新時代のオーディションプロジェクト・ミスiDの2019年度のグランプリを獲得した中井友望が主演する映画『サーチライト-遊星散歩-』が、いよいよ10月14日(土)より公開される。病気の母を抱え、困窮していく女子高校生・内田果歩(中井友望)の、覚悟と再生を描いた物語。ここでは、女優になるという夢に向かって邁進する彼女に、出演の感想を聞いた。

――よろしくお願いします。出演おめでとうございます。最近は出演作が続いていますね。
 ありがとうございます。毎日、すごく楽しいです。単純に、やりたいことをお仕事としてやれるようになってきたことが、嬉しいです。

――やりたいことをできている環境の中での、ご自身の成長は感じますか?
 すごく感じます。今回、出演させていただいた『サーチライト-遊星散歩-』もそうですし、ここ最近、出演させていただいた作品では、自分のやりたいことをできているなっていう実感がすごくあって、もちろん、芝居をしていればしんどい部分もありますけど、今は“楽しい”が一番大きいので、それは、自分が成長できているからなのかなって思っています。

――やはり、楽しいは大事ですね。さて、今回の出演の経緯について教えてください。
 まず、本作のシナリオを読んだプロデューサーの直井さんが、主人公のイメージにぴったり、と企画・脚本の小野(周子)さんに私のことを紹介してくださったそうです。それから小野さんが私を当て書きで改稿して下さり、お話しをいただいたという流れになります。

――その台本を読んでの感想は?
 物語自体は、難しいことを扱っているなと感じましたけど、主人公の果歩が信じているものや行動は理解できましたので、“やりたい”と強く思いましたし、果歩はそのまま“自分だな”ってすごく感じました。

――そういう時の役作りはすんなり行くものですか?
 そうですね。この作品に関してはあまり役作りを考えていませんでした。最初からそういうことを考えなくてもいいかなって思えたし、結構そのまま(私自身)で演じていても、監督からはすべて任せてもらえている。そう感じた現場でした。

――すると、中井さんの存在がそのまま果歩としてピタッと合っていたと?
 そうなんですかね? 特に何も言われなかったので、そのままでいいと思ってもらえたのだろうと感じています。

――役柄には、ご自身に近い遠いがあると思いますが、役作りをする上では、近い遠いで、やりやすい、やりにくいというところはありますか?
 もちろん、私は近い方が演じやすくはありますけど、遠いものでも、自分が近づくというよりかは、そっち(役柄)を、自分のどの面にあてはめられるだろうって考えることが多いですね。

――すぐに寄ってくるものですか?
 いや~難しいですよ。どれだけ頭で考えても、自分と遠いところにあるものでは、すぐに出せないこともありますし、演じていくうちにちょっとずつちょっとずつ掴めて行くことが多いですね。

――演じられた果歩は、だんだんと感情を表現するようになっていきますが、撮影としては、順撮りに近いのですか?
 ある程度の物語の流れに沿ってはいましたけど、パートパートで時間軸の前後はありました。ただ、最後の方の大事なシーンを最初に撮っていて、そこはすごく難しかったです。

――まだ、そこまで感情が高まっていませんからね。
 だから、それができる女優さんは、すごいなって思います。

――満足できる芝居はできた?
 できたと言っていいのか分かりませんけど、その時できることはやりました。

――さて、話を進めますが、果歩の登場シーンは街中を走っていました。後々、その理由は明らかになっていきますが、いきなりな展開で観ている者には理解が進みません。撮影はいかがでしたか?
 もちろん、目的があって果歩は走っているんですけど、実際に私も、何をしているんだろうって、すごく思いました。自分も彷徨っている感覚になりましたし、このまま走って目的を達成しても、果たしてそれがゴールなのか? 自分の中でも迷子になっていました(笑)。

――そのシーンも含めて、果歩はほとんと無表情です。その表現というか、どのように演じていたのでしょう?
 表情を殺そうと思ってやっていたわけではなくて、壁と言えばいいのでしょうか? いろいろなものに対しての壁を感じていて、それにいちいち反応しないというか、関わらないようにしていた方が、自分として立っていられるのではないか。そう思っていました。

 でも、お母さんといる時はすごく優しい顔をしているなって、完成した映像を観て感じました。

――そんな果歩に、クラスメイトの上野(山脇辰哉)が、かまってきます。
 あそこまで行くと、それはもうただのお節介ではなくて、愛ですよね(笑)。果歩もどこかでそれに気付いていると思うし、かっこいいというか、キザなセリフも多かったんですけど、それをすぐに伝えられる上野君は、果歩にとってすごく大切な存在だったのかなって思っています。

――上野には少しずつ心を開いていって、少しネタバレしますが、花火のシーンではいい表情を見せています。
 そうなんです。私も楽しかったです。監督も、楽しそうな果歩を映したい、象徴的なシーンにしたいと仰っていたので、実際に楽しげなシーンが撮れて、すごく良かったです。

――ただ、そこに至るまでに、ちょっとした喧嘩もありました。
 そこは、自分の恥ずかしいところを見られてしまって、可愛そうとか、みじめと思われたくない果歩の心情が出てしまい、相手(上野)を攻撃する言葉になったんだろうと感じています。ただ、それがあったからこそ、上野君に惹かれるものが生まれて、結果として、花火に行ったのかなって思いますね。

――一方で、それ以降は、果歩の生活はどんどん追い詰められていきます。
 しんどいのは変わりないんですけど、お母さんと一緒にいたいという気持ちがあるから、それが強いから、どうにか乗り越えて頑張らないといけない。だから、その時は、どうにかしなくちゃという意識で、前を向いていた。そう感じていました。

