テレビの音を簡単にパワーアップ!

 世界的にスピーカー専門メーカーが続々、アクティブスピーカーに走っているが、遂にエラックも最新型の製品化に踏み切った。DCB-41は、これ以上は考えられないほどの豊富な接続性と、エラックならではの高音質を特長としている。確かにインターフェイスの多彩さは業界随一だ。

 具体的には次の通り。①テレビとの接続用のHDMI ARC端子。テレビリモコンで音量調節が可能だ。光デジタル接続もサポートしているが、その場合は、テレビリモコンは使えず、本機のリモコンで音量操作する。②PCとの接続用のUSB端子。96kHz/24ビットのハイレゾ再生が可能なDACを内蔵している。③スマートフォンとはBluetoothで無線接続。apt Xに対応している。④フォノとライン入力のためのRCA端子。切替え式だ。RIAAのイコライザーを内蔵し、MMに対応。アース端子も当然装備する。

 ユニットはトゥイーターは19mmソフトドーム(さすがにJETトゥイーターの搭載は価格的に無理だ)、ウーファーは115mmポリプロピレンコーン。内蔵の50W+50W出力のCLASS Dパワーアンプは、これらのユニットと最適なチューニングを施したという。片側のスピーカーにアンプとDACが内蔵され、別チャンネルスピーカーには、スピーカーケーブルでアナログ信号を伝送する。コンパクトな筐体とウーファーなので、内蔵アンプに専用リモコンでオン/オフが可能な低音強調回路「X Bass」が搭載されている。さらにサブウーファー専用プリ出力端子も備える。

 

Active Speaker System
ELAC DCB-41
¥94,600(ペア) 税込

● 型式 : アンプ内蔵バスレフ型2ウェイ2スピーカー
● 使用ユニット : 19mmソフトドーム型トゥイーター、115mmコーン型ウーファー
● 内蔵アンプ : 50W×2
● 接続端子 : アナログ音声入力1系統(RCA/ライン、フォノ切替え式)、デジタル音声入力3系統(光×1、USB TypeB×1、HDMI ARC×1)、サブウーファー出力1系統(RCA)
● 備考 : Bluetooth対応(apt X対応)
● 寸法/質量 : W140×H245×D203mm/約3.5kg(アンプ内蔵スピーカー)、約2.85kg(アンプ非内蔵スピーカー)
● 問合せ先 :(株)ユキム TEL. 03(5743)6202

 

 

65インチテレビとの連携でベストな設置方法を探る

 このように、本スピーカーは多彩なインターフェイスを持つが、HDMI ARC端子を搭載した意義を考えるなら、テレビのコンパニオンとしての使用が最も正しいだろう。そこでどのようにテレビの横に置けば良いのかをはじめに試そう。デノンのSACD/CDプレーヤーDCD-SX1LIMITEDのアンバランス出力からアナログライン入力で再生。音源は、お馴染みUAレコードの『エトレーヌ/情家みえ』から「チーク・トゥ・チーク」だ。

 設置①テレビなしの空間にスピーカーを配置して、基本音質を確認する。GTラック上で、高さは本体底面で44cm。間隔は約200cm。私は長年のエラック体験で、同社のサウンドは「高品位、緻密、細かなグラデーション」が特徴だと心得ている。それらの多くはハイルドライバー方式のJETトゥイーターに拠るところが多い。となると本機のトゥイーターはソフトドームなので、これまで認識してきたエラックの特徴的な音の質感とは異なるのではないかと事前には思っていたが、現実には、エラック的な音調が色濃いではないか。こんなコンパクトなのに、こんな価格なのに……と、嬉しい驚きだ。「チーク・トゥ・チーク」冒頭のアコースティックベースの量感と力感が、この小さな筐体から意外なほど感じられた。と同時にスピード感も適切だ。ヴォーカルの伸びやかさ、その輪郭のクリアーさ、ディテイルまでの質感も、上級のエラック的な雰囲気だ。中域から高域に掛けての情報量の多さ、緻密さに大いに感心した。

 

 

 これで基本音質の高さが分かったところで、テレビコンパニオンとしての、最適な設置を試そう。スピーカーの間にテレビを置くと、音質的な問題が起きる。スピーカーボックスを回り込む音が、テレビの画面で乱反射し、スピーカーからの音に悪影響を与える。とはいうものの、本機はHDMI ARCでの使用をメインとして活用したいわけで、テレビを外すわけにはいかない。テレビの傍にどのように置けば最善なのかを、調べてみよう。

 設置②本スピーカーをテレビの左右のフレームに密着させ、正面向きに置く。私とテレビとの距離は156cm。二つのスピーカーの間隔は約180cmだ。ちょうどスピーカー間隔を一辺とする三角形のオルソン配置だ。はっきり言って、クォリティ的には大きなテレビ画面の影響をモロに受けている。自由空間の設置①では、エラックらしい上質感がストレートに聴けたが、ここではヌケが少し曇り、硬さが出る。ベースがかなり盛り上がり、量感はあるもスピードが減る。ヴォーカルもメタリックな質感を帯びる。とはいえ繊細で、音の粒子が細かいというエラック的な美質は、その中でも感じ取ることができた。では、ここからどう進むか。

 

 設置③スピーカーを聴き手に向けて置く。テレビに対して角度20度で、内振りに設置。スピーカーの正面左端とテレビの端とは接触している。②ではスピーカーは正面を向いていた。違いは内振りだけだが、音は確かに違う。開放的になった。冒頭のベースの鳴りに弾みが加わり、ヴォーカルのヌケが少し向上、クリアネスも上がり、メタリックさも減少。スピーカーとテレビの間にできた隙間が効くようだ。

