歌手としての成功を夢見ていたシンガーの藤咲花(増田有華)は、ふとしたことがきっかけで、暴力団に追われる身に。その手から逃げる途中で、かつて袂を分かった幼馴染の誠(木口健太)と再会する。時を経て心を通わせる二人に、魔の手はじわじわと迫って来て……。監督は、重厚な人間ドラマを得意とする児玉宜久が務め、愛憎入り組んだ世界観をスタイリッシュに映像化。主役の藤咲花を演じるのは、アイドルグループAKB48卒業後も、役者として・歌手として多方面で活躍している増田有華。ここではその増田に、出演の感想を聞いた。

――よろしくお願いします。いよいよ、主演作の公開が迫ってきました。まずは、最初に台本を読んだ際に、物語や演じられた花についてどのような感想を持たれたのか教えてください。
 ありがとうございます。物語自体には、ナイフが出てきたり、銃が出てきたり、薬物が出てきたりと、結構、闇の部分に踏み込んでいるなっていう印象を受けましたけど、花を含めた登場人物はいたって真面目で、ただ、ひたむきに愛を求めて生きている。けど、その生き方がすごく不器用に見えてしまうんです。中でも花は人一倍気が強くて不器用ですけど、誰よりも純粋で純真でまっすぐな女の子だと感じて、そこには、自分と似たキャラクターがあると思いました。

――具体的には?
 嘘がつけなくて、まっすぐで、自分がこうだと思ったことを曲げない。もう、木口さん演じる誠兄に何度も止められますけど、言うことを聞かずに飛び出してしまう。そういう部分には、自分に似たところがあるなぁと思いました。

――そういう花の性格は、どのように培われていったとお考えですか?
 普段から役作りの一環として、演じる役(=花)が生まれてから、その年齢に至るまでのこと――家族構成とか、いつ誰と出会って、どういう考え方をするのかなど――をノートに書くようにしているんです。それを書いているうちに、花は子供の頃から変わってないなとか、まっすぐ成長してきた子なのかなと思ったりして、周りの人たちにすごく助けられてきたという、ある意味、末っ子気質みたいな部分があるんだろうという感じで想像を膨らませていきました。

――そのノートはどこかで見られる機会はありますか?
 いやぁ恥ずかしいので、誰にも見せられないですよ(笑)。燃やしてしまいたいぐらいです。

――歌を歌うところもご自身に近い。
 そうですね。花は、歌に救われて、歌が好きで、歌を通じて自分を表現していますから、そういうところはほぼ自分みたいな感覚ですね。だから、言葉が下手なんです。言葉が下手な子だから、歌を通じて表現するっていう部分は、すごく自分に通ずるものがあったと思います。

――芝居(劇中)で歌唱することへの心構えというものは、あるものですか?
 過去に経験はありましたので、これまでと同じように、事前に音源と歌詞をいただいて、家で何度も練習して、歌詞を自分の中に落とし込んでから現場に臨みました。ただ、歌いながら撮影するのかなと思っていたら、その場で録音(レコーディング)した音源(歌)に合わせての撮影でしたので、調子に乗ってフェイクを入れてしまったりして、自分で自分の歌に合わせるのが結構たいへんだったのは、反省点です。フェイクしなければよかったって思いました(笑)。

――話は飛びますけど、映画の上映のほかに、増田さんの歌唱を聴ける場というのはありますか?
 それは、お楽しみにしていただければ(笑)。

――少し戻りますが、花はものすごく気の強い女性に見えました。その強さをどのように表現しようと思いましたか?
 強く見せようというよりかは、花は何をしたいのかという目的を常に考えていました。基本的に、自分のことをよく見せたいというより、誰かのために何かをしたいと思っている子で、その正義感が行き過ぎたが故に、気が強く見えてしまっていると思うので、そういう根っこにある優しさや、誰かを思う気持ちを忘れずに表現しようと思っていたら、めちゃくちゃ強くなっていた、という感じでしょうか(笑)。

 ただ、見え方として、単に気が強いだけでなく、どこかに脆さとか、チャーミングさがあった方がいいなと思ったので、そういうところは、気の強さと対比して意識した部分です。

――金髪も、花のイメージを強めていたように思います。
 そうですね。衣装合わせの時に、金髪のカツラが用意してあったのを見て、いったい何事だと思いましたけど(笑)、私自身、変身願望はあったので、金髪のシーンはお気に入りになりました。

――変身願望ですか?
 変身というより、宝塚がめちゃくちゃ好きなので、宝塚メイクをしてみたいなーっていうぐらいなものです。あとは、男役を演じてみたいです。舞台での男役には、めちゃくちゃ憧れがあります。かっこいいし、シンプルにドキドキしますからね。宝塚で男役をされていた方と共演させていただくともう、立ち振る舞いだけでドキドキしちゃいます。

