激しい競争が繰り広げられている、スマートテレビのOSシーンに新顔、TiVo OSが割って入った。トルコの大手テレビメーカー、ベステルが、初めてTiVo OSを採用したのである。正確にいうと、Media TekのチップセットにTiVo OSがインプリされ、そのチップをベステルが採用したという形だ。

 ベステルは自社ブランドの他に、「Daewoo」「Regal」「Hitachi」「Telefunken」「JVC」……などのブランドを使い、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、トルコといったヨーロッパ諸国で人気のメーカーだ。毎年、数百万台の販売実績を上げている。

TiVoのストリーミング端末「TiVo Stream 4K」。この機能がTiVo OSに入った

 普通に考えれば、一般的なグーグルテレビやROKUのOSを入れるところだが、TiVo OSが採用に輝いたのは、レベニューシェア(成果報酬型)のような収益手法の提案が効いたことに加え、圧倒的なコンテンツ探索能力の高さが認められたからだ。

 それはニュースリリースにある、ベステルCEO、Turan Erdoan氏のコメントで明らかだ。「利用可能なビデオサービスの数が増え続ける中、ユーザーにとってコンテンツディスカバリーは、依然として様々なサービスで検索する際の最大の悩みです。私たちは、消費者が求める使い心地を提供するために、新しいPowered by TiVoスマートTVの製品を発表します」。

「Let it go」と言えば、『アナと雪の女王』が、すぐに検索される

 実はTiVoは、かつてHDDレコーダーの元祖として一斉を風靡したブランドだが、それをコンテンツ検索の最高峰のRoviが買収し、自らTiVoに社名変更、さらにXperiがそのTiVoを買収するという、わけのわからない動きにより、TiVoはいまやRoviが開拓した探索技術を受け継いだばかりか、OSもつくったのだ。

 TiVoといえばHDDレコーダーだという認識の私には、なかなか理解できないことだが、でもRovi仕込みの凄い探索技術のことは、私も歴代のCESで何回も体験したことだ。それがベステルも魅了したのである。

よく見るサービスが一覧で表示

 どう凄いのか。適当な、曖昧な言葉で検索できるのだ。しかもそれが連続した質問であるか、単独の質問かを自動的に判別してくれる。それがNatural Language Understanding(自然言語解析)の凄さだ。もともとVeveo社(ボストンマサチューセッツ、2004年設立)が開発したKnowledge Graph技術をRoViが2014年に買収し、それがTiVoに移り、OSに含有されたという流れだ。

 一般のコンテンツサーチはタイトルやタレントの名前を正確に入力しなければ、絶対に働かない。でもTiVo OSでは、マイクに向かって適当に喋れば、よい。

無料サービスも紹介

 題名は忘れたが、トム・ハンクスがFedExの貨物飛行機の乗組員で無人島に墜落して、バレーボールを擬人化して何年も話しかけていた映画は何だったっけ? そこで「トム・ハンクスとFedExとバレーボール」と言えば、TiVo OSは、「それは『Cast Away』です」と画面に表示してくれる。かつてのRoviアプリでは、音声で案内してくれたが、今回は表示のみ。

 さらに「I'll be back」と言うと、一連の『ターミネーター』作品がずらりと表示。「Let it go」と言えば『アナと雪の女王』が、たくさん出てくる。なぜたくさんでるかというと、視聴者が加入している複数のOTT(配信)サービスや、加入していないサービスなども紹介されるからだ。つまりサービスを横断してTiVoがリコメンドを行うのである。

 これらの魅惑的な検索技術が、ベステルを魅了したのである。

設定であらかじめ、表示する配信サービスを選ぶ