オーディオ再生を高品位に保つために気をつけたいノイズ。特に電源に由来するノイズと、機器の空き端子から飛び込む外来ノイズは、あまりに身近でついつい見過ごしがちだが、オーディオの再生品質に案外大きな影響を与えている可能性が高い。

 そこで前回と今回の2回に渡り、アコースティックリバイブから発売されているアクセサリーでこれらのノイズ対策を施したら、音はどのように変化するのかを検証してみた。

 第10回では、麻倉怜士さんが愛用しているプリアンプ、オクターブ「Jubilee Pre」を使い、空き端子に取り付けるショートピンやリアリティエンハンサーの効果を紹介する。麻倉さん自身が取材後に自宅に追加導入してしまったという “音の魔法のようなアイテム” の魅力をぜひチェックしていただきたい。(StereoSound ONLINE編集部)

※今回の取材に関する麻倉さんのコメントはこちら ↓ ↓

アナログ機器に飛び込むデジタルノイズをシャットアウト! 麻倉怜士氏も実感したオーディオアクセサリーとは? その印象を空気録音とともにお届けいたします

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 私の試聴室でアコースティックリバイスのアクセサリーを試す体験取材の2回目、今回は空き端子からの飛び込みノイズを対策します。

 今の時代、空中には目に見えない電磁波やノイズが飛び交っている。オーディオ機器の空きアナログ端子、デジタル端子などがアンテナとなり、空中のノイズを機器に招来して様々な形で音に影響を与えているのは、周知の事実だろう。それを防ぐならどれほどのクォリティアップが見込めるのかというのが、今日の実験の趣旨である。

 アコースティックリバイブでは、機器のRCAやXLR空き端子からノイズが飛び込まないようなショートピン/ターミネーターをラインナップしている。これは以前からオーディオシーンでは多く使われていた方法だが、私のこれまでの経験上、アコースティックリバイブのアクセサリーはノイズ取り以上の効用があるのではないかと、期待を込めて実験してみたい。

音楽ソースに近い機器で、飛び込みノイズに対策する。
見逃しがちなプリアンプの空き端子にも充分注意が必要です

 前回同様に、試聴ソースにはCD『情家みえ/エトレーヌ』を使用した。プレーヤーのリン「SONDEK CD12」のアナログ出力をプリアンプのオクターブ「Jubilee Pre」につないでいる。CD12とJubilee Preはアコースティックリバイブのタップ「RPT-6N」からから給電し、今回の試聴では電源コンディショナーなどのアクセサリーは使っていない。

Jubilee Preの背面端子。入力はCD12とUSB DAC、AVプリアンプからのL/Rのアナログ信号、その他はパワーアンプへの出力用がつながっている。今回は空き端子に各種アクセサリーを取り付けてみた

麻倉宅の主なシステム(2chシステム)
●プリアンプ:オクターブ Jubilee Pre
●CDプレーヤー:リン SONDEK CD12
●パワーアンプ:ザイカ 845PP
●スピーカーシステム:JBL K2 S9500
●電源タップ:アコースティックリバイブ RPT-6N(旧モデル)

 まずは、ショートピンとリアリティエンハンサーの2種類。入力端子用のショートピンは「SIP-8Q」(¥17,400、税別、8個1組)。これをRCA端子に取り付けることによって、外から飛び込むノイズを防ぐと謳われている。出力端子用は防振プラグ「IP-2Q」(¥6,400、税別、2個1組)で、こちらはいわゆるターミネーター(終端)。これらをプリアンプのオクターブ「JubileePre」の未使用出力端子に取り付ける。Rec出力端子も塞いだ。

 まずは元々の、何も挿していない状態の音から試聴をスタートする。前回は電源ノイズ対策用のアクセサリーを組み合わせたが、今回は電源には何も使っていない。

 再生した曲はUAレコード合同会社『情家みえ/エトレーヌ』から、3曲目の「I Can’t Give You Anything but Love」。CDプレーヤーはリン「SONDEK CD12」、プリアンプはオクターブ「Jubilee Pre」、パワーアンプがザイカ「845PP」、スピーカーJBL「K2S9500」というシステムだ。

 この状態でも、そもそもJubilee Preの再生能力が高いので基本のクォリティ的には不満はない。しかし今回は電源に何も対策していないので、前回アコースティックリバイブの製品で電源を対策した状態と比べるとやはり音の体積が小さいとか、表面がちょっと荒れているとか、レンジ感が狭いといった印象は否めなかった。

チェック1:プリアンプの空き端子に、ショートピンと防振プラグを挿す

ノイズの混入源に取り付けるだけで、S/Nや音質の劣化を抑制できる。
ショートピン&防振プラグは、小さくても効果が凄い

ショートピン SIP-8Q ¥17,400(税別、8個1組、写真左)
出力端子用防振プラグ IP-2Q ¥6,400(税別、2個1組、写真右)

