《ネット動画の絶品再生ー実践的再生プラン》

 HiVi2023年夏号サウンドバー特集で数多くの機種を一気に聴いたが、もっとじっくりと使いこなして持ち味を引き出してみたいと感じた製品があった。それがデビアレのDioneだ。

 本機を簡単に紹介すればオールインワンタイプのサウンドバーで、モダンなデザインの薄型ボディには17基のスピーカーを内蔵。ドルビーアトモスに対応し5.1.2構成の立体的なサラウンド再生にも対応する。HDMI eARC接続でテレビと簡単に接続でき、さらにWi-Fiを内蔵し、設定や操作などもスマホの専用アプリで手軽に行なえるし、家庭内ネットワーク内にあるサーバーに保存したハイレゾ音源の再生なども可能と、現代的なホームスピーカーの機能をひと通り備えている。

 

Sound Bar
デビアレ Dione
¥389,000 税込

● 型式 : 一体型サウンドバー
● ユニット構成 : 41mmドーム型フルレンジ×9、134mmウーファー×8
● 接続端子 : HDMI(ARC/eARC)1系統、デジタル音声端子1系統(光)、LAN端子
● 寸法/質量 : W1,200×H88×D165mm/12kg
● 問合せ先 : デビアレ カスタマーサービス TEL. 03(4477)3881

 

 

 視聴ではパナソニックの有機ELテレビTH-65LZ2000とHDMI eARC接続して聴いた。このほか、パナソニック4KレコーダーDMR-ZR1も用意し、TH-65LZ2000に接続している。

 まずラックにベタ置きした状態でひと通り音を確認。次に四箇所にウッドブロックを置いてみた。こうすると、ベタ置きでの再生で気になったサウンドバーから、つまり画面の下から音が出ている感じがかなり抑えられる。ただステレオ音場再生に近い「音楽モード」では、ステレオイメージが弱いことに気付く。

Dioneは、強烈な低音再生能力を備えているため、設置の状態にかなり敏感に反応するタイプのようだ。今回はラック直置きでまず試し、次にウッドブロックを本体と台の間に挟み(写真)、その後、インシュレーターを使って少し本体が上向きになるような状態を試した

 いくつか試した結果、インシュレーターは振動吸収性のあるゴム系のものを使用し、設置位置自体がやや低めだったので、手前側だけインシュレーターを2枚重ねて少し上向きの配置とした。これでサウンドバーから音が出ている感じがずいぶんと減り、画面と音が一致した音場感になる。持ち味であるパワフルな低音だけに置き方によって曇りがちになるので、ここの対策が肝心だ。

 この状態で自動音場補正を行ない、本格的に視聴を開始。まずはテレビ放送のドラマなどを見てみたが、ステレオ音声でも音場の広がりがスムーズになっているのがわかる。録画していた大リーグの中継を見てみると、観客のざわめきの包囲感やアナウンスの明瞭度、打者がボールを打ったときの快音もクリアーかつ力強い音で再現された。

 続いて、DMR-ZR1でUSBメモリーの音源を聴いた。『BLUE GIANT』のサントラ「N.E.W.」では、ピアノの低音パートの力感もしっかりと出るし、テナーサックスの力強いプレイも存分に楽しめた。ステレオ音源ならば「音楽モード」が一番自然な鳴り方だと思うが、好みで「空間モード」なども試すとより包囲感のある音場を楽しめるだろう。

 Apple Musicで50周年リマスター版『狂気/ピンク・フロイド』を聴くと、作品冒頭の鼓動のようなリズムも力強く響くし、くっきりとした聴きやすい音でより鮮やかになったサウンドを楽しめる。基本的な音調としては、中域に厚みのあるまとめ方で、高域は穏やかで聴きやすい。ただし、エコー感や微小音などはきちんと再現できる。

 UHDブルーレイでは、ドルビーアトモス収録の『シン・ウルトラマン』を見た。禍威獣の出現やウルトラマンとの戦いはスケールも雄大だし、禍威獣の足音の重量感もよく出る。広がり感に関しては後方の音はやや曖昧になるが、高さ感や包囲感の表現は十分。スペシウム光線のような特撮映画らしい個性的な効果音も鮮明な音でくっきりと鳴らすなど楽しい音の傾向だ。このあたりのバランスの良さには感心する。

 こうしていろいろと設置などに手間を掛けて聴いてみると、ずいぶんと伸びしろがあるということが改めてわかった。サウンドバーもやはりスピーカーなのでセッティングによって本来の実力を引き出すことができる。サウンドバーが思ったほど音が良くないと感じた人は一度セッティングを見直してみよう。

Dioneの内部構成。非常に凝った作りとなっているのがご理解できよう。上向きと横向きユニットも搭載している点に注目したい

 

 結論を述べよう。デビアレDioneサウンドバーは、映画らしい重低音もしっかりと鳴らし、個々の音もくっきりと再現するバランスの良さが大きな魅力。音量を大きくした方が持ち味が生きるので、大音量で元気よく鳴らしてあげるといいだろう。

 

本記事の掲載は『HiVi 2023年夏号』