――変身絡みで言えば、回想シーンの学生役はいかがでしたか?
 まだ大丈夫かな~(笑)、なんて思いましたけど、意外と制服を着ることも多いので、頑張りました。メイクは、平成ギャルっぽいイメージになるように、付けまつげをしたりして楽しかったですね。役作りとしては、現在の花の気の強さというより、わんぱくで好奇心旺盛、思い立ったらすぐに行動に移す。そしてみんなが振り回されてしまう。そう感じてもらえるようなお芝居を心掛けました。

――さて話を進めまして、共演の方々の印象を少しお聞かせいただけますか?
 まず、誠役の木口さんとは、今回が初めましてでしたけど、短期間の内にとても仲良くさせていだきました。待ち時間に、役作りについてギュッと話をさせていただけたことで、信頼関係も構築できましたし、それが作品の中で花と誠兄の関係にも出ているんじゃないかなって思っています。

 久住役の山口さんとも今回が初めての共演でして、もう役とは正反対で、ものすごく物腰の柔らかい方でした。

 藤吉さんには、とても強いオーラを感じました。そこにいらっしゃるだけで雰囲気があるし、とにかく明るい方なんです。お芝居でも、現場での変更にすぐに対応されていて、かっこいいなと思いながらお姿を拝見していました。私にもいろいろと気をかけてくださって、とにかく勉強させていただきました。

 本田さんとは、一度、結構長い待ち時間をご一緒させていただいたことがあって、その際に、芝居をする上での心構えを聞かせていただいて、自分にとって宝物と言えるような経験になりました。すっごくチャーミングな方でした。

――藤吉さんは、花にとって先輩となるジャズシンガーという役柄でした。なにかアドバイスはもらいましたか?
 お芝居に関しては、特にお話はしていないのですが、私が歌唱するシーンの撮影で、藤吉さんが一番前に座ってらっしゃったんです。歌い終わって、本来は拍手する芝居はなかったのですが、藤吉さんが拍手してくださって! それで、そこにいた皆さんも拍手してくださったんですけど、素直に嬉しかったですね。しかも、歌がいいわねって褒めてくださって。二重に嬉しかったです。

――話は変わりますが、登場人物たちには東京への強い憧れを感じました。そうしたものへの共感や理解はありますか?
 私は、10代に入った頃には、オーディションを受けに結構東京に来ていましたし、14歳で東京に出てきているので、憧れという気持ちは、それほど強くありませんね。ただ、渋谷に行くと当時のことを思い出すので、特別な想いというか感覚はあります。

――ネタバレにならないようにお聞きします。ラストを迎えた後の、増田さんの思う花の未来は?
 作品を通して、花は、人に頼りすぎているという印象がとても強かったので、誰かに依存せずに、自立することが必要だと感じていましたから、その覚悟が定まった、と思っています。ある意味、藤吉さんが演じられたジャズシンガーのようになって、悟って、未熟な人には“若いわね”って言えるような存在になるんだろうなって、考えていました。

――今後、演じてみたい役や設定はありますか?
 役柄についてはもう、いろいろなものを演じてみたいです。設定というかジャンルについては、『万引き家族』のような、ドキュメンタリーチックな作品にすごく興味があるので、カメラ回しっぱなしで、役柄というより等身大の私のままで出られる。そうした作品に出演してみたいです。

――最後に月並みな質問ですが、見どころをお願いします。
 誠兄と花、とにかく不器用な二人が積み重ねていくコミュニケーションに注目してほしいです。私は、二人がベッドの上で話すシーンが一番好きで、お互いの本音がぶつかり合って、心が解け合っていく……。その雰囲気を、ぜひ皆さんにも観ていただけたらなと思います。よろしくお願いします。

映画『Love song』

10月20日(金)より池袋シネマ・ロサにて上映! ほか全国順次公開

<キャスト>
増田有華 木口健太 山口大地 /藤吉久美子 本田博太郎 青木一馬 平岡 大 牧野裕夢 広瀬彰勇 大川夏凪汰 佐藤真澄 角 謙二郎

<スタッフ>
監督:児玉宜久 脚本:村川康敏、宍戸英紀 企画:利倉亮、郷 龍二 プロデューサー:江尻健司、北内 健 アシスタントプロデューサー:竹内宏子 撮影:中村耕太 照明:竹村 潤 録音:大塚 学 美術:石毛 朗 編集:高橋信之 助監督:ハシテツヤ 制作担当:赤間俊秀 ヘアメイク:中林季美子 スタイリスト:森 流星 スチール:阿部拓朗 音楽:Les.R-Yuka 整音・MA:嶋田 茂 音響効果:加藤博紀 キャスティング協力:関根浩一、北野裕子 営業統括:堤 亜希彦 制作:レジェンド・ピクチャーズ 配給協力:マグネタイズ
2023年/日本/85分/カラー/ステレオ/R-15作品
(C)2023「ラブソング」製作委員会

増田有華 SNS
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