シャープは本日、幕張事業所2F多目的ホールで「創業111周年記念イベント」を開催した。同社は早川電機工業として1912年に誕生して以来、数々の新しい製品を世に送り出している。今回はそんな歴史を振り返りつつ、今後の展開についても紹介された。

 会場入り口にはシャープ歴代の製品をディスプレイ。しばしば話題となる日本初のシャープペンシル(早川式繰出鉛筆)は1915年の登場で、金属式ボディに万年筆のように使える鉛筆機能が内蔵されている。展示された製品は今見ても美しい仕上げが施されており、当時からのこだわった物作りがうかがえる。

 その隣には国産初の鉱石ラジオ受信機(1925年発売)が置かれていた。これは日本でラジオ放送が始まるという記事を見た創業者の早川徳次氏が、これからはラジオの時代が来ると直感し、開発に取り組んだものだという。

 さらに日本初の14型白黒テレビ「TV3-14T」の実機が展示されていたのも興味深い。これはテレビ放送の開始を受けて1953年に量産・発売されたもので、定価は¥175,000(当時の公務員の初任給は高校卒¥5,400)。かなり高価な製品だったが、早川氏は「一家に一台の時代」が来ると確信していたそうだ。

 ちなみに本体は木製で、当時は製品によって木目の模様が異なることもあったという。チャンネルやボリュウムなどのダイヤル類も木と樹脂を使って作られていたそうだ。展示製品は保存状態もよく、とても70年前の品物とは思えないほどだ。ちなみに本体の奥行は、横幅と同じかそれ以上に大きく、当時のブラウン管がいかに大掛かりな部品だったかもうかがえる。

 そこから1964年のトランジスタ・ダイオード電子式卓上計算機、1967年の日本初のターンテーブル式家庭用電子レンジといった具合に、シャープは日本初の製品を矢継ぎ早に発売していく。1966年にはいち早く太陽電池の開発にも着手していたという。

 オーディオビジュアルファンの記憶に残っている製品として、1992年発売の液晶ビューカム「VL-HL1」と2001年発売の20インチ液晶テレビ「LC-20C1」も並んでいた。前者は家庭用ビデオカメラに液晶モニターを初めて搭載して動画撮影のスタイルを変え、後者は「世の中のブラウン管テレビをすべて液晶に置き換える」という意思表明とともにテレビの新時代を印象づけた、画期的な製品だった。弊社「HiVi」でも詳しい取材を行ったので、覚えている読者諸氏も多いだろう。

 それら歴史的モデル展示の隣のブースでは、業務用プロジェクター「PX2201UL」のデモも行われていた。PX2201UL は20500ルーメンの明るさを持ったレーザー光源搭載機で、水平1920×垂直1200画素のDMDデバイスを搭載している(1チップ方式)。学校の体育館やイベントなどで使われているとかで、会場ではこれを2台並べて横4K×縦1K相当の明るい映像を投写していた。この製品はシャープNECディスプレイソリューションズから発売されているそうだ。

 111周年記念イベントは、和太鼓集団「武蔵」のパフォーマンスで幕を開けた。同社代表取締役社長 執行役員CEO 呉柏勲(Robert Wu)氏、代表取締役副社長 執行役員 沖津雅浩氏、専務執行役員CFO 陳信旭(Branden Chen)氏、常務 研究開発本部本部長 種谷元隆氏といった面々に加え、シャープが現地に工場を構えるポーランド、インドネシア、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシアといった国々の大使も出席していた。

 冒頭、呉氏は「111」という数字はシャープにとって意味があるものだと述べた。今年は、創意と工夫で世界初の製品を送り出してきた歴史を振り返りつつ、記念イベントを展開していくと語った。続いて創業者の一族を代表して早川住江氏が挨拶を行い、さらに各国の大使が、シャープが各国でいかに貢献しているかを話してくれた。

左から、専務執行役員CFO 陳信旭(Branden Chen)氏、代表取締役社長 執行役員CEO 呉柏勲(Robert Wu)氏、代表取締役副社長 執行役員 沖津雅浩氏、常務 研究開発本部本部長 種谷元隆氏

 来賓代表として挨拶した衆議院議員の甘利明氏は以前、鴻海精密工業の郭台銘(Terry Gou)氏と対談したことを述べ、その際に「イノベーションは至上命題」であり、かつ「イノベーションを過信することは絶対やってはいけない」というふたつのことを学んだと話した。そして、技術をどうビジネスに刷り込んでいくか、自社の強みをどうやって活かすかを考え、簡単に真似ができないビジネスモデルを作ってもらいたいとシャープへの期待を述べていた。

 続いて呉氏がスピーチし、今後のシャープはデジタルトランスフォーメーション(DX)を変革の鍵と考え、さまざまな企業との協業を続けていくと話した。また次世代リーダーの育成も課題であり、今後は地域を超えた採用を実施することも語られていた。

 CFOの陳氏は、この10年はインターネットの発展で社会が変わった、次の10年はAIで変わると考えていると話した。AIは仕事や生活に想像を超えた変化をもたらすと捉えているそうで、それを踏まえてビジネスの機会を探っていくとのことだ。

 なお今回のイベントでは、11月11日に「SharpTechnology Day」を開催することも発表されている。同社では現在、「Be a Game Changer」を合言葉に、AIやロボティクス、XR、6G、食・水・空気、グリーン、宇宙等の分野を中心に、世の中を変える革新技術の創出に取り組んでいる。この「Sharp Technology Day」では、今後の技術戦略を紹介するとともに、独自技術を採用した革新的な製品やソリューションを展示する予定とのことだ。