アシェット・コレクションズ・ジャパンから、1972〜1981年頃に放送されたテレビドラマを集めた「昭和 傑作テレビドラマDVDコレクション」を創刊された。その発売を記念して先日、第一弾作品『俺たちの旅』をフィーチャーした発表会が開催された。

 「昭和 傑作テレビドラマDVDコレクション」は1975年(昭和50年)に放送されて大ヒットした『俺たちの旅』を筆頭に、『俺たちの祭』『ゆうひが丘の総理大臣』『パパと呼ばないで』といった昭和時代の名作ドラマをコレクションできるシリーズだ。

現在発売中の「昭和 傑作テレビドラマDVDコレクション」創刊号

 パッケージにはドラマ本編を収めたDVDと、各話のあらすじ、注目シーンやロケ地、当時の出来事を解説したブックレットが同梱されている。DVDの盤面には毎回の本編の中から印象的なシーンが印刷されており、毎号集めたくなること間違いなし。

 発表会ではまず、アシェット・コレクションズ・ジャパン(株)のアントワーヌ・ドゥヴォー ゼネラルマネージャーと佐藤 健編集部長による挨拶が行われた。

 佐藤編集部長によると、今回『俺たちの旅』が創刊号に収録されることになったのは、本作が昭和世代(StereoSound ONLINE読者諸氏にもど真ん中世代は多いのでは?)にとってはひじょうに懐かしいもので、この作品に自分の青春を重ねていた人も多いからだという。それを今回出版物という形で残せることが嬉しいと佐藤氏(昭和43年生まれ。実家が吉祥寺近辺だったそうで、小学生の頃に本作の撮影現場に参加したことがあるとか)は話していた。

 そして、『俺たちの旅』の出演者から中村雅俊さんと田中 健さん、岡田奈々さんが登壇し、当時の撮影秘話などを交えたスペシャルトークショウがスタートした。

 3人が揃うのは2003年のスペシャル番組『俺たちの旅 三十年目の運命』以来とのことで、久しぶりにあった感想を聞かれた中村さんは、「不思議な感覚に陥るんですよね。それぞれ別々に会うことはあるんですが3人が揃うことはなくて、あ、これが『俺たちの旅』だなぁと瞬間的に思いますよね」と感慨深げに話していた。

 田中さんは「奈々ちゃんとお会いしたかったです。あの頃16歳、めちゃくちゃ可愛かったもの(笑)。本当に妹みたいだった」と嬉しそうに話し、岡田さんも、「調べてみたら、中村さんとお会いするのは9年ぶり、田中さんとは2003年以来だったんです。ご無沙汰しています」と、仲のいい様子がうかがえた。

 当時は中村さんと田中さんは撮影が終わった後も一緒に飲みに行っていたそうで、翌日遅刻することも多かったという。

 「それでも怒られなかったんです(笑)。『俺たちの旅』に関しては、スタッフとキャストが特殊な関係、特殊な世界を作って、本当に仲良く、楽しい時間を過ごしながら撮影を進めていくことができました」(中村さん)、「あんな作品はあれ以来ないですね」(田中さん)と、当時の制作現場の雰囲気がいかによかったかも懐かしそうに語ってくれた。

 ちなみに本作のオープニングには、当時の新宿コマ劇場前にあった噴水の中を3人が歩いたり、吉祥寺のアーケードで肩車をするといった印象的なシーンが写っている。

 「今だから言えるんですけど、噴水のシーンは撮影許可を取っていなくて(笑)、俺ら3人が隠れていて、監督がキューを出したら飛び込めと言うんです。俺が先頭だったんですけど、噴水の中はヘドロが凄いんです。中に踏み込んだとたんにズボッと腰くらいまで沈んじゃって、でもそのまま出ていかなきゃいけなくて、ハプニングでしたよ」(中村さん)

 「肩車も急に監督からやってっていわれて」(田中さん)と今でいう無茶振りだったとかで、「サンロードの入り口あたりで言われて、誰が一番上かもその場で言われて、でも肩車のどの場所に居ても怖いんですよ。だからあのシーンは3人とも凄い顔をしていますよ。とにかく必死でした」(中村さん)と現場の生々しい様子を語ってくれた。

 ちなみに本作で思い出に残っているエピソードを聞かれた岡田さんは、「22話の『少女はせつなく恋を知るのです』というタイトルだったと思うですが、もう大好きなんです。中村さん演じるカースケに恋をするお話だったので、遊園地に行ったり、ローラスケートをしたり。それまではカースケのことはちょっとエッチな、お兄ちゃんの友だちといった印象しかなかったんですが、カースケの暖かさに感じるものがあって、恋をするようになったんだと思うんですが、楽しかったですね」と、とても鮮明に思い出を話してくれた。

 その他に思い出に残っていることを聞かれて中村さんは、「『俺たちの旅』の前に松田優作さんと『俺たちの勲章』という刑事ドラマを、同じプロデューサーでやっていたんですが、こちらは大学生の話ということではっきりしたストーリーじゃないんですよね。それで、最初に台本を見せてもらった時に、“ドラマがない。どういう話なんですか?”と伝えたんです。それで、エンディングの詩ができたんです。最後に、これはこういう話なんですよ、と補足する苦肉の策だったようです。でもそれが凄く印象的な終わり方になったんですね。

 『俺たちの旅』は内容も素晴らしいが、小椋佳さんの歌がなかったら内容も違ったんじゃないかと思うくらいです。当時小椋さんはアメリカに居て、デモ用のカセットテープ送ってもらったんですが、俺ってこういう奴なんで(笑)、1ヵ所だけ小椋さんの歌通りに歌っていないところがあるんだよね。その後、番組で小椋さんと一緒に歌うたびに“雅俊くん、ここは違うよね”と言われるんです」と貴重なエピソードを明かしてくれた。

 最後に今回『俺たちの旅』が改めてリリースされることを受けて視聴者に伝えたいことを聞かれ、3人それぞれに以下のように答えてくれた

左から、アシェット・コレクションズ・ジャパン(株)のアントワーヌ・ドゥヴォー ゼネラルマネージャー、岡田奈々さん、中村雅俊さん、田中 健さん、佐藤 健編集部長

 「48年前のドラマに明かりを照らしてくれて、また皆さんに見てもらえるのが、俺自身嬉しくて仕方ないです。このドラマは自分でも自慢したいくらい素敵な作品です。友情、人を愛する、人生をどう生きるかと言った普遍のテーマを描いているので、今に通じるものがあると思います。昔見ていた人も、この作品を知らない若いに人も見てもらいたいと思います。“生きるということは切ないよね”ということを感じていただきたいと思っています」(中村さん)

 「48年前の作品になりますけど、まだ役名で呼ばれるんです。そんな作品はないと思います。これは勲章だなと思っています。それが改めてDVDになる、こんな役者冥利に尽きることはございません。本当に嬉しい限りです」(田中さん)

 「環境が変わると友情がなかなか続かないと思うんですが、でもこの3人はいつまでも続く熱い友情を持っていることが分かりますよね。じんと来るお話が沢山ありますので、ぜひご覧になって下さい」(岡田さん)

 「昭和 傑作テレビドラマDVDコレクション」は書店、またはウェブにて絶賛発売中で、創刊号は特別価格¥499(税込)、第2号以降は通常価格¥1,799(税込)で発売される。『俺たちの旅』に続いて上記のようなドラマが収録予定で、全123号になるとのことだ。