泥臭く、力強く、筋が通っている。根底にブルースへの深い愛情がある。だから私はクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルが好きだ。存続期間は1968年から72年まで。再結成は一度もしていない。はっきりいって過小評価気味だと思うが、その風潮が是正される大きなきっかけになるであろう映画『クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド』が、9月22日から角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開される。

 1950年代後半に主要メンバーが出会った頃の話や、前身グループ“ゴリウォグス”について触れられているのも親切だし、そこからクリーデンス(欧米での略称。CCRと頭文字で呼ぶのは日本だけかもしれない)の結成へと話が移り変わってゆくテンポも実にいい。カリフォルニアに拠点を置き、サンフランシスコのレーベル“ファンタジー”と契約、しかし結成の頃にシスコで全盛だったはずのフラワー・ムーヴメントやヒッピー・ムーヴメントとは一線を画しつつ、アメリカ南部への思いをにじませた骨太の音作りで徐々にヒット・チャートに進攻していくあたりのサクセス・ストーリーにも胸のすく思いがする。

 が、メインはやはりライヴ映像だろう。1970年4月14日、つまり歴史的な「ポール・マッカートニーのビートルズ脱退宣言」から4日後にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた伝説的なパフォーマンスを、50数年前のフッテージに対してこれ以上求めたら酷だろうといえるほど抜群の画質・音質で体験することができるのだ。

 転がしのモニタースピーカーなどなく、弦楽器とアンプの間にはシールドがしっかりつながれていて(ワイヤレスはまだ到来していない)、ステージ上の音をデカくしてそれをそのまま客席に伝えていた時代の、ジョン・フォガティ、トム・フォガティ、ステュ・クック、ダグ・クリフォード全員が接近しあわなければ互いの音を聴きとりあえなかった時代の、気合と根性のロックである。「グリーン・リヴァー」、「プラウド・メアリー」、「ミッドナイト・スペシャル」など、70年当時のクリーデンスの定番がたっぷり見聴きできるのは実に嬉しい。監督はボブ・スミ―トン、ナレーションはカリフォルニア州出身の俳優で音楽家としての顔も持つジェフ・ブリッジス。

映画『クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド』

ヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町より9月22日(金)ロードショー!

監督:ボブ・スミートン
全曲歌詞字幕付
配給:オンリー・ハーツ
2022年|86分|アメリカ|字幕(歌詞全訳):林かんな
(C)2022 Concord Music Group, Inc.