淺雄望監督の長編デビュー作『ミューズは溺れない』が、昨年・テアトル新宿での田辺・弁慶映画祭セレクション内での初上映、大阪をはじめ全国各地での上映を経て、東京での上映を待ち望む声を受けて、3月18日(土より、ポレポレ東中野で公開されることが決定した。

 同作は、2つの映画祭でグランプリを含む6冠を達成、新鋭・淺雄望監督の名を広く世間に知らしめた作品となる。

 このたび、東京での公開に合わせて、大童澄瞳、萩原朔美、佐藤佐吉からの推薦コメント、および、本作の自主配給・宣伝も務める監督の淺雄望からのコメントが到着した。

大童澄瞳(漫画家)
西原は多くをストレートに言う一方、木崎はあまり上手くものを言えないタイプ。しかし実は木崎は西原に対してだけは嫉妬心など本来隠したくなる感情も素直に吐露する様子が描かれ、この潜在的な相性の良さがあるコンビ像が気に入った。

人を注意深く観察し、物事をはっきりさせる事で関係を確かなものにしようとする割に不安定な大谷など、パーソナリティを描き分ける力に秀でた作家だなと思った。

人間は個体ごとに他者の仮想的な人格を内部に宿す事で、お互いを意思を持った人間であると認知し生きている。

しかしそれ故に人は自分自身ではなく他人の中にある印象を気にし、自我を他者に委託して生きてしまう事がある。

人間が人間になるには、他者ではなく自己の中に見つけた自我を他者と突き合わせ確固たる自己同一性を獲得しなければならないが、多くの人は何となくで大人になるものだ。

芸術や恋愛の中で幸運にも自己同一性の獲得を経験する少年少女の姿を希望的に描いた本作が、人生の目的や自分が何者であるのかについて考えそびれた人間のもとへ届くことを願う。

萩原朔美(前橋文学館館長)
旅に出よう。そう思った時に、心の中に清々しい風が湧き上がる。あの風が、「ミューズは溺れない」を観終った人々の背中に沸き起こるだろう。その風の優しさ。今映画に必要なのは、こういう物語だ。最後に登場する魅力的な巨大なオブジェが、創造する事は他人を救い自分をも救ってくれる。そう言っていた。私も何か巨大なものを作りたくなった。

佐藤佐吉(映画監督/脚本家/俳優)
ふたりの少女が互いを見つめるその真っ直ぐな視線が結果的に我々観客に突き刺さる。あなたはあなたなの? そう問われているようで震えてしまうのは恐怖なのか? いや恐らくまなざしのエクスタシー。でも最後は涙で震えてた。

淺雄望(監督・脚本・編集)
揺らいでいてもいいよ、と言ってもらえて、不安定で歪な自分を許せたように思う。

正しくなくてもいい。足りないままでもいい。自分らしさなんてものはわからないけど、確かに自分を前に向かせてくれた言葉は知っている。その、決して万能ではない言葉たちで、この映画はできている。

あの夏の海で、もがきながら踏み出した一歩が思いがけず爽やかで、彼女たちの方舟に、私もつい手を添えたくなったんだった。

この歪な映画が誰かに辿り着くよう願いを込めて。出会ってくれた誰かに、私はまた救われるんだと思います。

映画『ミューズは溺れない』

3月18日(土)からポレポレ東中野で公開
4月15日(土)より、兵庫県の元町映画館での公開が決定
以後、順次全国公開予定

<あらすじ>
美術部に所属する高校生の朔子は、船のスケッチに苦戦している最中に誤って海に転落。それを目撃した西原が「溺れる朔子」の絵を描いて絵画コンクールで受賞、絵は学校に飾られるハメに。悔しさから絵の道を諦めた朔子は、代わりに新たな創作に挑戦しようとするが、西原から「次回作のモデル」を頼まれてしまい・・・。

アイデンティティのゆらぎ、創作をめぐるもがきなど、葛藤を抱えながらも前進しようとする高校生たちのひと夏を瑞々しく鮮烈に描き切った青春エンタテインメント。

<キャスト>
上原実矩
若杉凩 森田想 渚まな美 桐島コルグ 佐久間祥朗 奥田智美 新海ひろ子 菊池正和 河野孝則 川瀬陽太 広澤草

<スタッフ>
監督・脚本・編集:淺雄望
撮影監督:大沢佳子(J.S.C)|制作担当・スケジュール:半田雅也|照明:松隅信一|美術:栗田志穂|ヘアメイク:佐々木ゆう|監督助手:吉田かれん|撮影助手:岡田拓也|録音:川口陽一|整音・効果:小宮元、森史夏|カラリスト:稲川実希|スチール:内藤裕子|音楽:古屋沙樹|音楽プロデューサー:菊地智敦|油絵:大柳三千絵、在家真希子|企画・制作・プロデュース:カブフィルム|配給宣伝:カブフィルム|宣伝協力:小原治(ポレポレ東中野)
| 2021年| 82分| 16:9|カラー
(C)カブフィルム

『ミューズは溺れない』3/18から東京単独公開

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