finalから、同社完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデルとなる「ZE8000」が発表された。発売は12月16日。価格は¥36,800(税込)となる。

 ZE8000は、同ブランドのフラッグシップの系譜となる「8000」を型番に付与した製品であり、事前のリリースにてお伝えしたように、同社基礎研究部門が発見した新たな物理特性を適用することで、圧倒的な情報量を持ったサウンドの再現を可能にした完全ワイヤレスイヤホンとなる。アクティブノイズキャンセル機能も搭載している。

 会見で壇上に立った細尾社長は、「他社の製品との差別化を考えた際、オーディオ機器が目指すのはストレスなく音楽に没入できる性能。それを得るために基礎研究に重きを置いてさまざまな技術開発を行なってきており、今回、最新の成果を投入した製品として、ZE8000を発売します」と、熱い想いをもってその経緯を発言。これまで同社のポリシーに共鳴して製品を購入してくれたユーザーへの感謝の言葉を口にするとともに(その売り上げが、開発予算の形状に寄与した、と感謝)、「(新たな知見によって)オーディオを新しい世界へ変えていきたい」と力強く語っていた。

 さて、新製品では圧倒的な情報量によって、まったく新しい音楽体験ができるということを、自身(社長)の初めて8K映像と体験した際の経験に基づいて、「8K SOUND」と命名。高域の再現性が、低域の量感が、など、特定の帯域に基づいた音質の良し悪しを語るのではなく、再現する情報量を圧倒的に増やすことで、8K映像のどこを見ても高精細と感じられるのと同じように、全帯域にわたって高精細な再現を可能にした、としている。

 具体的な内容については、後日技術発表を行なうということで、あまり詳細な部分まで踏み込んだ説明はされなかったが、発表会では、「デジタル信号の処理技術と、それに対応したドライバーの開発」が重要になる、ということは明かされた。

 同社では、ドライバーの歪を抑制する技術として、振動板とエッジ部分を一体化する「f-Core」技術を、開発・搭載してきているが、本ZE8000では、昨年発売(現行モデルの)「ZE3000」搭載のそれ(f-Core for Wireless)を、さらにブラッシュアップした「f-CORE for 8K SOUND」を開発・搭載。ドライバーの口径は10mmへと拡大され、振動板自体の素材はアルミに変更。配線材も新開発し、さらに空中配線とすることで、自ら動く振動板への影響を低減。これによって、低域部分の歪を大幅に抑制することができたという。そして、低域の歪が減ると、再生時の(低音の)精度を向上させることができる、ということで、デジタル処理の精度や再現性(=処理能力)を向上させ、その相乗効果で、今回の8K SOUNDが実現できた、ということだ。

 次いで、装着性の部分にもメスが入れられた。装着性をアップするには、人の耳の形はさまざまあるが、本体の小型化が一番有効だといい、本モデルではドライバー部分を独立させた構造として小型化、その後ろの膨らみの部分にバッテリーを内蔵させている。ドライバーとバッテリーを離すことで、ノイズ対策にもなるそうだ。将来的には、バッテリー交換式の製品の開発も検討しているという。

 ちなみに、イヤーピースは一般的な音導管に挿しこむ傘タイプではなく、スポーツモデルでよく見るような少し大きめのもので、ドライバー部分にすっぽりと被せるようになっている。製品には、5サイズが同梱される。また、来春を目途に、耳型採取して作る、ユーザー個人個人の耳の形にジャストフィットさせたカスタムイヤーピースへの対応も、予定しているそうだ。

 対応コーデックは、SBC、AAC、aptX、aptX Adaptiveであり、Snapdragon Soundをサポートすることで、(対応機器と組み合わせると)aptX Adaptiveは96kHz/24bitの再生も可能となる。その他、アンプはAB級となり、コンデンサーについても、薄膜高分子積層型を採用するなど、音質に配慮したパーツをセレクトしているのも特筆できる(効果はあると明言していた)。

 なお、今回は専用アプリ「final CONNNECT」も用意され、ノイズキャンセリング/外音取り込みモードの切り替え(4種類あり)が可能なほか、ボリュームステップの最適化(よく聞く音量の範囲で、より細かい調整ができる)、EQによる調整も行なえるそうだ。さらに、8K SOUNDの音質を高める=デジタル信号処理の演算能力を限界まで高める「8K SOUND+」モードも用意される。主に、再現精度の向上した低域部分の演算性能を高めるように働くそうで、これをオンにすると、電力を食う=内蔵バッテリーの駆動時間が減ることから、オン/オフが設けられているそうで、オンにすると30~1時間ほど駆動時間が減るという(オフ時のイヤホン単体での駆動時間は約5時間)。

 さて、今回は発売に先駆けて製品を試聴する機会を得たので、そのインプレッションを簡潔に紹介したい。ちなみに事前に記しておくと、記者の環境下では専用アプリが、1)外音取り込みモードの「ウィンドカットモード」が機能しない(これは発売時のアップデートで対応の予定という)、2)「ボリュームステップ最適化」の動作が安定しない、状態でテストしている。「8K SOUND+」モードはオン。

 音質については担当者の弁の通り、聴きはじめの数分は不思議な印象となる。低域の再現力(細部の表現力)が向上したことで、低域が押し出してくる感じはないのだが、低域に注意が向くようになる。しばらくすると、低域の中から細かな音が聴こえてくるようになり、いわゆるディテイルが掘り起こされた状態となる。テストでは、エージングは済んでいないと思われるため、全体的に硬い音調ではあるものの、2時間ぐらい聴いていると徐々に高域の再現性も上がってきたので、1週間ほど使えば(エージングが進み)本領も発揮されてくるだろう。

 ZE3000は、微細な音の再現性に優れたサウンドが楽しめる反面、低域の薄さも感じてしまうものだったが、本ZE8000では微細な再現性はそのままに、低域のサウンドは充実したもので、ZE3000で感じていた不満は解消され、さすがはフラッグシップという出来栄えとなっていた。続いて、コンテンツをハイレゾすると、高域が少し伸びてくる印象で、艶やかな感じもうまく再現されるようになる。と、ここまではポータブル音楽プレーヤーからのaptXコーデックでの再生だが、これをスマホ(xiaomi)に換えaptX Adaptive(96/24)で再生すると、さすがは96/24というサウンドで、響き感は向上する。しかし、スマホからの再生になるだけに、細かい音の再現性は大きく後退してしまう(悩ましい)。

 ちなみに、アプリの売りの機能でもある「ボリュームステップ最適化」については、記者は通常、どの再生機でもボリューム1か2でしか再生しないのだが、そのボリューム値では、最適化はうまく働かないようだ。

ZE8000の主な仕様
通信方式:Bluetooth5.2
対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive(96/24)
搭載ドライバー:10mm径ダイナミック型
連続再生時間:5時間(8K SOUND+オフ時/同機能オンで30~60分再生時間は短くなる)、最大15時間(充電ケース併用)
防水性能:IPX4