シャープは、本日(11月10日)から12日までの3日間、東京ビッグサイトで技術展示イベント
「SHARP Tech-Day」を開催する。同社は今年で創業111周年を迎える。その長い歴史の中でも、今回のようにテクノロジーにフォーカスしたイベントを開催するのは初めてだという。

 会場正面には講演会等が開催されるステージが設けられ、その手間は「LIVING」「INDUSTRY」「CITIES」「SUSTENABILITY」の4つのブースに分けて展示が行われている。

常務執行役員 CTO 兼 R&D担当 兼 研究開発本部長の種谷元隆氏(左)と、代表取締役 社長執行役員 CEOの呉柏勲氏(右)

 開催に先立ち、招待者やマスコミに向けてオープニングセレモニーが開催された。冒頭、同社代表取締役 社長執行役員 CEOの呉柏勲氏が登壇、CGで製作された創業者の早川徳次氏からシャープペンシルを受け取るというパフォーマンスで、シャープの伝統をこれからも継承していくことを示した。

 続いて常務執行役員 CTO 兼 R&D担当 兼 研究開発本部長の種谷元隆氏が登場。Tech-Dayを開催する意義や思いについて語ってくれた。

 種谷氏はまず、「シャープは1912年の創業以来、様々な世界初・日本初の製品を送り出してきました。当然ながら、それらはお客様に支えていただいた、喜んでいただいたおかげであり、だからこそこの111年があります」とユーザーへの感謝を述べた。

 それは技術があってこそ実現できたもので、技術を使ってどれだけ快適になったかをユーザーに実感してもらうことで、技術の持つ意味が伝わると考えているそうだ。シャープとしてはこれからも技術を進化させ、さらにユーザーこんなことができるのかという喜びを感じてもらって、“ゲームチェンジ” を起こしていこうと考えているそうだ。

 そこではシャープがこれまで培ってきた8K+5GやAIoTといったテクノロジーがベースとなり、さらにエッジAIを加えることで、人と地球にやさしい環境を作り出していくことを目指すという。

 実際に各展示ブースではエッジAIを具体化した提案やインターフェイスとして活用できる各種センサーなどが多く展示されており、これからの製品でどのように応用されていくのか楽しみな内容になっていた。

 以下では各ブースで展示されていた技術の中から編集部が気になったものを紹介したい。

VR/MRグラス コンセプトモデル

左がVRグラス、右がMRグラスのコンセプトモデル

 AI技術を用いて会話に含まれる情報を分析してXRで可視化する、あるいは料理中にレシピを表示したり洋服のコーディネートを提案したりといった用途に使えるVR/MRグラスのコンセプトモデルを展示。軽量化のためにバッテリーは内蔵せず、USBケーブルでPCの等とつなぐタイプだ。VRグラスは2024年夏の発売を目指している。

マイクロLEDディスプレイ

 屋外ARグラス用に使えるマイクロLEDディスプレイを開発中とのこと。高輝度、小型、高精細という特徴を備え、さらに無機素材なので長期安定性も備えている。今回展示されていたのはサイズが0.38インチで、解像度は水平352×垂直198画素というもの。まずはフルHD解像度を目指していきたいとのことだ。

モスアイ構造フィルム

左が通常のガラスパネルで、右は防曇性を備えたモスアイフィルムを貼り付けたもの

 蛾の目の構造を参考にして開発されたモスアイフィルムは、表面に凹凸構造を備え、低反射性に優れている。その特性を活かし、シャープでは液晶テレビの表面に取り付けていたこともあった。今回はモスアイフィルムの素材を改良し、撥水性(油性の素材を追加)や防曇性(界面活性剤を追加)を備えた2種類のフィルムを開発している。

NIOI Vision

 「嗅覚を持ったAI」という新しい提案も行われていた。空気中の成分をセンサーで識別し、それをグラフにすることで匂いのビジュアル化(写真のモニター上の画像)に成功。それをAIに学習させることで、それが何の匂いか識別できるという仕組みだ。会場では6種類のワインを使って、正しく識別できるかのデモも行われていた。ワインの場合、生産年による違いもるが、各年の匂いを学習させ続けることでAIを成長させられるという。

ロボットストレージシステム

 大規模流通倉庫の商品配置を最適化し、効率的な配送を実現するトータルシステム。同様の機能を備えた倉庫は既にあるが、シャープでは量子アニーリング技術を活用した高速計算機を東北大学と共同開発、従来を大きく超える規模の倉庫が実現できるという。

TVスマート節電ソリューション

 テレビがユーザーの視聴状況を識別して、表示サイズを自動的に切り替える機能もデモされていた。テレビ上部に取り付けたカメラで、ユーザーが画面を見ているか、それとも手元のスマホなどを見ているかを識別し、全画面表と小型画面を自動的に切り替えてくれる。音はそのままで、ながら見の際に電気を抑えるための工夫といえるだろう。写真は発表会に来ていた潮さん。

 太陽電池を使ったZero Energy Homeで、テレビの消費電力を制御するための提案も行われた。晴天で順調に発電できている時は明るい画面で、雨天などで発電効率が落ちている時には自動的に輝度を落とす仕組みだ。しかも輝度を落とした場合でも信号側を調整することで暗く感じない映像に仕上げている。

Gatebox × COCORO + 連携

 Gateboxは円柱形の本体内側にホログラム映像が表示されているキャラクター召喚装置。ここに話しかけることで同じネットワーク上にあるシャープ家電の操作が可能になるものだ。テレビの電源オン/オフはもちろん、ヘルシオを使った朝食レシピを提案するといった機能も備えている。

TV AIヘルスケアトレーナー プラットフォーム

 テレビにヘルスケア機能を内蔵し、画面に表示された指示の通りにストレッチ(体操)をするだけで運動量を測定してくれる。搭載されたカメラセンサーにより、運動前と後の体温や脈拍なども検知、細かいアドバイスをしてくれるのも嬉しいだろう。

立体音響技術OPSODIS(オプソーディス)の応用展開

 英国サザンプトン大学と鹿島建設の協業で生まれたOPSODISは、視聴者の左右の耳に届く音を独立に制御するもので、少ないチャンネル数でマルチチャンネル方式を超える立体音響を実現できる。今回は横幅30cm弱の筐体で、55インチほどの画面に寄り添うサラウンド空間再現していた。麻倉さんも音場のまとまりのよさに満足げ。

SuperbVue Solutions Inc.(FOXCONN)

 スマホやPCのカメラに搭載する小型・高画質カメラデバイスも展示されていた。6400万画素(9248×6944)で、高ダイナミックレンジ、低ノイズの撮影が可能、動作速度は20fps@64M、30fps@8K、120fps@4Kに対応する。直径40cmほどのウェハーを2枚重ねて製造するとかで、既に量産化も進んでいる。

 SHARP Tech-Dayは入場無料だが事前登録は必要なので、閲覧希望者は同社サイトから申し込んでいただきたい。