2019年から本格的に音楽活動を開始し、YouTubeのフォロワー数107万人、総視聴回数3億880万回超え。TBS系朝の情報番組「THE TIME,」にレギュラー出演しているフリースタイルピアニスト・けいちゃんが、6月2日に新曲「シンフォニア」を発表した。これは、「レ・ミゼラブル」「ノートルダムの鐘」などで知られる19世紀の文豪ヴィクトル・ユーゴー原作の、現代の東京と中世ヨーロッパの世界を交えながら描いたダークファンタジー映画『美男ペコパンと悪魔』の主題歌。昨年12月にリリースした全曲インストゥルメンタルナンバーによるセカンドアルバム『聴十戯画』とは一転、自身のエモーショナルなヴォーカルもフィーチャーした一作だ。「初めて映画の楽曲に携わって、さらに世界が広がった」と語るけいちゃんに話をきいた。

――初めての映画主題歌の依頼が来た時、どんな印象でしたか?
 めちゃくちゃうれしかったです。

――最初からヴォーカルも含めてのリクエストだったのでしょうか?
 そうです。映画のプロデューサーさんが「透明シンデレラ」を気に入ってくれていて。

――けいちゃんと初音ミクのヴォーカル・デュエットが聴ける曲ですね(2021年リリース)。ファルセットも圧倒的でした。
 それで「(映画主題歌に)けいちゃんはどうだろう」と選んでくださったようです。

――今回の「シンフォニア」は声の加工にしても、すごくスリリングです。自分の声を素材として客観的に捉えた音作りという印象も受けます。
 自分の歌に関しては、楽曲の素材として入れるような感じですね。僕は歌手ではないので。

――歌詞を拝見すると、一切横文字がないみたいな世界ですけれども、けいちゃんの中で『美男ペコパンと悪魔』を観た時の印象というか、心の中に浮かんだものをまとめたらこうなったのでしょうか。
 はい。漢字二文字とかですごくいろんな意味を表現できるじゃないですか。すごく長い意味を一気に凝縮して伝えられるみたいなところが、とても素敵だなと思って。だから横文字が入っていないことが多いのかもしれないですね。

――楽曲に関しても、イントロの部分からいきなり、とてもスリリングな、引き込まれるような印象を受けました。
 一応4拍子ではあるんですけど、ちょっと複雑なリズムを使っています。映画の世界に合わせて楽曲を作っていくうえで、「悪魔」というワードと「愛のために戦う」みたいなワードを意識して、ちょっと不気味だけどしっかりと希望を持てる楽曲にしたいなと思いました。僕はけっこう早く曲を書けるほうで、1日で1曲は作れます。今回は映画のスタッフともやりとりがあって、「幻想的な要素が欲しい」とか「もうちょっとシンプルなものに」等のリクエストを受けて、修正を加えていきました。

――その場合のリクエストは音符やBPMなどの具体的なものではなくて、言葉ですよね。
 そうですね。

――スタッフの頭の中にある「幻想的な要素」と、けいちゃんが実際の音で表現する「幻想的な要素」を、すり合わせていく感じでしょうか。
 はい、お互い納得いくまですり合わせるみたいな感じです。ダークファンタジーなので、ちょっと不気味な感じで始めて、サビは勇敢な、愛のために戦う感じを出して、未来に向かってがんばっている風なメロディにしようと考えました。

――作曲に関してはまず単音でメロディが浮かんでくるタイプですか、それとも同時にコードやオーケストレーションが浮かんでくるタイプですか?
 オーケストレーションを含めて浮かんでくる時もありますが、単音で浮かんでくることはありません。曲を書くとき、リズム、ハーモニー、メロディという三要素は絶対同時に鳴っています。

――そして、kainさんがかっこいいアレンジやサウンド・プロデュースをなさっています。
 1stアルバム『殻落箱』(2021年)の時から、アレンジを担当してもらっています。年齢も近いし、何でも話せて、いろんな引き出しがある方なので、僕のいろんなリクエストに応えてくれます。

――ギターの佐々木“コジロー”隆之さんも、すごくアグレッシヴなギターを聞かせてくれますね。
 コジローさんは「ずっと真夜中でいいのに。」のライブに僕が出た時も一緒にバンドメンバーをやっていて、仲の良い友達です。「目から強い衝撃が来る」ギターなんです。耳だけじゃなくてこう視覚的にも迫ってきます。だから一目惚れしちゃって、いろんな曲でギターを頼んでいます。こういうギタリストはいないなと思います。

――タイトルが「シンフォニア」ということで、J.S.バッハの「シンフォニア」(全15番)のメロディも散りばめられているとうかがいました。
 4番と15番をメロディの裏に流しています。大学生の時からクラシック音楽をアレンジしたり、マッシュアップしてほかの曲に入れ込んだりするのが好きで、よくやっていましたね。

