Power Amplifier
カトレア
薔薇Ⅴ
¥295,000 (税別)

●定格出力:3.5W+3.5W●入力端子:LINE1系統(RCAアンバランス、固定)●入力感度/インピーダンス:1.8V/110kΩ●スピーカー出力端子:8Ω、16Ω●使用真空管:5U4G(USA)×1、6SL7(PhillipsECG)×2、VT52(SYLVANIA)×2●寸法/重量:W395×H185×D265mm/14.5kg●問合せ先:物造り工房カトレア TEL.0555(62)3411

 カトレアのVT52シングルアンプ “薔薇” はすでに世代を重ねている。最近の独自技術であるハムノイズ打消し回路を導入してVT52を交流点火とし、B電源回路を合理化するなどしたのが、この最新版 “薔薇V” だ。VT52は「45スペシャル」とも呼ばれる小出力の直熱3極管であり、管名は軍用ナンバーのみ。試聴機にはシルヴァニア製のVT52が同梱。高増幅率の双3極管6SL7の片ユニットで電圧増幅、その片側でVT52のグリッドチョークをカソードフォロアー駆動。出力管は自己バイアス、無帰還方式だ。直熱整流管は5U4G。トランスはISO製を採用している。 

 聴き始めると、ややクールなタッチ。ソリッドな音像が鋭い光沢を帯びて、時折ただならぬ気配を示す。そこで置台1つに乗せていた本体を、置台2つを左右に分けた上に設置すると、硬さがほぐれ、表現の柔軟性が向上した。古典真空管は本当に機械震動に振動に敏感だ。こうすると、あらゆる音源を厳しく彫琢しつつ、中高域の音の内実をよく構成析出させる。鮮明な音でも濃淡の差があり音場の奥まで浸透する音、定点にとどまる音、自在に飛び交う音などふるまいは様々であり、それが精密に図解される。過渡特性に支えられた見事な解析力だ。 

 余韻をともなって繊細微妙にゆらぐ声音や、弦楽器の表情も秀逸。低域は無帰還の小出力ゆえにモニター系スピーカーでは表現は控えめになりがちだが、初動感度の高いスピーカーなら雄渾の低音が描かれるだろう。

薔薇Ⅴの上面。写真下方(前側)の真空管は、5U4G(中央)を中心とした左右対称配置で、外側が6SL7、内側はVT52。中央のトランスが電源トランス、出力トランスを左右に振り分けている。天板後方に、入出力端子をまとめている。シャーシ木枠はマレーシアカリン材を採用する。

底板を外した内部。交流点火で動作。下側の左右端にドライバー段のカソードチョーク。その上方、半導体部品で構成された基板が、特許を取得したハムノイズ打ち消し回路。電源トランスを含むすべてのトランスはISO製を採用する。

出力管VT52は、軍用無線機に使われた直熱3極管。仕様は、フィラメント電圧7V、フィラメント電流1.2A、プレート電圧220V、出力3.6W。

真空管VT52や薔薇Ⅴの造作を確認する吉田氏。

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