オーディオ機器のチューニングや音質改善のためのアイテムとして、様々なアクセサリーが発売されている。果たしてそれらを使うとどんな効果があるのか。今回はアコースティックリバイブのアクセサリー3種を使い、実際にわが家の試聴室でその効果を体験。それぞれのアクセサリーの有無による音の違いを空気録音している。気になるアクセサリーの音質効果についてじっくりと検証してみたい。
※今回の取材に関する鳥居さんのコメントはこちら ↓ ↓
アコースティックリバイブは、電源コードや各種の信号ケーブル、オーディオボードやスピーカースタンドなどを発売しているブランドだ。趣味のオーディオの世界だけではなく、レコーディングスタジオやマスタリングスタジオなどのプロの世界でも多くの支持を得ていることでも知られる。
そんなアコースティックリバイブはオーディオアクセサリーも数多く扱っている。それらのうち、長年に渡って人気の高い3アイテムを使って、わが家の試聴室で実際に試してみようというのが、この記事の主旨だ。ぼく自身、こうしたアクセサリーには強い関心を持っているし、各種のケーブルはもちろんインシュレーターやオーディオボードなどはいろいろと試して気に入った物を使用している。今回はどのような効果が得られるのか、とても楽しみだ。
チェック1:手軽に良質なアース環境を実現できる
グラウンディング・コンディショナー「RGC-24K」の効果は?
グラウンディングコンディショナー 「RGC-24K」 ¥96,800(税別)
RGC-24Kは、内部に貴陽石やトルマリン、水晶など様々な天然鉱石をブレンドした特殊構造を採用し、オーディオ機器に接続するだけで良質なアース効果を発揮するアイテム。オーディオ機器から発生する有害な電界成分を低減させS/Nや音像定位、立体感や音場感を劇的に改善してくれる。前モデルRGC-24からのバージョンアップも可能(¥30,000、税別)。
まずは、グラウンディング・コンディショナー「RGC-24K」。これは今話題となっている「仮想アース装置」。一般的な住宅ではなかなか対策が難しい良質な設置アース環境を実現するものだ。この製品は様々な天然鉱石(トルマリン、水晶など)をブレンドした特殊構造を持つもので、もともと発売されていた「RGC-24」に貴陽石を追加して効果を高めている。
わが家では本格的な設置アース工事を行っておらず、試聴室およびオーディオ用の電源アースは一般家庭と同レベルだ。そのため、ステレオ再生用のプリアンプ、ベンチマーク「HPA4」も電源タップ側でアースを浮かせている。これは本機の導入時に聴き比べた結果、アースを落とすよりも浮かせた方が音質的に好ましかったためだが、良質なアース設置が得られるならばその方がいいと思っているし、それだけに仮想アース装置にも興味はあった。
試聴に使ったのは、ステレオサウンド社から発売されている『StereoSound Hi-Res Reference Check Disc』から、ビル・エヴァンスの演奏などで知られるジャズのスタンダード「My foolish Heart」(192kHz/24ビット)。RGC-24Kなし、つまりわが家のいつもの状態でも、ピアノの奏でるメロディとサックスの音色の調和など、曲の持ち味がしっかりと感じられる。
そして、HPA4に仮想アースのRGC-24Kをつないでみる。HPA4にはアース端子は搭載されていないが、RGC-24Kには長さ50cmのアースケーブルとRCA端子と接続するための変換プラグも付属しているので、空きRCA端子につなぐだけと手間はかからない。今回は使用していないオーディオ出力端子のマイナス側に接続した。
そして、一般的な仮想アースとちょっと異なるのが、RGC-24Kの丸い薄型の本体を接続した機器の下に置くこと(電源トランスの直下に置くのがお薦め)。どうやらRGC-24Kは電源トランスの発する磁束漏れにも影響するようだ。HPA4はコンパクトなAB級プリアンプで、スイッチング電源を使用しているため大きな電源トランスは持たない。今回はボディ下部の電源部のあるあたりに配置した。
さっそく「My foolish Heart」を聴いてみると、まず音がなめらかになったと感じた。ピアノの高域にまとわりついた輪郭の強調感がとれ、自然な感触の音色になる。ピアノだけでなく、サックスの音色も厚みを増し、アコースティック楽器の音色がよりナチュラルな感触になったとわかる。
個々の音像定位もよりくっきりとするし、そのため特に音場の奥行が豊かになったと感じる。もともとS/Nに優れたプリアンプなのでここがあきらかによくなったと断言するのは難しいが、特に中高域の明瞭度が上がっていること、ピアノの音の消え際、音の余韻が際立つなど、微小音の再現が向上していることは間違いない。これはなかなかの効果だ。
チェック2:シューマン共鳴波って何? 本当に効く!?