まずはプリアンプ、Jubilee Preの使っていないRCA入出力端子にショートピンと防振プラグを取り付けた

 オーディオ機器の空いているアナログ入力端子、デジタル入力端子から混入したノイズは機器の回路動作を不安定にし、音質劣化を起こすことがある。空き入力端子にショートピンやショートプラグを装着することによりノイズ混入を防止し、機器の動作が安定、S/Nや音像定位の向上、歪みや混濁感の減少などの効果が期待できる。

 入力端子用のSIP-8Qは、黄銅+2017S航空レベルアルミ合金+特殊制振材の制振構造により端子板の補強・制振効果も発揮し、更に音質を向上させる事が可能だ。出力端子用の防振プラグ
IP-2Qは、ジュラルミンと真鍮によるハイブリッド構造に、天然水晶または特殊制振材を雲合わせて、抜群の振動抑制効果を発揮してくれる。

 続いてRCA入力端子用のショートピンと出力端子用の防振プラグのコンビを、Jubilee Preの空いている端子に取り付けた。ショートピンは5ペア/10個、出力用は3ペア/6個を使用。と、これだけで大きな違いがあった。

 音の変化を表すときに、「ベールが剥がれた」という表現がよく使われるが、まさにその印象。これまでカーテンの向こうでそれなりに鳴っていたなぁという感じだったのが、パッと剥がされて、はっきり、くっきりの明るい音になった。情報量が増えたこともあるだろうが、やはりクリアーに、そしてダイレクトに音が飛ぶようになったところが、違い。ピアノがビビットに鳴り、ヴォーカルの音像が明瞭に、イメージを伴って出てくる。

 もうひとつ、端子にノイズ対策をしていなかった時には聞こえなかった、ドラムスのブラシワークがくっきりと出てきた。この曲は、まずピアノで始まって、次にベースが入ってくるが、そのベースの躍動感、重量感も、けっこう出てきたなという感じ。全体的に透明度が上がり、明快な音に変化している。そういう意味では、このCDには私は情報量をここまで入れていたことを、あらためて思い出した。

チェック2:プリアンプの空き端子に、リアリティエンハンサーを挿す

ノイズ対策で、音の情報性はもちろん、情緒性の再現まで向上している。
リアリティエンハンサーは音に付加価値をもたらす

写真左がRCA入力端子用の「RES-RCA」で、右が出力端子用の「RET-RCA」

写真左がXLR出力端子用の「RET-XLR」で、右が入力端子用の「RES-XLR」

<入力端子用ショートピンタイプ>
RES-RCA ¥41,800(税別、1個)、RES-XLR ¥52,800(税別、1個)
<出力端子用ターミネータータイプ>
RET-RCA ¥41,800(税別、1個)、RET-XLR ¥52,800(税別、1個)

 リアリティエンハンサーは入力/出力端子への外来ノイズの飛び込みを防止し、オーディオ機器内部回路の動作安定をもたらすアイテム。2017S航空グレードアルミ合金と真鍮、天然スモーキークォーツの異種素材の組み合わせによる制振効果も発揮し、内部配線にハイブリッド新導体PC-TripleC/EXを使用することで絶大な音質向上も実現している。

 次に、リアリティエンハンサーを使ってみる。こちらは入力端子用ショートピンとしてRCA用の「RES-RCA」(¥41,800、税別、1個)とXLR用の「RES-XLR」(¥52,800。税別、1個)、出力端子用ターミネーターはRCA用「RET-RCA」(¥41,800、税別、1個)とXLR用「RET-XLR」(¥52,800、税別、1個)の合計4種類がラインナップされている。そこでRCA端子は入力側に5ペア/10個、出力側に3ペア/6個取り付けた。さらにXLR端子には入力用、出力用を1ペア/2個ずつ使ってみた。

 本当にびっくりした! 先ほどのショートピンの変化にも感心したが、それは何も対策してない状態に比べて情報が増えた、明るくなった、ベールが剥がれた……ということに、プリミティブに驚いたわけだ。しかし、リアリティエンハンターは付加価値的に違う。

 単に情報が増えたというだけではなく、ディテイル感、綿密さ、ニュアンス感、音楽性……といった、音楽的、演奏的な付加価値がついてくる。もっと言うと、私が制作した音源から、ここはこういう音にしたいといった狙いが、かなり叶えられたことにびっくりしたのだ。

 単に情報が出るだけではなく、その情報にきちんとした質感、ていねいなグラデーションを与えることによって、音の価値が飛躍的に高くなった。リアリティエンハンサーはお値段も上がるが、それにふさわしいグレート感が再現できるのは確かだ。

 例えば冒頭の山本剛さんのピアノに抒情性や深みが出てきた。先ほどは情報をはっきりくっきり出して、ピアノの輪郭が明瞭でエッジが立っている……という印象だったが、抒情性はそこまでは出ていなかった。しかし今回は、さすがにリアリティエンハンサーというだけあって、情報性だけではなく、情緒性まで感じられた。

 もうひとつ、情家さんのヴォーカルも音像を明瞭に描くのみならず、ボディ感もしっかりしている。過渡特性が良くなったが故に、ニュアンス感が濃く、表情がとても細やか。このあたりの感情が出てくると、今度は音の体積感、レンジ観、色彩感など、情報性がさらに広がるように感じられるのだ。体積が広がりつつ、なおかつ表情が出てきた。

