ネットでの動画配信が主流になりつつある昨今、でもホームシアターで楽しむならやっぱりフィジカルメディア。実際に、ビットレートの有利さや細かな仕様、特典などでそのメリットを感じることも多いはず。本連載では、そんなディスクメディアをホームシアターで再生、そのインプレッションを紹介する。第7回はトム・クルーズ主演のSFアクション『オール・ユー・ニード・イズ・キル』をチェック。

 2022年の洋画界で最大の話題を集めた『トップガン マーヴェリック』。1986年公開の『トップガン』の続編ということで、久々に劇場に足を運んだという方も多かっただろう。それもあってか、日本での興行収入も11月20日時点で134.5億円と、トム・クルーズ主演作品としては『ラスト・サムライ』の137億円に次ぐ実績を達成している。

 そんなトム・クルーズが2014年に主演を務めたのが『オール・ユー・ニード・イズ・キル』だ。日本のライトノベルをもとにしたSFアクションで、監督はダグ・リーマン、ヒロインのリタは、『ボーダーライン』や『クライエット・プレイス』のエミリー・ブラントが演じている。本作はドルビービジョンでマスタリングされた初の4K作品で、公開当時も一部の劇場ではドルビーアトモスで上映されていた。

 2015年にブルーレイソフトが発売されたが、映像は2K/SDR、音声はDTS-HD-MA7.1chという仕様。今回登場したUHDブルーレイは4K/HDRとドルビーアトモス音声を収録し、よりオリジナルマスターに近い状態で作品を楽しめるようになっている。

 物語の舞台はギタイと呼ばれる宇宙人の侵略を受けている近未来の地球で、トム演じる主人公のウィリアム・ケイジは戦闘中に偶然タイムループに巻き込まれ、同じ時間を繰り返し生きることになる。ケイジが戦闘を繰り返すたびにどんどんレベルアップしていく様や、周囲の仲間達がものわかりがよく、必ず彼を応援してくれるところなどはライトノベル的展開で、ここは難しいことを考えずにストーリーを楽むべき。

 UHDブルーレイでは、ドルビーアトモスの音響演出が印象的だ。冒頭から暗騒音的な低音が響き、地球がおかれた暗鬱な状況を音で感じさせてくれる。ブルーレイのDTS-HD MAでもサウンドデザインは変わっていないのだが、UHDブルーレイのドルビーアトモスの方が低音がより深く、全方向から音が押し寄せてくる印象が強い。なおドルビーアトモスはヤマハのAVセンター「CX-A5020」を使い、7.1.4環境で再生している。

 Ch(チャプター)2もドルビーアトモスを意識した音作りと思われ、ヘリの発進音や移動感が明瞭だし、営倉の背景音も細かい。続く戦闘シーン、初のタイムループへ至るくだりでも低音がずしんと響く。前回の戦闘での失敗をタイムループでリカバーしていく様子など、そりゃそうだよねという展開だが、音の面白さとあいまってゲーム的に楽しめた。

UHDブルーレイには2Kのブルーレイも同梱されている。音声仕様はDTS-HD MA7.1chと既発売品と同じ

 映像はSDRプロジェクターのソニー「VPL-VW1100ES」でも、輸送機の内部や戦闘服のディテイルが緻密に再現されるし、ギタイのぬめっとした体液なども背筋がぞわぞわとするような絵で見せてくれる。さらに有機ELテレビTVS REGZ「55X9400S」のHDR10再生では、コックピットのスイッチの細かい点滅まではっきり見え、クライマックスのルーブル美術館地下の水中の描写、ギタイのボディの点滅から爆破の輝きまで、ハイ・ダイナミックレンジを存分に活かした演出だ。

 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のUHDブルーレイは全篇を通して低音の使い方が面白く、包囲感や移動感も充分に味わうことができる。さらに映像面でも4Kの緻密さに加え、HDRならではの豊かな輝度・コントラスト再現は一見の価値がある。ドルビーアトモスとHDRの魅力を楽しめる一枚として、ホームシアターファンは要チェックだ。(取材・文:泉 哲也)

CX-A5200で音声信号をチェックした。左がUHDブルーレイ、右はブルーレイを再生した場合

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