 

 設置④インシュレーターを挿入。ここまでは、GTラックにベタ置きだった。視聴室常備のJ1プロジェクト製インシュレーターを挟んでみよう。5mm厚の薄いものだが、効果は抜群。ベース帯域の盛り上がりが減り、弾みのスピード感が増した。声のメタリックさも抑えられた。ヴォーカル音像も明確になった。さすがに①テレビなしの自由空間でのクォリティにはおよばないが、②のテレビ横設置より、かなり良くなり、エラック的な質感がより濃く感じられるようになった。このインシュレーターはなかなか凄い。

 

 この状態から、設置⑤スピーカーを同じ角度のまま、5cm前に出した。さらに向上した。ベースの輪郭が端正になり、弾みが活発に、ヴォーカルはメタリックさがさらに減少し、潤いも感じられるほど。たったの「5cm」だが、そもそもアンプとユニットの性能が高いので、少しのトリートメントでも敏感に反応するのだろう。

 

 これで配置は決まりだ。つまり正三角形配置/5cm前に/内振り/インシュレーター使用……だ。決定したところで、ムーティ指揮ウィーン・フィルの2021年ニューイヤー・コンサートのCDから「ファティニッツァ行進曲」。低音が豊潤に再生されるピラミッド的な音調だ。解像感が高く、ディテイルまでの見渡しがクリアー。音の粒子がくっきりと描かれるが、単に鮮明なだけでなく、エラック的コンテキストの緻密さや細やかさも感じられた。ウィーン・フィル的な、しなやかでグロッシーな音色のフレーバーまで聴けたのには、驚く。

 

CD、アナログレコード、そしてBD。多彩なソースを表現力豊かに鳴らす

 では正解のセッティングにて基本のCDの音が分かったところで、まずはライン切替えスイッチをフォノにして、アナログレコードを聴こう。テクニクスSL-1500C、カートリッジはプレーヤー付属のMM型オルトフォンM2Red。音源は同じ情家みえ「チーク・トゥ・チーク」だが、CDとは記録方式が違う。CDはデジタルのProTools録音だが、LPはスチューダーA820にて2インチ/76cm/secで録音し、ミックスダウン、マスタリング、カッティングまで一切デジタルプロセスはない。非常に細かな部分までが再生される解像感に感心した。冒頭のドラムスのスネアワークが丁寧に聴け、ヴォーカルもピアノも進行が快適で、CDとは異なるヌケの良さが印象的だ。こんなにコンパクトなのに、アナログらしい闊達さ、ヴィヴッドさが聴ける。SL-1500Cとの相性もよい。

アナログレコード再生ともぴったりフィットするのがDCB-41の魅力の一つだ。レコードプレーヤーは定番、テクニクスのSL-1500Cを使用、本機からフォノ出力を行ないDCB-41のフォノ入力に繋いだ。ノイズやゲインなどの問題はいっさいなし、闊達なサウンドを聴かせてくれた

 BDの音楽作品はどうか。パナソニックDMR-ZR1から有機ELテレビTH-65LZ2000にHDMI接続、そこからPCM 2ch信号が、ARCにて送られる。ポール・マッカートニーのスタジオライヴBDから「手紙でも書こう」。ベースの低音感が豊かで、体積感もくっきりと。ヴォーカルの質が良く、ニュアンス感も豊富だ。不思議なことにテレビの下端に置いているのだが、視覚効果で、ヴォーカル音像が画面中央のポール画像と一致するような錯覚も。ダイアナ・クラールのソロピアノのアクセントが効いた鮮鋭な音色も心に染みた。

 光デジタル接続も試してみよう。光デジタルは確かにHDMI ARCより澄み、細部も鮮明だ。でもテレビ映像とともに聴くという意味で、音場の適切なまとまりと力感の点で、HDMI ARCの方がコンパニオンとしてふさわしい印象だ。

 サブウーファーを追加したらどうか。エラックのDebut S10.2(¥68,200 税込)を加えてみた。確かに低域の充実度は高まり、アコースティック・ベースの量感は増すが、質感的には本体の低音感はちょうどいいバランスで再生されており、あえて追加せずとも良い。

 ところが、映画『ラ・ラ・ランド』は、サブウーファーを入れた方が断然良かった。チャプター1のフリーウェイでのオープニングナンバー「Another Day of Sun」は、サブウーファーなしでも、確かに緻密な躍動が聴ける。ヴォーカル音像がクリアーで、この映像にふさわしいカラフルな音調であった。ところがサブウーファーを加えると、低音部の充実感が映画的な躍動につながり、さらに全帯域にてリジッドで豊かな安定感が付与され、画面との一体感がより涵養される。ベースの音階の躍動に乗って、カラフルに輝く大合唱が展開し、画面にグイグイ引きずり込まれるのはまさに本スピーカーとサブウーファーの合作演出だ。

 結論。さずかはエラック、良い仕事をしている。多彩なインターフェイスと高音質を獲得し、無数にあるアクティブスピーカーの中で、DCB-41は、燦然と輝いている。

 

視聴に使った機器
● 有機ELディスプレイ : パナソニックTH-65LZ2000
● 4Kレコーダー : パナソニックDMR-ZR1
● SACD/CDプレーヤー : デノンDCD-SX1LIMITED
● ADプレーヤー : テクニクスSL-1500C

 

本記事の掲載は『HiVi 2023年夏号』