ネットでの動画配信が主流になりつつある昨今、でもホームシアターで楽しむならやっぱりフィジカルメディア。実際に、ビットレートの有利さや細かな仕様、特典などでそのメリットを感じることも多いはず。本連載では、そんなディスクメディアをホームシアターで再生、そのインプレッションを紹介する。第9回は永遠の名作『カサブランカ』を、澤里昌吉さんに味わい尽くしていただいた。

『【初回仕様】カサブランカ 日本語吹替音声追加収録版
 <4K ULTRA HD & ブルーレイセット>(3枚組)』 ¥6,980(税込)

●発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント●販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント●1942年/アメリカ/モノクロ/本編102分

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 当方が魅力を感じているのは『脱出』や『黄金』や『アフリカの女王』のボギー。でも、『カサブランカ』がボギーの代名詞的作品であることに異存はない。ヤセガマンもカッコいいリックのボギー。匂い立つように美しいイルザのバーグマン。背景は戦時下。別れと再会と別れ。男と女のココロの機微。男同士の友情。耳に刻まれる劇中歌。散りばめられた名言。洒落たダイアローグ。妙に気になる脇役。『カサブランカ』は一級の娯楽作品としての要素をすべて備えている。

 さて、4K/HDR盤の『カサブランカ』は陰影感も奥行感もある画質だが、目を惹くのは細部。名台詞の「君の瞳に乾杯」をなぞるなら、キャッチライトの輝きに「ご両人の瞳に乾杯」と声をかけたくなるくらい。顔のアップはスチールを観ているかのよう。サーチライト、ネオンサイン、イヤリングのまばゆさはBD盤を凌ぐ。4K/HDR化っていうと、ついドラスティックな変化を期待してしまう(当方のことです)が、効果は細部に宿っていると認識した次第。

 とはいえ、当方の視聴環境だと気になることもある、4K化で解像感の高い画質であるゆえに、100インチの大画面ではフィルム・グレインが目立ちすぎて。フィルムの味ではあるだろうけど、『カサブランカ』に限らずモノクロ、スタンダードサイズの旧い作品の4K化は、フィルム・グレインがプロジェクターでの再生にとってヤッカイだ。直視型ディスプレイを意識したソフトなのかも……とプロジェクターの画角をズームで60インチほどにして視聴したら、あら、フィルム・グレインが100インチほどは気にならない。でも、100インチで観たい。対処療法(?)としてコントラストを下げて再生した。

 残念だなあ。4K盤の本編は2.0ch音声収録だ。BD盤の本編は1.0ch収録なのに(音声フォーマットはどちらもDTS-HD MA)。個人的には4K盤も1.0ch収録であってほしかった。より作品のムードに浸れるからね。じつは、当方のセンタースピーカーはL/Rスピーカーとは別機種。声に特化させたスピーカーで聴きたくて、サラウンドプログラムのNeo:6 Cinemaを選び、他のチャンネルの音量を絞りきってセンターだけで再生してみた。これが結構よくて。記憶にある名画座の音に少しは近づいたような。かくして2度目の全編再生。4K盤の収録音声がひとつふえたようで1.0フェチとしては楽しめた。自己満足かな。

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