KADOKAWAから、『戦国自衛隊 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』が10月28日に発売された。それを記念し、10月31日に立川シネマシティで、『戦国自衛隊』4K上映イベントが行われた。会場には本作で県(あがた)信彦一等陸士を演じた江藤 潤さんと、StereoSound ONLINEで本UHDブルーレイのメイキングについて取材を担当してくれた酒井俊之さんも参加、上映後に作品とUHDブルーレイに関するトークショウが行われた。今回このイベントに参加してきたので、その概要をお届けしよう。(StereoSound ONLINE編集部)

 今回のイベントは立川シネマシティ シネマ・ワン g studioで行われた。立川シネマシティは音がいい劇場として映画ファンの間でも有名で、独自の編成による極上音響上映も人気を集めている。今回はUHDブルーレイで使われた物と同じ映像・音響素材から作られた4K/SDRと4chステレオのDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)で上映が行われている。

 平日の夕方にも関わらず劇場には本作のファンが続々と集まり、上映開始前には多くの席が埋まっていた。18時に上映がスタートし、スクリーンに映し出される映像とサウンドに来場者は夢中になっている様子だった。

 ちなみにシネマ・ワン g studioのプロジェクターはBARCOのレーザープロジェクターとのことで、映像もきわめてクリアーで、色も鮮明。顔色には赤みがさし、青春群像劇ともいわれる本作の登場人物たちがいきいきと描かれていた。サウンドもさすがの ”極上音響” で、セリフも明瞭で聞きやすく、大迫力の爆音が客席まで押し寄せてきた。劇中曲も心に染みる。

県(あがた)信彦一等陸士を演じた江藤 潤さん。劇場のスクリーンで『戦国自衛隊』を見るのは40年振りとか

 約2時間が過ぎ、上映後に登壇した江藤さんはまず、「いいですね、なんか懐かしくて。県が可愛くて、私はあんな顔だったのかな、なんて40年ぶりにスクリーンで見て感動しております。作品も手作り感があって、爽やかでした。見終わってとっても嬉しかったです」と作品の感想を語った。

 続いて酒井さんが、「僕は1979年の劇場公開時に映画館で『戦国自衛隊』を見て以来、40数年この映画を追いかけてきました。こうやって会場を拝見していると、僕と同じような方々がいらっしゃって、景虎のセリフじゃないですが “同族じゃぁ” という感じがしています。しかも今日は4Kデジタル修復版を “県” と一緒に見ることができて、ひじょうに感激しています」と話してくれた。

 続いて4K修復版の感想を聞かれた江藤さんは、「公開当時は劇場でも何回か見たんですけど、久しぶりに大きなスクリーンで見ると迫力があるし、前よりも音もいいですね。映像もクリアーになっていてびっくりしました」と立川シネマシティでの鑑賞に満足していたようだ。

 酒井さんは、「本作について、ディスクの制作を担当したIMAGICAエンタテインメントメディアサービス(以下、Imagica EMS)の試写室でも拝見しましたが、映画館で他のお客さんの背中越しに見る『戦国自衛隊』は独得なもので、また違う感動がありました」と映画館でお気に入り作品を見る楽しさについても触れていた。

オーディオビジュアルファンの立場からUHDブルーレイの魅力を解説してくれた、酒井俊之さん

 続いて本作の撮影で自衛隊員を演じた際の苦労話について聞かれた江藤さんは、以下のように語った。

 「クランクインする前に、当時の東宝・砧撮影所の前の野原で、キャストもみんな自衛隊の衣装を着て、銃を持って訓練をしたんです。教官が自衛隊上がりの方で、本気になって教えるんですよね。それで匍匐前進とかを3日間ぐらいやったんです。ムッシュ(かまやつひろし)とかもみんなへとへとになって帰ってきて、それでいざクランクインになったら、一切そういうシーンがなかったんですよ(笑)。

 また県については、役作りをこういう風にしようということはあまり考えていませんでしたが、ひとりだけ沈着冷静なので、なるだけ興奮しないように、セリフもゆっくりしゃべる、みたいなことは心がけていました」

 それを聞いた酒井さんが、「伊庭三尉(千葉真一)以下の他の隊員が好きなように生きていく、昭和時代にできなかったことをしていく中にあって、冷静にその状況を見て、行動する。県はそんな役回りでしたね。県の存在があることで、観客が隊員を取り巻いている状況はどうなのか、どうなっていくのかを理解できる、自分が22番目の隊員としてそこに居るような臨場感があったと思うんです。彼がいなかったらそういう風には見られなかったでしょうね」と話すと、江藤さんも「そうですね」と共感していた。

4K上映会が行われた立川シネマシティ シネマ・ワン g studio

 続いてテーマがアクションシーン撮影での苦労話に移り、江藤さんが当時の思い出を披露してくれた。

 「撮影は3ヵ月ぐらいかかったんですが、みんな同年代だったので、部活をやっているような気分でした。千葉さんも、夏八木 勲さん、渡瀬恒彦さんもみんな気持ちが “男の子” なので、凄く楽しく撮影できました。

 ただこの映画は、自衛隊 “非全面協力” だったので(笑)、そこはたいへんだったようです。角川映画さんは61式戦車を作りましたが、その戦車で最初に撮影したのがタイムスリップをする海岸シーンでした。

