CRI・ミドルウェア

 春のヘッドフォン祭 2023で異彩を放っていたのが、15F「アクア」ルームのCRI・ミドルウェアの展示だった。ここではヘッドホンなどの製品展示はなく、同社が開発したデジタルアンプを使ってTADのブックシェルフスピーカー「TAD-ME1」を鳴らしていた。

 CRI・ミドルウェアは、ゲームソフトやアプリゲームの起動画面で見かける「CRIWARE」を展開するテクノロジーカンパニーで、今回はその一環で自社開発したデジタルアンプの音を多くのオーディオ愛好家に聞いてもらってアンケートを実施、フィードバックを得ようという意図だという。

 そのデジタルアンプは、独自のアルゴリズムの「CRI D-Amp Driver」を書き込んだFPGA(プログラム可能な集積回路)を使ってPCM信号をPWM変換し、後段に設けられたHブリッジ増幅段でスピーカーをドライブするというシンプルな構成だ。

 使われているFPGAやコンデンサーなどは汎用性の高いパーツで構成(ディスクリート回路)され、オーディオ用特注部品は使われていない。これにより手軽に、しかも安価でいい音を実現できると同社では説明している。またHブリッジ部はフィードバックなし(不帰還)だが、独自の対策によりS/Nも確保、クリーンなサウンドを再生できるという。

 CRI・ミドルウェアでは自社でコンポーネントを作るのではなく、この技術をオーディオメーカーに提供するビジネスを考えているそうだ。今回のデジタルアンプはあくまでもそのための試作品ということになる。

 会場で再生されていた音(PCに収めた音源を使用)は確かに高S/Nで、滑らかで艶のあるサウンドとして再生されていた。若干すっきりしすぎているようにも感じたが、これはアンプとして味付けをしていないからで、最終の音作りは各メーカーが自由にできるように、敢えて素直な音に仕上げているそうだ。

 アンプの出力はHブリッジの回路規模で変更でき、ヘッドホンアンプから本格スピーカーを駆動するレベル(今回のデモ機は200W×2)まで複数の選択肢が準備されている。

FitEar/ONKYO

 FitEar/ONKYOがデモを行っていた15F「リーフ」ルームのトークイベントは常に満席で、整理券無しでは入場できないほどの人気だった。

 そこで展示されていた「MH335ht」は、2012年に発売された同ブランドの人気製品「MH335DW」をベースに、新たなアプローチで設計を見直したカスタムIEM(完全受注生産)だ。ドライバー構成(高域、中低域、低域用の3基のBAドライバーを搭載)はそのままに、高域用ドライバーの音導管をホーン形状に変更して高域の再現性を改善している。

 さらに中低域/低域用ドライバーからの音導管も改良(MH335DWより細くして、出口を高域用のホーンと一体化)することで、まとまりのいいサウンドに仕上げているという。シェルは3Dプリンターで作られており、この製造方法を採用したことで、複雑な音導管構造も可能になったそうだ。

 シェルは14色、フェイスプレートは13色から選択でき、ケーブルはFitEar製の3.5mmステレオミニプラグタイプが付属している。