サムスンディスプレイが開発したQD-OLEDは、2年目に入った。昨年の初年度はサムスンエレクトロニクス、ソニー、デルが採用したが、2年目は採用メーカーがどれくらい増えるかにまずは注目だ。筆者はアンコアホテル・ボールルーム7のサムスンディスプレイ・スゥイートを訪問し、仔細に取材できた。

青色発光層新材料「OLED Hyper Efficient EL」と発光最適化アルゴリズム「インテリセンスAI」が効いた

XCR(eXperiential Color Range)の説明

 今年のプロモーションは「高輝度+色の高輝度」効果を打ち出す。つまり単に輝度的な明るさだけでなく、色の高彩度が加わると、たとえ数字上の輝度は同じであっても、人の視覚の認識では、格段により明るいと感じることを、前面に打ち出すのである。高彩度にて輝度が上がったように見える(同じ輝度の色では,彩度が増すにつれて知覚明度が増加する)現象は、学会的にH-K効果(ヘルムホルツ-コールラウシュ効果)として知られている。

 量子ドット効果により、青色(B)発光から赤(R)と緑(G)が取り出せ、輝度も彩度も強いQD-OLEDのメリットを活かすプロモーション作戦だ。担当者は「QD-OLEDを押し出す新しい切り口がないかと模索した結果、XCR(eXperiential Color Range)というコンセプトを打ち出すことにしました」と言った。つまり「視覚で感じる実質輝度」という概念だ。

 輝度はセンサーによって画面の明るさを測定して得ているが、QD-OLEDの感覚的な明るさは、数字では完全に表現できないという知見から、H-K効果に基づく「PERCEPTUAL LUMINANCE」(認識輝度)のブランディングとして、XCRを提案するのだ。BT.2020の90%、DCI-P3で125%のカラーボリュウムを持つQD-OLEDの色性能に、まさにふさわしい切り口であろう。

32:9の49型ゲーム用QD-OLEDディスプレイも新開発。サムスンエレクトロニクスのminiLEDモニターとの比較

分かりにくいが、まわりのミラーも同じ景色を映している、2023QD-OLEDの77型4Kディスプレイ

 技術的にも2022年モデルに比べ、進化を見せている。ピーク輝度は昨年モデルが1,545nitsに対し、2023年モデルは2,096nitsと大幅に向上。それは、①QD-OLEDの青色発光層に新材料「OLED Hyper Efficient EL」を適用して光源効率を向上、②ビッグデータに基づくAI技術により、各画素の情報をリアルタイムに収集し、それを用いて発光を最適化するためのアルゴリズム「インテリセンスAI」……による複合成果という。

 この高効率の有機材料とAI技術の適用により、2022年モデルの消費電力から最大25%削減している。実際に観た感想としては、色の力感、彩度感、そして輝きが印象的であった。

 これまでの55型、65型に加え、77型の4Kパネルと49インチのウルトラワイドパネルを2023年ラインナップに用意した。LGディスプレイのMETA有機ELパネルとの戦いが見物だ。

イタリアの有名な写真作家、フランコ・フォンタナのカラフルな絵画が、QD-OLEDで活きる

アンコアホテルでのサムスンディスプレイスゥイート