――けいちゃんを筆頭に、最近のピアノ界はとても盛り上がっている気がします。「ピアノという楽器は実はこんなにポップなんだ」ということが、次世代に発見されているというか。
 YouTubeでストリートピアノという動画ジャンルが流行り始めた頃、ストリートピアノは日本一再生されていたコンテンツだったんです。とても影響力があって、今までピアノに興味がなかった人たちも見るようになったり、世界中のピアニストたちも動画を投稿し始めて、さらに盛り上がって、各ピアニストたちが別のピアニストたちに刺激を受け、切磋琢磨しあいながら、成長しあったおかげで、今(のピアノ界)があります。ポップス・ピアノというのか、クラシックに興味がない人たちも巻き込んで、ピアノの世界はクラシックだけじゃないんだということを幅広く知ってもらえることになったと思います。

――いろんなピアニストの映像を見たのですが、本当に皆さん、見せることを考えています。観客が椅子に座って、動く右ひじと、ほとんど動かない横顔を見るしかなかった世界とは異なるチャプターに来ている感じです。
 音楽にしても、ただ耳で聴く場合と、目にも力を入れながら聴く場合は全然違うと思っています。視覚から入ってくるかっこよさは、聴覚にもすごく影響するというのが僕の考えです。だから見せ方はすごく大事です。身振りがかっこいい人が、うまい演奏をしたら、単に普通に聴くよりも、もっとかっこよく聴こえる気がするんです。僕も身振りなどをけっこう大事にしていますね。

――見せることを大切にするピアニストが、映画の音楽に関わるようになったのは、半ば必然だったのかもしれません。
 『美男ペコパンと悪魔』を通じていろんな出会いがあり、いい刺激をたくさんもらえて、今後の活動につながることがいっぱいあったと思います。映画を観て、それに沿った曲を作るということにチャレンジしたこと自体、自分の成長に繋がっていますし、映画祭(横浜国際映画祭)でレッドカーペットを歩いて、自分と畑の違うトップで活躍している人たちとお話しをしたり、いろんな業種の人たちを見て、とても大きな手ごたえを感じました。「シンフォニア」はとてもいい曲になったので、僕を知っている方にも、知らなかったよという方にもぜひ聴いてほしいです。

■けいちゃんNEW DIGITAL SINGLE (映画「美男ペコパンと悪魔」主題歌)「シンフォニア」
▼配信はこちら

※6月11日に品川Club eXで開催予定の、けいちゃんピアノリサイタル『Rubato Circus』はソールドアウト。同公演の模様は6月14日から配信される。

<けいちゃん ピアノリサイタル『Rubato Circus』ソールドアウトに付ライブ配信緊急決定!>
視聴チケット価格:¥3,500 (税込)
視聴チケット販売期間:5月20日(土)10:00 ~ 6月20日(火)15:00
視聴可能期間:6月14日(水)19:00配信開始 ~ 6月20日(火)19:00アーカイブ終了 e+視聴チケット販売用URL:https://eplus.jp/keichan/st/
※ご注意:本公演の配信は生配信ではございません。

映画『美男ペコパンと悪魔』

6月2日よりシネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開

<キャスト>
阿久津仁愛 下尾みう
岡崎二朗 堀田眞三/吉田メタル

<スタッフ>
企画・製作総指揮:堀江圭馬
監督・脚本:松田圭太
原作:ヴィクトル=マリー・ユーゴー「美男ペコパンと悪魔」(翻訳:井上裕子)
クリーチャーデザイン:SAZEN LEE、米山啓介、ムラマツアユミ
2023年/日本/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/
配給・宣伝:アイエス・フィールド
(C)2023映画「美男ペコパンと悪魔」製作委員会(ヴィクトル=マリー・ユーゴー著)

■けいちゃんプロフィール
耳コピや立奏、マッシュアップ、即興演奏を得意とする注目のフリースタイルピアニスト。高校の修学旅行でロンドンを訪れた時、ストリートピアノに出会いその魅力に気付く。音楽大学に進学後は、ジャンルの垣根を越えた演奏スタイルを進化させ、2019年から本格的に音楽活動を開始。YouTubeにストリートピアノの演奏動画を投稿し、フォロワー数107万人、総視聴回数3億880万回を数えるなど、抜群の人気を誇っている。2021年6月、アルバム「殻落箱」でCDデビュー。2022年12月には全曲インストゥルメンタルナンバーによるセカンドアルバム「聴十戯画」をリリース。2023年6月2日には待望の新曲、映画「美男ペコパンと悪魔」の主題歌「シンフォニア」を配信リリース。他、TBS系朝の情報番組 「THE TIME,」にレギュラー出演中。