Auro-3Dが新次元に入った。昨年、資本構成が変わり、新しい方向性が打ち出された。旧Auro Technologies N.V.が保有していたすべての資産、社員、Auro-3D技術の権利をベルギーの投資会社Saffelberg Investment groupが買収し、新会社NEWAUROB.V.が設立された。まさしく新出発らしい新会社ではないか。CES期間で、ミラージュホテルの一室に設けられた、Auro-3Dスウィートで、新展開を取材した。

ウィーンのネットワーク機器メーカー「ストリーミング・アンリミテッド」のAVレシーバー機器

Auro-Cxは、①ロスレス、②ロスレスPCC、③ニアロスレス、④パーセプチュアル、⑤ロッシーのモードを持つ

 まずストリーミングへの進出だ。これまでは、オーディオ・ビジュアルマニア向けの、高音質イマーシブオーディオコーデックというイメージが強く、製品も高級なAVセンターにほぼ限定されていたが、これからはストリーミングとスマートフォンの新世界に参入する。といってもあまたのプラットフォームや、コンテンツプロバイダーは既にビジネスを始めており、Auro-3Dとしての強みは何かということになる。

 「それは音質です。われわれのシステムは音質と、イマーシブ展開ではどこにも負けないと自負しています」とチーフ・テクノロジー・オフィサーのBert Van Daele氏は言う。旧Auro Technologies時代から技術開発を行ってきたベテラン技術者だ。今回は資本が変わっただけで、人材はそのまま引き継いでいる。

 サンフランシスコのStreamsoft社の音楽ストリーミングプラットフォーム「アーティストコネクション」を通じて、Auro-3Dのハイレゾ、イマーシブサウンドのコンテンツをスマートフォンや、サウンドバー、テレビ、さらには従来からのAVセンターに届ける。映像配信も加わる。

サンフランシスコのStreamsoft社の音楽ストリーミングプラットフォーム「アーティストコネクション」

試聴はストームオーディオのアンプを使う

 後者のハード機器にはウィーンのネットワーク機器メーカー「ストリーミング・アンリミテッド」のレシーバー機器を使う。デモンストレーションでは、BOX型のブレッドボードだったが、商品化では、それが各機器に入るイメージだ。

 いま述べた様々な対応機器が、互いにコミュニケートする。テレビ(OSはアンドロイドに対応)で映像を出し、AVセンター、もしくは対応のサウンドが、Auro-3Dイマーシブを鳴らす。スマホ単体では、イヤホンで、Auroマチックというアップミックス技術によりバーチャルなイマーシブサラウンドを聴くことが可能だ。

 Auro-3Dの新展開の2番目が画期的なイマーシブコーデック、Auro-Cxのデビューだ。これまで説明してきたストリーミングに使われるのは従来のAuro-Codec。これは「ニアロスレス」というステイタスだが、こちらは正真正銘のロスレスだ。

「インタラクティブオーディオ」。スポーツ試合で、アナウンサーだけ、歓声だけ、アナウンサーの音を強く……などが選べる

写真左はNEWAUROB.V.のCEO、Rudy Van Duppen氏。旧Auro Technologies出身だ。右はチーフ・テクノロジー・オフィサーのBert Van Daele氏。旧Auro Technologies時代から、技術開発に従事

 ストリーミング用途を考慮し、可変ビットレートを採用。192kHz/24ビットなどのハイレゾのイマーシブサウンド(22.2chも可能)を、その帯域に応じた最良のクォリティで伝送できる。速い速度から①ロスレス、②ロスレスPCC、③ニアロスレス、④パーセプチュアル、⑤ロッシー……とモードが選べる。

 ①ロスレスは「入力と出力が同等」だが、④パーセプチュアルでも違いはたいへん少ない。さすがに⑤ロッシーでは、圧縮した感じは否めない。MPEG-Hなどで採用された「インタラクティブオーディオ」もサポート。スポーツ試合で、アナウンサーだけ、アナウンサーの音をなくしたアンビエント音……などが選べるというものだ。

 ストリーミングへ進出、Auro-Cxでの新展開……と、これからのAuro-3Dに大注目だ。