この4月、外国人アーティスト最多となる100回目の武道館公演を果たしたエリック・クラプトン。今回の公演に足を運んだ人、足を運べなかった人の両方にお勧めのライブ・ムービーが、この『アクロス24ナイツ』である。

 ファンならばタイトルからも想像がつくように、これは名盤との誉れ高いアルバム『24ナイツ』と同じ時、つまり1990年から91年にかけてロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで収録されたライヴ・パフォーマンスから編纂されたもの(90年1月~2月、91年2月~3月)。

 つまりスティーヴ・ガッドの加入や、大ヒット・バラ―ド「ティアーズ・イン・ヘヴン」が生まれる前の記録ということになる。当然ながらクラプトンも誰も彼も今より30歳ほど若く、曲によってはフィル・コリンズ、故アルバート・コリンズ(フィルとの血縁関係はない)、バディ・ガイたちも極上のパフォーマンスを魅せてくれる。

 演目は「いとしのレイラ」、「コカイン」、「アイ・ショット・ザ・シェリフ」、「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」など、まさにベスト・ヒット・クラプトンだが、すでに出ている映像作品との重複は思いのほか少なく、そのあたり、熱心なファンの渇望にもしっかり応えてくれている。

 もうひとつ、91年度のコンサートの目玉には、故マイケル・ケイメン指揮のナショナル・フィルハーモニック・オーケストラとの共演があるのだが、その模様がしっかり収められているのも嬉しい。プログレッシヴ・ロックとシンフォニー・オーケストラとの共演は決して珍しくないけれど、ブルース・ロックとのそれはやはり貴重だ。

 90年、ケイメンはアルバム『コンチェルト・フォー・サキソフォン』をデイヴィッド・サンボーンと合作し、そこにはクラプトンも参加していた。それを踏まえての、息の合った共演というわけである。

映画『エリック・クラプトン アクロス24ナイツ』

6月9日(金)より
ヒューマントラストシネマ渋谷・109シネマズプレミアム新宿・アップリンク吉祥寺

6月16日(金)より
角川シネマ有楽町他にて全国順次公開

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