ていねいな番組作りがなされることを期待したい。

 そしてゲストとして演歌歌手の藤あや子さんが登場し、自身が出演するBS朝日4K『人生、歌がある』についての感想を語った。

 藤さんによると、「4K放送が始まった時は、特に女性の歌い手さんと、アップになったら皺まで見えてしまうのではと心配したのですが、実際には全体の画質がよくなるので、セットなどもとても綺麗に見てもらっています」という。さらに4K番組に出るようになって、「女性同士ではお化粧の仕方などの情報を交換したりしますし、衣装の色も4Kならちゃんと再現されます。帯留めなどもはっきりわかるので、本物を使っていてよかったと思ったこともあります」と感じているそうだ。

 さらにMr.マリックが登場し、藤さんのカウントダウンに合わせてハンドパワーで離れた場所にあるシャンパンのコルクを抜く(飛ばす)という手品が行われた。

 マリックさんも自分が出演している4K番組について、「4Kだとこんなにクリアーに写るとは知りませんでした。初めての撮影ではスタッフから、『マリックさんすべて見えていますよ』と言われました。写ってはいけないものがクリアーに見えて、ほぼ半分は使えなかったんです。そこから私も4Kに合わせたネタを作り直しました。それは時代に合わせた進化で、かえってよかったですね。マジックはファンタジーをお客さんに見てもらうものなので、今では4Kで撮ってもらえるのが楽しみになりました」と、4Kが意外な形でマジックに影響を及ぼしていたことを紹介してくれた。

 続いてのマジックは藤さんがトランプの山から1枚カードを選び、それをマリックさんが予言するというもの。藤さんが選んだのはハートの8で、マリックさんはハートの4(2枚)を予言し、ふたりで見事に「ヨンハチさん」を引き当てるという演出だった。

 最後に、A-PABが来年の実施を予定している「4K番組アワード」について、青山学院大学 総合文化政策学部教授の内山隆さんから概要が報告された。

 最近は放送局内では4K番組制作が進んでいるが、視聴者の中にはスマホ画面などで番組を見ることも多く、高精細・大画面作品の魅力が正しく伝わっていないことも多いそうだ。このアワードでは放送局に限らず機器メーカーなどのあらの応募も受け付けるようで、4K番組の魅力を広く伝えられるような内容を目指す模様だ。

 近年4Kテレビの普及は進んでいるが、せっかく4Kテレビを買ったのに4K放送をあまり見ていないという人も多いという。ヨンハチさんも盛んにお願いしていたが、そんな方にはぜひリモコンの4Kボタンを押してみて欲しい。

 というか、テレビメーカー各社もリモコンの4Kボタンを左端の一番押しやすい場所に配置するといった提案を行ってもいいのではないだろうか。その上で、今以上に高精細・高画質のメリットを生かした、見ごたえのある番組が揃ってくれば、4K/8K放送への注目度が上がることだろう。いち4Kファンとしては、ハードとソフトのバランスのいい進化を期待したい。