超低周波発生装置「RR-777」
超低周波発生装置 「RR-777」 ¥41,800(税別)
1954年、ドイツの物理学者W.O.シューマン博士により発見されたシューマン共鳴波(地球が地表と電離層との間に発生させている7.83Hzの共鳴波)を人工的に再現する。この現象は地球が誕生したころから続いており、同社の研究によれば脳にいい作用があるとされている。電源を入れて、1.5m以上の高さに置くだけと設置も簡単だ。
続いては、シューマン共鳴波による音質改善装置である超低周波発生装置「RR-777」。シューマン共鳴波とは、地球の地表と電離層の間に発生している7.83Hzの共鳴波のこと。1954年にシューマン博士が発見したもので、こうした共鳴波が存在することはきちんと確認されており、その後の研究によって人間の脳にひじょうにいい作用があると言われている。
地球上の生物は、この共鳴波が存在する環境でずっと生きてきたのだが、現代では様々な電波や電磁波が飛び交うようになり、シューマン共鳴波が乱れたり、弱まっていると言われている。このシューマン共鳴波の乱れをなくすことで、リラックスできる、睡眠の質が向上するといった効果があるとされる。シューマン共鳴波発生装置というと、オーディオ用アクセサリーというより、健康アイテムとしての方が知名度があるほどだ。
RR-777は、“シューマン共鳴波が人間の脳にいい作用があるなら、聴覚にはどう反応するのか”という疑問から始まったアコースティックリバイブの研究の成果で、音響的にも画像的にも想像以上の効果があることが判明したという。人工的に7.83Hzの電波を発生させる装置としては、初代機が「RR-7」で次が「RR-77」となっており、本機は第3世代に当たる。
この機器は、趣味のオーディオの世界だけではなく、演奏家やレコーディングエンジニアにも認められており、レコーディング現場やミキリングルームなどへの導入例もあるという。
とはいえ、耳に聞こえないような低周波の電波が人間の脳に作用するであろうことは理解できるが、音響や映像にまで効果があるという理屈はすぐには受け入れがたい。地球上の自然な状態である7.83Hzの共鳴波が整っている環境だと大気を伝わる音の伝導率がよくなるとか、電子機器の動作にも少なからずいい影響があると言われるが、根拠としては不明瞭だ。
オーディオアクセサリーには、科学的な根拠が曖昧ながら「音がよくなる」といった製品もいくつか存在する。RR-777もその一種なのではないか? 個人的には興味はあるが、記事で紹介していいのか、正直なところ疑わしい気分でいっぱいだった。
設置も、付属のACアダプターで電源を取り、部屋のなるべく高い位置(1m50cm以上を推奨)に置くだけ。これは電波の指向性が下方向に広がるためで、スタジオなどでは天井に取り付けていることもあるそうだ。効果の届く範囲は10m以上あるようなので、一般的な家屋、室内ならばどこに置いても大丈夫だろう。今回の取材ではプロジェクターを設置しているラックの棚に置いてみた。
電源もオーディオ機器とは別の、パソコンなどを接続している電源タップから取っているし、オーディオ機器と物理的に接続されてはいない。本当にこれで音に効果があるのだろうか?
この状態で、先ほどと同じく「My foolishHeart」を聴いた。最初は違いを感じにくかったが、曲が進んでくると音がなめらかになったと感じる。ピアノソロは音がしなやかで、響きが部屋に広がる様子や余韻の美しさが出ている。音自体のエネルギー感も高まったようだ。どちらかというと音は穏やかになる感触で、上品というか少し大人しい感じもあるが、タッチの力感はしっかりと出ている。サックスに息を吹き込む感じもより生々しくなり、ピアノの音とのハーモニーが溶けあう様子もきれいだ。なめらかで聴き心地がよく、より自然な感触の音になったと言えそうだ。
ただし、僕の好みからするとちょっと元気が足りないような気がしたので同じ「Stereo Sound Hi-Res Reference Check Disc」から「Percussion Solo-D」というドラムなどの打楽器主体の曲も聴いてみたが、打楽器のようなアタックの強い音が柔らかくなるようなことはなく、むしろ立ち上がりが早く力強くはっきりとした音になる。打楽器が一斉に鳴るパートでも、個々の音がきちんと分離しており、浮かぶような自然な音像定位を感じる。決して力強さが弱まるとか、元気のない音になるということはない。あくまでも音源に忠実な、自然なたたずまいの音になるという感じだ。