 さらに音の鮮度、フレッシュさが素晴らしく、演奏をダイレクトに録り、そのまま再生したという、私のレーベルの「音の眼前感」が再現されている。鮮度というターミノロジーには音色における鮮度と、音像における鮮度があるが、今回はその両方で効果があった。リアリティエンハンサーでは、基本的なクォリティアップにプラスして、単にノイズを遮断しただけではない、音の付加価値、感情性の向上まで感じられたのだ。

チェック3:USB DACの空き端子に、リアリティエンハンサーを追加する

取材後に、麻倉さんがリアリティエンハンサーを追加導入。
USB DACの「Nu1」に使ったら効果抜群!

Nu1のリアパネル。プリアンプ機能も搭載しているので、一般的なUSB DACよりも入出力端子が充実している。写真左端にはフォノ入力もついており、ここにノイズ対策する効果は大きいはず

USB DAC/プリアンプ:コルグ Nu1(写真上段)

 麻倉さんはハイレゾ音源などを試聴する際にコルグのUSB DAC「Nu1」を使っている。このモデルはプリアンプ機能を備えており、アナログ入出力端子を複数搭載している。今回Jubilee Preでのアコースティックリバイブのアクセサリーの効果を確認した麻倉さんは、Nu1用にリアリティエンハンサーを追加導入、ハイレゾ再生時の音の変化に感動したそうだ。

 ここまでで、プリアンプ、Jubilee Preではたいへん効果があると分かったので、後日、愛用しているUSB DAC、コルグ「Nu1」の空き端子にもリアリティエンハンサーを挿してみた。ここまでのテストと異なり、電源対策を充分施した上でリアリティエンハンサーを取り付けたのだが、やはりその効果は絶大だった。

 Nu1はD/A変換、A/D変換、フォノ再生……など多彩な機能を持ち、端子もRCA、XLRの入出力、フォノ入力……など多数備えている。まずは、すべての入力端子と出力端子にリアリティエンハンサーをあてがってみた。入力端子には、RCA用を2ペア/4個、XLR用を1ペア/2個、出力端子にはRCA用とXLR用をそれぞれ1ペア/2個使っている(もうひとつのXLR出力はプリアンプにつないでいる)。

 『情家みえ/エトレーヌ』から1曲目「Cheek To Cheek」を聴くと、端子を開放している素の状態に比べ、情報量の違いは鮮烈。ヴォーカルのニュアンスや息づかいなどが格段に細やかに再現され、艶っぽさや生々しさが増している。音色も彩度がかなり高くなるが、私個人の好みからすると、もう少し濃度を抑えた生成り的な音調が欲しい。

 そこで、XLR出力端子のリアリティエンハンサーをすべて外し、入力端子だけにしたところ、情報の多さ、情緒感の豊かさ、ナチュラルな進行感、ヴォーカル音像のふくよかさ……などの複数の美味しい音要素が、うまくバランスして鳴ってくれるようになったではないか。

 ただし、この結果は電源対策したNu1についてで、すべてに当てはまる汎用のノウハウというわけではない。ただいずれの場合も、リアリティエンハンサーを使う恩恵は大きかったわけで、まさに“魔法のようなアイテム”であることは間違いない。

 今回アコースティックリバイブの飛び込みノイズ対策にトライして、空中に漂っているノイズがいかに音質に対して悪影響を与えているかを改めて認識した。ではそのノイズ源は何だろうと考えると、その大元はデジタル機器だ。私の部屋にもUSB DACがあり、CDプレーヤーがあり、さらにスマホも見逃せない。今日のオーディオで欠かせないそれらの製品から発生するノイズがストレートにアンプの端子から入って音を濁らせるということが、今回実際に体験できたのだ。

 さらに言うと、ショートピンもノイズを取るという働きをしているだけではなく、そこにアコースティックリバイブならではの音質改善効果というか、プラスの方向に音を変える効果も入っているとわかった。その効果はリアリティエンハンサーでより顕著だ。異種金属の組み合わせや天然水晶、銀と銅のハイブリッド鍛造導体PC-TripleC/EXなど多彩な素材による制振構造が、単なる空き端子対策グッズとは一線を画す効果に結び付いているといえよう。

 とはいえ価格を考えると、全部の空き端子にリアリティエンハンサーを取り付けるのは現実的ではない。実際には、コストパフォーマンスが高いショートピンと防振プラグを主な端子に、リアリティエンハンサーは数ヵ所に取り付けるといった使いこなしを工夫してみるといいだろう。

今回試聴した飛び込みノイズ対策アクセサリーの使い方の一例。リアリティエンハンサーはRCA/XLRの入出力端子に1ヵ所ずつ取り付け、その他の空き端子にはショートピン&出力端子用防振プラグを使っている

●試聴に使ったCD
「情家みえ/エトレーヌ」¥3,000(税込)

提供:関口機械販売