――そして、バイトを始めます。
 そうですね。バイトの内容で段階を踏んでいくのも、果歩はやけくそになっているわけでも、引きずられているのでもなく、自分の意思で、このためにはこれだけ行かないと今の生活が続けられないという、強い裏付けがずっとあったと思うんです。だから、その世界に足を踏み入れたから戻ってこられないとか、怖さみたいなものはなかったです

――やがて、そのバイトもクライマックスを迎えます。その時の心情は?
 覚悟! ですね。覚悟が定まったからこそ、そこへいってしまうことに怖さはなかったと思います。“あっそっか、そういうことか”と、妙に納得したというか、その気持ちがあったから進んでいったと。

――しかし……。
 そうなんです。そのままだったら、どうなっていたんだろうって思いますね。

――ネタバレにならないようにお聞きしますが、そのシーン撮影はいかがでしたか?
 実は、あまり覚えていないんです。どうしようとか、どう思ってこのセリフが出できたのかとか全く覚えてなくて、ただただ、感情に任せてやっていたと思うぐらい入り込んでいました。でも、そういう経験ができたことは、私にとって宝物になったし、だからこそいいシーンになったんじゃないかと思います。

――ちなみに、完成した映像を観ての感想は?
 その時の感情は本物なので、これは本当の出来事だったんだ。そう思いました。

――ところで、話を飛ばしますけど、お母さんに赤ちゃんみたいな匂いだねって言われるシーンは印象に残りました。
 私もたまに思うことがありますよ。赤ちゃんというか、ちょっと子供っぽい幼いイメージ。匂いというか、その人が持っている感覚みたいなものでしょうか。

――そうなんですね。中井さんの好きな匂いは?
 実は、毎日お香を焚いているんです。どの匂いというよりかは、とにかく古い匂い好きですね。落ち着きます。

――クライマックスの先には、もう一展開待ち構えています。果歩の表情も、とても温和になっていました。
 現場は、本当に幸せでしたね。ただただ何も考えずに、幸せや楽しさを感じていました。やはり、最後のシーンだけありますね。

 あと、電話のところは、元々台本にはなかったんですよ。その場の流れで上野(山脇)君がやってくれたから、私もそれに返した、と。でも、実はあまり覚えていないんですけどね。2人の優しい笑顔――自分の芝居ではありますけど――を見た時に、ああこの2人、いい顔しているなって、すごく思いました。

――本作では、お母さんとの関係性も大事なものですが、お母さんを演じた安藤(聖)さんとの共演はいかがでしたか?
 感情面、お芝居の面、どちらの面でも、すごくいい経験になりました。とにかくすごかったです。人としての優しさや、お母さんとしての笑顔、病気から来る子供っぽい部分などなど、どうにかして守りたいっていうお母さん像で、ずっといてくれました。

――親と娘の立場が入れ替わるような瞬間も感じられ、印象的でした。
 やはり、親子関係の中でも、お母さんと娘っていうのは特有のものだと思いますから、それが伝わっているのは、すごく嬉しいです。

――では、公開へ向けてのメッセージをお願いします。
 物語のテーマだけを聞くと、ちょっと重い話じゃないの? とか、共感できないかもしれないと感じるかもしれませんけど、助けてくれる人は周りにいるよ、一人で抱え込まなくてもいいんだよという気付きを得るきっかけにしてほしいなと思います。

 辛いことだけじゃなくて、いろいろな希望も詰まっている作品だなって、完成した映像を観て、改めて感じることができました。撮っている時は気付けなかったことも、完成した作品を観ると、そこまで辛い話じゃないのかなって感じたので、これから観てくださる方々にも、そう思ってもらえるのではないかと思います。

――ちなみに、好きなシーン、印象に残ったシーンを挙げていただくと。
 やはり、最後の電話のシーンですね。好きです。上野君の優しくて、少し切ない表情が、観ていてすごくいいなって思いました。窓の外では実際に雪が降っていて、いい光景にもなっています。

――最後に二つ質問します。まず一つめ。バンジージャンプをしてみたいというインタビューを拝見しました。
 はい、高所恐怖症ではありますけど、挑戦したいです! 結構、挑戦的なこと好きなので、食べたことない虫とかも食べてみたいですね。普通に生きていたら経験できないことに、どんどん挑戦していきたいです。

――二つめ、今後演じてみたい役柄や設定は?
 役については、まだ学生役が多いので、職につきたいです。かっちりとしたものがいいですね。あとは、想い破れたいです。誰かのことをずっと想っているんだけど、それが叶わない。そんな経験をしてみたいです

映画『サーチライト-遊星散歩-』

2023年10月14日(土)より K’s cinema ほか 全国順次公開

<キャスト>
中井友望 山脇辰哉 合田口洸 都丸紗也華 西本まりん 詩野 安楽涼 水間ロン 大沢真一郎 橋野純平 / 安藤聖 / 山中崇

<スタッフ>
監督:平波亘 音楽・主題歌:合田口洸、Joseph Gen 企画・脚本:小野周子 ラインプロデューサー:石川真吾 撮影:関将史 録音:篠崎有矢 美術:岩崎未来 スタイリスト:」小宮山芽以 ヘアメイク:河本花葉 助監督:工藤渉 編集:村松正浩 VFX:萩原嘉人 スチール:柴崎まどか 企画協力:直井卓俊 配給:SPOTTED PRODUCTIONS 制作:800 LIES PRODUCTION
2022/93分/ビスタ/カラー/5.1ch
(C)2023「サーチライト-遊星散歩-」製作委員会

中井友望SNS
https://tencarat.co.jp/nakaitomo/
https://www.instagram.com/youwang16/

・ヘアメイク:SHIO
・スタイリスト:粟野多美子