10月にリリースを控える「角川映画UHDプロジェクト」の最新作『汚れた英雄』。新たにドルビーアトモス音声として甦ったイマーシブサウンドを試聴したインプレッションを前回のリポートでお伝えした。このドルビーアトモス音声を制作したサウンドデザイナーであり、劇場公開当時は録音技師としても本作に携わられた瀬川徹夫氏にお話をうかがう機会を得た。

「汚れた英雄 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】」(4K Ultra HD Blu-ray+Blu-ray+CD 計3枚組)¥22,440(税込、DAXA-5905) 発売・販売:KADOKAWA

●本編112分●3層ディスク(UHD)+2層ディスク(BD)●カラー●ビスタ●1982年公開/日本●音声:[UHD]1.日本語2023 Remix Dolby Atmos 、2.日本語劇場オリジナル4.0chステレオ、3.日本語劇場オリジナル2.0chモノーラル[BD]1.日本語劇場オリジナル4.0ch ステレオ2.日本語2.0chステレオ、3.日本語2004 Remix 5.1chサラウンド●字幕:日本語字幕

[同梱特典]●「THEIGNITION KEY OF THE LAST HERO」(A4/ソフトカバー/90P以上)●『汚れた英雄』劇伴CD●アウタースリーブケース付【初回限定特典】※劇伴CDについては、2023年に未使用楽曲を含めた完全版としてCINEMA-KANレーベルよりリリース予定
[映像特典]●「『汚れた英雄』製作会見ニュース」(スポニチ映像)●TV SPOT 15秒(1種)・30秒(2種※初収録)●特報、予告篇

 今回のディスク化で新たに制作されたDolby Atmos 2023 Remixは「現代的な音のトーン」「情報量」「迫力」。この3つがキーワードだと感じている。瀬川氏のアトモス化にかける熱の入れようがそのままダイレクトにサウンドデザインに現れているかのような印象なのだ。先にIMAGICAエンタテインメントメディアサービスのスタッフから聞いていた“本編で使用していた当時のSE(サウンドエフェクト)を元素材にまで遡って取り寄せた”エピソードについて訊ねてみた。

 「その通りです。制作当時はもっとME(Music & Effect)とかSEとか、角川さんの方に素材はいっぱい渡していたはずなんですが、もうほとんど使えるものが残っていないのがわかりました。そこで当時の効果部のスタッフに連絡を取って「なにか素材は残っている?」と尋ねてみたところ「あるよ! ぜんぶ6mmテープで残ってる」(笑)

 今回のアトモス化の作業にも協力してくれることになったので、僕の方で選んだシーンごとに必要な音を貼り付けてもらいました。何度もやり取りを重ねて、音の材料がすべて揃ってから、DVD化の時に制作した5.1chのトラックをベースにして僕のスタジオで新たにアトモス用のミックスをしました」

 例えばサーキットで流れるDJ役の伊武雅刀さんの声だけを抜き出してトップスピーカー用に配置したり、サブウーファーに低音の成分を足しこんだり、細かな再調整を全編に渡って施しているという。

 「ちょうど時間があるタイミングでしたのでミックスをしては試聴をして手を加える、自宅のスタジオでもスクリーンに投写してチェックを繰り返しながら仕上げていきました」

 そんな瀬川氏の言葉を聞くと、これだけ手がかけられているのだからもはや “セルフリメイク” とも言えるのではないかと感じた次第だ。まさにトラックタイトルの通り、「2023 Remix」なのである。

 『汚れた英雄』の監督はプロデューサーでもある角川春樹氏。初監督作品である。角川氏がいかに日本映画界に旋風を吹き込んだか、プロデューサーとしての辣腕ぶりは今も多くのエピソードとともに語り継がれているが、監督としての姿は瀬川氏の目にはどのように映ったのだろうか。

 「角川監督は怖かったですよ。『汚れた英雄』以降も角川監督の作品には参加しているんですが、常に自分の描いたイメージがしっかりある。完璧主義者ですね。やっぱりカリスマだと思います。角川さんは監督になると、もう撮影の時も作品の世界に “入り込んでしまう” んです。ヨーイ、スタート! と声を掛けてカメラが廻りだすと芝居に集中してしまうあまり、カット! をかけ忘れることが何度もあったことをよく覚えています」

 「『汚れた英雄』ではクランクイン前に監督が選んできた映画を見せる参考試写がありました。あのシーンはこんな感じに撮りたい、あんな感じに仕上げたい、スタッフに自分のイメージを伝えるための試写ですね。当時はそんなことをわざわざする監督は他にはいませんでしたよ。その時に伝えられた監督のイメージを念頭に置いて撮影に参加し、仕上げのダビングにも臨みました。撮影時の複数のカメラに対応するために助手さんも7〜8人を揃えて、カメラごとに録音部を配するような大掛かりな体制の撮影は後にも先にもありません。あの時代、角川さんだから出来た作品だと思いますね」

お話をうかがった瀬川徹夫さん。映画録音技師として、角川作品を始め多くの名作映画を手掛けている、まさにシネマサウンドのレジェンドだ

 瀬川氏は角川春樹監督作品には、既にUHDブルーレイがリリースされている『キャバレー』の他に、『愛情物語』『天と地と』『REX 恐竜物語』にも録音部として参加している。これらの作品も『汚れた英雄』と同様にDolby Atmos Remix化されるのを今から楽しみにしておこう。『汚れた英雄 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』は10月13日のリリースだ。

©KADOKAWA 1982

『汚れた英雄』UHD特典映像ダイジェスト

『汚れた英雄』UHD特典映像

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『汚れた英雄』Dolby Atmos音声映像

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