タクトシュトックは、CANOR AUDIO(カノア・オーディオ)の新製品として、管球式ステレオプリメインアンプ「AI 1.10」を7月1日に発売する。価格は¥1,430,000(税込)。昨日開催されたOTOTEN2023の同社ブースでもデモされていた注目機だ。

 カノア・オーディオは、1995年にスロバキア共和国東部のプレショフに設立された。社名はラテン語で音を意味するCANORからとられている。1995年に最初の作品である「TP101」真空管インテグレーテッドアンプのプロトタイプを発表、2008年頃から西欧、北米マーケットへの進出を果たし、近年ではおよそ35ヵ国に輸出されている。

 また同社は多くのオーディオブランドのODMを請け負っている事でも有名だ。ODMとは、製品の設計、開発から製造までを請け負い、完成品を依頼したブランドに納入するわけで、ここからもカノア・オーディオの設計能力、技術力の高さがうかがえる。

 AI 1.10は、KT88ハイパワー管4本を使ったクラスA動作真空管プリメインアンプで、新開発された専用100Vトランスが搭載されている。オートバイアス機能を備え、トライオードモード(20W)とウルトラリニアモード(40W)の切り替えがスイッチひとつで可能。この切替えは、音楽を聴いている最中にも行うことができ、室内楽やヴォーカルといった音楽ではトライオードモードを、ロックやジャズといったグルーヴ感を楽しみたい時はウルトラリニアモードを、といったように気分や音楽によって変更できる。電源を落とす事なくモード切替えができるのは、オーディオファンには嬉しいだろう。

 カノア・オーディオにサプライヤーから供給された真空管は、最初に200時間のバーンインが行われ、最高のパフォーマンスが得られる状態になった後で、測定器のアラジンによって更なるテスト、選別、ペアリングが行われる。AI 1.10に採用される真空管は繊密に選ばれただけでなく、完璧なマッチングもとられていることになる。これは真空管アンプにとって重要なポイントでもあるという。

 またAI 1.10には、入力電圧をリアルタイムで監視し、トランスの最適な入力(1次側巻線100/105/111V)を自動で切り替える安定化回路(VSC)回路が搭載されている。これによるパフォーマンスが向上するだけでなく、真空管の長寿命化も実現できるそうだ。

 またAI 1.10は、CANOR データリンクケーブルを用いる事で片方のユニットはマスター、もう片方はスレーブとなり、2台組み合わせてスピーカーを駆動できる。その際2台のアンプはブリッジ接続(完全対称接続)となっている。プリアンプを別途用意し、モノーラルアンプを購入するよりも効率よく高音質化が測れる提案で、プリ部のボリュウムや設定は、マスターに完全に同期されるなど、操作性にも配慮されている。

「AI 1.10」の主な特長
●出力40W×2(ウルトラリニアモード)を実現したクラスA動作の真空管アンプ
●KT88ハイパワー管×4、オートバイアス機能、カソードフィードバック(KNF)
●トライオードモードとウルトラリニアモードを本体ボタンから即座に切り替えることが可能
●PCBには、CANORプレミアムCMTテクノロジーを採用
●リレーアッテネーターによる完璧なチャンネルセパレーション、各チャンネルの独立したブロック
●独立電源のコントロール部
●高い静電容量を持つフィルターコンデンサーが、スピーカーから正確でタイトな低音を引き出す
●信号経路には高品質のポリプロピレン・コンデンサーのみを採用
●アラジンによって選択、マッチングされた平均以上のパラメーターを持つ真空管のみを採用
●将来モノブロックとして使用にすることで、チャンネルあたり80Wの出力を確保可能

 さらに同ブランドでは今後も順次新製品を発売していく予定という。その概要は以下の通り。

DAC 2.10 ¥770,000(税込)秋以降発売予定
 カノア・オーディオの最新モデル。ESS SabreES9038Q2MDACをデュアル・モノーラル構成で使用。PCM 768kHz/DSD512/MQAフォーマットにフル対応した6922管×4を使用した真空管D/Aコンバーター。従来のDACとは一線を画すサウンドで、発売以来世界中で絶大な支持を集めている。

AI 2.10 ¥770,000(税込)秋以降発売予定
 出力150W(4Ω)を備えたハイブリッド・プリメインアンプ。正確なリレーアッテネーターを備えた真空管プリアンプ部(6922×2)とリニア電源を搭載したクラスDパワーアンプのコンビネーション。様々なOEM/ODMを行ってきたカノア・オーディオの真骨頂とも言える製品という。

※2022年に発表されたフラッグシップ・プリアンプ「Hyperion P1」とモノーラルパワーアンプ「Vitus M1」も登場予定。

「AI 1.10」の主なスペック

●出力:40W×2(4.8Ω、ウルトラリニアモード)、20W×2(4.8Ω、トライオードモード)
●使用真空管:KT88×4、12AX7×1、12AT7×2
●ゲイン:-30dB(8Ω)、-28dB(4Ω)
●入力感度:500mV
●再生周波数帯域:10Hz〜50kHz ±0.5dB/5W
●入力インピーダンス:30kΩ
●接続端子:アナログアンバランス入力×5(RCA)、アナログバランス入力(XLR、モノブロックモード時のみ使用可能)
●THD:0.05%以下(1kHz,5W)
●S/N:95dB以下
●寸法/質量:W435×H170×D485mm/26.0kg