一般社団法人メタバース推進協議会は先日、第一回全体共有会を開催した。メタバース推進協議会とは、「日本の生活文化を継承・形成を目指し、生活者を主体とする現実社会連動メタバースを産学官民の連携で推進する」ための協議会で、昨年3月に発足した。

 “メタバース” は言葉としては認知され始めているが、実際にどのようなものなのか、またどのような形でわれわれの日常生活で活用されていくのかなど、いまひとつわかりにくいイメージもある。そういった現状に対し、どんな使い方ができるかを提示していこうという活動だろう。

 今回の記者会見には、代表理事の養老孟司氏、常任理事の溝畑宏氏、木内孝胤氏、特別顧問の隈 研吾氏、廣瀬通孝氏、川森雅仁氏、監事の長田忠千代氏、事務局長の市川達也氏が登壇し、それぞれの立場から報告がなされた。

登壇者の面々。左から長田氏、川森氏、木内氏、養老氏、溝端氏、隈氏、廣瀬氏、市川氏

 代表理事の養老氏の挨拶の後、事務局長の市川氏から活動方針についての説明が行なわれた。市川氏は、最近の現実社会には解決できていない問題が数多く存在するが、メタバースはそんな課題解決の一助になる技術だと語り、「現実社会連動メタバース宣言」という言葉を口にした。これは、「現実社会の問題を解決できるメタバースを提案し、協議、実現する」ことを目的とした取組みだという。

 市川氏によると、昨年までは何をもってメタバースと呼ぶかの定義も曖昧だったという。そのためメタバースという言葉が氾濫し、2023年は逆風が起きる可能性も感じているそうだ。それを踏まえ、今年は生活者視点で現実社会の問題を解決できるようなメタバースを構築していきたいと述べた。

 取り組みの方向性としては日本文化や日本人を世界中で知ってもらうことを目指す。日本には地方それぞれの文化があるので、それを日本人の手や感性で世界に発信することが重要と考えているという。日本全体をアピールすることで地方へのインバウンドも期待できるとし、「地方創生なくして日本創成なし」と結論した。そのために多くの分科会も立ち上げ済みで、検討するだけでなく、産業活用、社会実装に向けた分科会も連動していくとのことだ。

 現在検討している新規事業では、「地方創生」と「百年企業創成」をテーマにした展開を行う。現在、日本の地域社会は経済活動の縮小や商店街の空洞化といった問題を抱えている。また、日本国内には100年以上の歴史を持つ老舗が33,000社以上あり、これは世界でも有数の規模なのだが、その中には存続の問題を抱える会社も多い。今回の取り組みでは、そんなふたつの社会課題をメタバースによって活性化し、持続可能な次の100年につなげていくという。

 その手段として、サイト上に「里・まち歩きメタバース」と「百年百貨店メタバース」というふたつの空間をオープンする。前者は地域の街を “体験する” 空間で、後者は各地の名産物を実際に “購入できる” ものだ。この両者はメタバース上で瞬間移動できるようになっており、生産手段や作り手の顔を知った上で商業活動委つなげていくという狙いもあるようだ。今後は、官公庁や地方自治体と広域連携し、効率化、ネットワーク化を進めることで、地域主導の運営を目指していくという。

 具体的なサービスのスタート時期等は発表されなかったが、メタバースという道具が地域社会の活性化にどう貢献していくのか、これまでのようなバーチャルトリップやお取り寄せサービスとは違う、アグレッシブな展開に期待したい。