JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)が主催する「CEATEC 2023」が昨日スタートした(10月21日まで。事前登録が必要)。「デジタルイノベーションの総合展示会」というテーマの下、様々な技術を駆使した展示が行われている。StereoSound ONLINEでは、千葉の幕張メッセ会場で見かけた気になるテーマを取材してきたので、以下でそれらについて紹介したい。(StereoSound ONLINE編集部)
シャープ
シャープのブースでは、既に「X」等でも話題になっているフクロウ型のシーリングファン「はねやすめ」が注目を集めていた。同社では以前から自然界を参考にした技術開発を行っており、液晶テレビ用のモスアイ(蛾の目を参考にした映り込みを抑える技術)フィルターなどを実現してきた。
はねやすめもそのひとつで、フクロウやみみずくのはばたきを参考に、心地いい風を周囲に届けるものだという。扇風機のように単一ではなく、羽が羽ばたくことで届けられる自然な送風を体験してもらえるとのことだ。
実際の商品化も予定されており、公共施設や介護施設などの空間での、目で見ても楽しい送風機としての提案を予定しているようだ。
もうひとつ、「Click Display」も多方面での活用が期待できる技術だ。
こちらは液晶や有機ELパネルなどの表面に取り付けるセンサーシートで、従来の静電容量タイプに加え、圧力検知機能も備えている。静電タイプで画面の“移動”などを行い、選択といった“決定”については圧力検知でしっかり確認することで、自動車搭載用などでも誤動作を避けることができるという。
圧力検知で負荷がかる部分については保護シートも準備されており、ここに凹凸構造を設けておくことで、ブラインドタッチであっても押し間違いを回避可能。シートのサイズも15インチほどまでは試作できているとのことで、今後様々な局面で使われていくことだろう。
TDK
TDKブースの“世界でもっとも薄いラジカセ”というワードに引かれて展示を見に行くと、「Boombox」というユニークなアイテムが置かれていた。
80年代のラジカセを模した大型のPCB(プリント基板)の中央にはカセットテープが取り付けられ、実際に音楽が再生されている。実はこのテープはダミーで、ボードの背面にはラズベリーパイを使ったファイル再生システムが取り付けられている。そこからの音楽信号は両脇にあるPiezoListen
スピーカーに送られ、音が聴こえるという仕組みだ。
このPiezoListenスピーカーはTDKが開発したデバイスで、厚さ1mm弱の極薄パネルが音楽の振動をPCBなどの素材に伝えて音楽として再生できるという。同社では以前からアクチュエーターにも使えるデバイスを開発していたが、PiezoListenはその最新バージョンということだろう。
「TWS・空間オーディオ向けヘッドホントラッキングソリューション」も面白い提案だろう。会場では市販ヘッドホンに直径5cmほどのデバイスを取り付け、ヘッドホンの向きや傾きを検出できるというデモを行っていた。
このデバイスの中にバランスジャイロを搭載したIMU(慣性計測装置)「ICM-456xy」が取り付けられているが、このデバイスは優れた振動除去性能を備えているのが特徴で、ヘッドホン、イヤホンに内蔵した場合でも、音楽信号に起因する振動の影響を受けないセンシングが可能になっているそうだ。
イヤホン、ヘッドホンに限らず、試聴者の顔の向きや角度が再生時の要件として重要になるであろうVR/ARゴーグルなどでもICM-456xyは活躍してくれそうだ。
AR関連では、直接網膜投影方式のメガネデバイスも人気を集めていた。こちらはメガネのテンプル部分に映像出力回路を取り付け、その信号をTDK製レーザーモジュールから照射し、メガネ内側のレンズで反射して視聴者の網膜に直接結像するものだ。
実際に試作モデルを体験させてもらったが、AR(拡張現実)用らしく、背景が見えたまま、そこに明るい文字や図形が出現している。映像鑑賞という使い方ではないが、生活をサポートしてくれる情報デバイスとして期待できると感じた次第だ。
XREAL
昨日、ARグラスの新製品「XREAL Air 2」を発売したXREALもCEATECにブースを出展、調光付きARグラス「Air 2 Pro」が体験できるスペースを準備していた。そこには常に多くの来場者が列を作っており、最先端のAR体験を楽しんでいた。
※後編に続く