確かに音はいい方向に変わる。ただし、これが物理的に耳に届く音に変化があるのか、脳への作用で聴き手の感度が上がっていい音になったと感じたのかは判断できない。だから、ここでのぼくの印象も、人によって異なるのではないかという気もする。しかし、録音の現場での使用例では、録音された曲にも顕著な音の違いが現れたという。今回の取材も空気録音で収録しているので、ぜひ動画でその効果を確認してみてほしい。
チェック3:逆起電力の影響を低減し音質を改善する、
バイワイヤーアダプター「BWA-4」の効果に驚く
バイワイヤーアダプター 「BWA-4」 ¥16,800(ペア、税別)
※写真は2ペアで、スピーカー接続用のケーブルやYラグは別売
バイワイアリング対応スピーカーを愛用しているけれど、ケーブル引き回しの問題からシングルワイアリングでつないでいるという方も多いだろう。BWA-4はそんな人に最適なアクセサリーだ。入力(アンプ)側のケーブル挿入穴は内径4.3mm、出力(スピーカー)側は内径5.9mmで、入力側はYラグ(内径8mm以上)も装着可能。プラス用/マイナス用のセットなので、L/Rスピーカーで使う場合は本機が2ペア必要。
最後は、バイワイヤーアダプター「BWA-4」。これは、スピーカーケーブル一組で、バイワイアリング接続と同等の効果を得られるアクセサリーだ。
高級スピーカーの多くには、低域側と高域側のふたつの端子が用意されている。スピーカーのドライバーは電気を通すと振動板が動く仕組だが、振動板が動くと同時に電気が発生する。これが逆起電力だ。たとえばウーファーのような大きな振動板は一度動き出すと電気を切ってもしばらく動き続ける。このときに逆起電力が発生してしまう。
上記のようなスピーカーが低域側と高域側でスピーカー端子を分けているのは、この悪影響を低減するため。こういったモデルに一組のスピーカーケーブルで接続する場合(シングルワイアリング)は、低域側と高域側の端子間をジャンパー線などで接続する。だが、このジャンパー線で低域側の逆起電力が高域側に回り込み、トゥイーターの動作に影響を与えてしまうのだ。
これを排除するのがバイワイアリング接続で、二組のスピーカーケーブルを使用してアンプとスピーカー端子を別々につなぐ方法だ。これで低域側から高域側へ回り込む逆起電力の経路が長くなり、影響を低減できる。問題があるとすれば、スピーカーケーブルが二組必要になること。特に高価なケーブルを使用しているユーザーだと、もう一組追加するのもなかなか難しいだろう。
そこでBWA-4の出番だ。これは、一組のスピーカーケーブルをふたつの信号線に分岐させるアダプターで、プラスとマイナスのケーブル用に1ペア(2個)使い、ステレオ再生では左右で2ペア(4個)使用する。仕組としては単純だが、低域用と高域用に信号を均等に分配し、逆起電力の影響もきちんと排除できるという。そのために、鏡面研磨された黄銅に銀+ロジウムメッキを施し、-196度の超低音処理も施して導通性を高めたほか、ジュラルミン製のキャップで制振効果も高めている。
使い方としては、今使っているスピーカーケーブルを少しカットしてBWA-4とスピーカーの低域側、高域側端子間をつなぐケーブルに流用する。こうすれば異なるスピーカーケーブルを使うことなく分岐が可能だ。BWA-4側はネジによるカシメ式(六角レンチも付属)でケーブルをつなぐ仕組なので、ハンダ付けなどは不要。今回は取材のために、あらかじめ単線スピーカーケーブルで分岐線を作成したものを使っている。
試聴に先立って、フロントスピーカーのB&W「Matrix 805 S3」をジャンパー線を使ったシングルワイアリング接続にセット。この状態で「My foolish Heart」を聴くと、基本的にはいつも通りにわが家の音だが、通常はバイワイアリング接続で使っていることもあり、ピアノの音色に硬さや多少のザラついた感じもあった。
BWA-4を使った接続にすると、その効果がはっきりとわかる。高域のザラついた感じがなくなり、音場がスカっと晴れ渡ってくる。ピアノとサックスの音像定位が明瞭で、音がすっきりと分離し、それでいてハーモニーが豊かに溶け合う様子がよくわかった。低域側もリズムがよく弾み、立ち上がりの速さが出てくるなど、総じて好ましい結果となった。
またBWA-4は音色的な変化がほとんど感じられなかったのもいい。ジャンパー線では質の高いものを選んでも少なからず音質への影響があるし、低域側と高域側で配線長が変わるので位相がずれる心配もある。BWA-4にはこうした問題が基本的に発生しないので、安心して使えるのも大きなメリット。高価なスピーカーケーブルを追加するよりもコスト的な負担が少ないのもありがたい。
チェック4:3種類の異なるアクセサリーを全部使う。
お互いに邪魔をしない、驚きの効果が!
