オーディオテクニカから、完全ワイヤレスイヤホン用の新作イヤーピース「AT-ER500」が、明日7月21日に発売される。特徴としては、別稿の記事でも紹介しているように、温度(人肌)によって形状が変わる「アブソートマー」という素材を用い、人それぞれで異なる耳穴にピッタリとフィットすることで、装着性や密着性、音質が向上するという優れものだ。

パッケージは名刺カードサイズ(一回り大きい)で、1箱に4個(2ペア)入り。SMLの3サイズを用意する

 形状は薄型で、サイズはS/M/Lの3種類を用意。それぞれのパッケージでは、製品が2ペア(4個入り)同梱されている。価格はオープンで、想定市場価格は各¥3,000前後となる。

▼関連記事

 先々週の週末(7/8、9)開催の「ポタフェス2023夏 秋葉原」のオーディオテクニカブースでは、先行体験の場も設けられており、来場者たちは興味津々な表情で、新製品の試聴をしていたのが印象に残った。ここでは、発売に先駆けて同製品を借りることができたので、そのインプレッションを簡潔に紹介したい。組み合わせたのは、同社完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデル「ATH-TWX9」だ。

右が標準のイヤーピース。左が「AT-ER500」を装着したもの

 まずはその、ATH-TWX9のインプレッションから。フラッグシップモデルらしく、なんでも入りな仕様となっていて、近年のトレンドでもあるアクティブノイズキャンセル機能の搭載をはじめ、その効果を選択機能、リアルタイムでのノイキャンのパーソナライズ、aptX Adaptive(96/24)のサポート、3種類全12製品ものイヤーピースを付属、除菌システム搭載などなど、盛りだくさんなもの。搭載ドライバーはダイナミック型で、口径は少し小さめの5.8mmとなる。

グレーが「AT-ER500」(左と奥)。黒(手前と右)が製品添付のイヤーピース

 試聴では、Astell&KernのDAP「A&ultima SP1000」を組み合わせているので、BluetoothコーデックにaptX Adaptiveを使えないのは残念だったが、aptXでもフラッグシップらしいサウンドを聴かせてくれた。当初は強めに感じた低域も20時間ほどエージングをかけたところほどよい塩梅となり(それでも少し低域は強めだが)、全体的にフラットで、定位感に優れたサウンドをなった(おでこのあたりに定位するので心地よい)。mp3、CDクォリティ、ハイレゾと、コンテンツに合わせて表現力が向上していくさまが耳(?)にとるように分かるのも、本機の美点と言えるだろう。ちなみに、イヤーピースはStandardのMサイズ、ノイキャンはオフで試聴している。

自社の組み合わせだけにデザインもぴったり(黒色もほしい)。薄型デザインのためか、記者の難物の右耳には(体温で変形していても)あまりしっくりこなかった

 次に、本稿のテーマとなる「AT-ER500」に付け替えて試聴してみた。サイズはMを使用している。一応記しておくと、記者の右耳の穴の形状はなかなかに難物で、ぴったりと合うイヤーピースは少ないので、S/M/Lサイズを一通り試してみて、音質的にしっくりくるMサイズを選んで試聴を行なっている(逆に左はなんでも合うので、普通にMサイズを使用した)。

 ちなみにAT-ER500の手触りは、練り消しのような感じで、結構弾力があり、ウレタン系のものよりも硬めの印象だ。指先でつぶしても、じわーッと形状復帰するところは面白いもの。

 さて、本題の音質について。一聴して感じるのは、これまで隠れていた細かい音が掘り出されてくるようで、ディテイルの再現性が各段に向上しているところ。全体的に厚みも増しているようだ。さらに、ボーカルのニュアンスもより浮き出てくるようで、同時に質感もよくなり、しっとりとした艶を(ボーカルに)感じられるようになった。高域の再現性も増していて、自分の上方に音空間が拡大しているようになり、音階が階段状に構築されている様が、如実に感じられるようになった。

 mp3コンテンツでも、重心の下がった落ち着いたサウンドとなり、厚さも増してくるので、情報量の少なさから来る音の軽さも軽減されるようだ。ボーカルも浮き出てくるようになり、ある意味簡易的なASMRを味わえるようなサウンドが楽しめた。