今回試聴した3種類のアクセサリーは仮想アース、シューマン共鳴波発生機、バイワイアリングアダプターとそれぞれ使う場所も効果も異なっている。最後にこの3つを同時に使ったらどうなるかを試してみた。それぞれの効果は明瞭にありつつ、しかしお互いに邪魔をしないという理想的な再現に鳥居さんも驚いていた。
それぞれのアクセサリーの効果は確認できた。そこで最後に、すべてを使った状態も聴いてみることにした。3つの相乗効果はたいしたもので、各アクセサリーの効果がすべて反映されているし、しかもより自然で実体感のある音になった。ピアノの音はなめらかでありながらもタッチの強弱もはっきりとわかる。エネルギー感があって、音の粒立ちや分離、音場の見晴らしのよさも見事だ。
聴き慣れたクラシック曲も再生してみたが、音場感豊かな録音のよさが際立ち、ステージが目の前に広がる感じがよりリアルになった。個々の楽器も明瞭になり、質感も実に自然だ。雄大なスケールを感じながら、ひとつひとつの楽器をつぶさに見ているような聴こえ方は僕の好みにも合うし、あきらかな音質向上が実感できる。
もうひとつよかったのは、それぞれのアクセサリーの音の方向性が揃っていて、ケンカするような感じがなかったこと。総じて自然で明瞭な定位と広い音場に効果があり、音色の変化は少ない。これならば安心して複数のアクセサリーを組み合わせることができるだろう。
鳥居さん宅の主なシステム(2chシステム)
●ネットワークストリーマー:BLUESOUND NODE
●USBDAC:コード Hugo2
●プリアンプ:ベンチマーク HPA4
●パワーアンプ:ベンチマーク AHB2×2
●スピーカーシステム:B&W Matrix 801S3(フロント)
今回の記事を読んで3種類のアクセサリーを試してみたいと思った方は、まずバイワイヤーアダプターのBWA-4から始めるのがいいだろう。単独で音の効果がはっきりとわかるし、基本的な部分を対策することで、仮想アースやシューマン共鳴波発生装置のようなアイテムの効果がより実感できると思う。
もちろん、気になるアイテムだけを選んで使うのもアリだ。その場合でも、ある程度満足できるセッティングが整ってから試すといいだろう。スピーカー設置位置やルームアコースティックなどで迷っている段階だと、効果がわかりにくいのではないかと思う。
取材後もしばらくこれらのアクセサリーを試用しており、ますます効果を実感している。グラウンディング・コンディショナーRGC-24Kは、AVプリアンプのマランツ「AV10」にも試してみた。こちらも音質への効果は確認できたが、「HPA4」との組み合わせの方が、効果が大きいと感じた。このあたりは機器のアース環境による効果の違いも出るようだ。また、アンプに限らずプレーヤーなどの機器と組み合わせてみるのも面白そうだ。
超低周波発生装置RR-777は当初の疑わしい印象から一転して、今では常時使っている。これについては物理的な現象としての根拠を示すのが難しいので結果だけをお伝えするが、防音された試聴室内の静かだが何かざわついている感じが消えた。わずかな差ではあるが、部屋に入ったときの気持ちよさがある。また、音への効果以上に疑問視していた映像への効果も実感できた。映像のフォーカス感が確かに向上している。この効果はなかなか素晴らしい。
バイワイヤーアダプターBWA-4も、一度はもともとのバイワイアリング接続に戻したが、現在はバイワイヤーアダプターを使っている。純粋なバイワイヤリングとの音質的な差異を感じなかったことが一番の理由だ。現用のスピーカーケーブルSUPRA「SWORD」が一組余るので、他のスピーカーとの接続に回そうと考えている。
今回の取材では、初期状態(シングルワイアリング接続でアクササリー類は未使用)/それぞれの製品を単独で使用/すべてのアイテムの同時使用、の5パターンで空気録音を実施している。空気録音でこうしたアクセサリーの音の違いが感じられるかどうかも興味深いし、その効果を自分の耳で確かめられるのも貴重な情報になるだろう。ぜひとも動画の方もチェックしていただきたい。
192kHz/24ビット音源から「My foolish Heart」をじっくりチェック!
今回の試聴では、弊社から発売中のハイレゾBD-ROMから、「My foolish Heart」(192kHz/24ビット)を再生している。このBD-ROMにはCDフォーマットの44.1kHz/16ビットからPCM 384kHz/32ビット(WAV)、DSD11.2MHz/1ビットの最上位のハイレゾフォーマットまで(DSF)、12曲全47音楽トラックを収めており、各フォーマットの音質的特徴を確認できる。ハイレゾ再生システムの比較試聴用としてお勧めです。
提供:関口機械販売