 ここに戦車が近づいているシーンで、少しカーブしながらながら僕たちの方にやってくるというのが斎藤光正監督のイメージでした。でも戦車ができたばかりでギアの動きが悪く、曲がろうとするとガクガクしてしまうんです。そこでカメラマンがレールを敷いて、カメラが回り込むことで戦車がカーブしているように見せたんですよ。

 ヘリコプターのシコルスキーS-62も西日本空輸さんから借りてきて、泥絵の具で塗って自衛隊風にしています。19号型哨戒艇も同様で、みんな手作りだったんです。だから今日見直して、いや〜手作りってやっぱりいいもんだなあと感じましたね」

 その他に当時の思い出として江藤さんは、「福島の撮影の時に、近くにそば屋があったんです。ある日雨が降って撮影が中止になって、竜雷太さん達がビールを飲み始めたんです。僕たちも弁当を持ってそこに集まっていて、今日はもういいなということになって大盛り上がりになりました。そこにはムッシュも鈴木ヒロミツさんもにしきのあきらさんもいたから、みんなで合唱になったんです。そこから、もの凄くいいチームワークになりました」と懐かしそうに話してくれた。

『戦国自衛隊 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray【HDR版】』 ¥18,480(税込)

●DAXA-5873●本編138分+特典113分/4KUltra HD Blu-ray+Blu-ray+特典Blu-ray+CD 計4枚組●カラー/ビスタサイズ●1979年●日本●音声:[UHD]日本語2022 Remix Dolby Atmos、日本語 劇場オリジナル4chステレオ、日本語 劇場オリジナル 2chモノラル、[BD]日本語 劇場オリジナル4chステレオ、日本語2.0chステレオ、日本語2005 Remix 5.1chサラウンド、英語 吹替2chモノラル●字幕:日本語字幕●発売・販売:KADOKAWA

酒井さんによる、ホームシアターでのUHDブルーレイインプレッションはこちら
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https://online.stereosound.co.jp/_ct/17583137/

 ここから酒井さんが、UHDブルーレイプレーヤーについて解説をしてくれた。

 「今回のUHDブルーレイで使われている4Kマスターの品質については、今皆さんがご覧になった通りです。おそらく、79年当時に劇場でご覧になったフィルムよりもいい状態で絵と音を楽しんでいただけたことと思います。当時のスタッフやキャストが最初に見たままが再現されていると思って間違いないでしょう。

 最近よく4Kデジタルリマスターとか、4Kデジタル修復という言葉を聞きます。そこではよく“ていねいに4K化する”という言い方をするんですけど、実はそれだけじゃダメなんです。むしろ大事なのは正確性で、どこまで劇場公開時のスタッフが意図したものを蘇らせるかです。

 今回の『戦国自衛隊』で言うと、Imagica EMSのレストアチームが4Kマスター制作作業にあたっていますが、そこには当時撮影部助手だった藤澤順一さんが参加したり、カメラマンの伊佐山 巌さんとどういう色調で上映用プリントを作るかについて一緒に作業した方も参加しています。

 Imagica EMSには当時の色調についての資料(タイミングデータ)も残されていたそうで、それらの資料や証言、素材を総合的に使って、いかに劇場公開時の姿に復元するかを追求しています。その作業を本当にていねいに行った結果、今回の4Kデジタル修復版が出来上がったわけです」

 続いてUHDブルーレイならではの楽しみについて聞かれ、「本作のUHDブルーレイは既に発売されていますので、ここにおいでの中にもご自宅でご覧になった方がいらっしゃるんじゃないでしょうか。

 ところで、今日の上映に使われたマスターは映像が4K/SDRで、音声は4chステレオサウンドです。4chステレオサウンドは公開当時に一部の劇場で使われたもので、フロントL/C/Rとリアの4チャンネルでサラウンドを再現するものです。

 これは劇場と同じフォーマットですが、UHDブルーレイにはさらに4K/HDR(ハイダイナミックレンジ)も収録されています。こちらは藤澤さんが監修し、新たに最新フォーマットで仕上げた映像です。さらに音声も最新のドルビーアトモス版が入っています。つまりUHDブルーレイなら劇場と同じものだけでなく、最新フォーマットの『戦国自衛隊』も楽しめるのです」と、パッケージメディアならではのメリットを語ってくれた。

 なお今回の『戦国自衛隊』にはディスクの他に192ページにわたる資料集やサントラCDといった特典も同梱されている。

 それを手に取った江藤さんは、「びっくりしちゃったんですよ、この資料集の重さに! 新たにインタビューもしていただきましたが、とにかく写真がたくさんちりばめられているので、こんなこともあったなぁと思い出して、とても懐かしかったです」と楽しそうにページをめくっていた。こういった資料に触れるのも、映画の楽しみのひとつといっていいはずだ。

トークショウの最後に、江藤さんに誕生祝いの花束が贈呈された。

 多方面から『戦国自衛隊 4Kデジタル修復 Ultra HD Blu-ray』の魅力が紹介されたところで、トークショウは終了。最後に、本ディスクの発売日(10月28日)に江藤さんが誕生日を迎えたことを祝って、酒井さんから花束の贈呈が行われた。

 花束を受け取った江藤さんは、「お忙しい中、沢山の方にご参集いただき、本当に嬉しく思います。40年ぶりの作品を、懐かしく、やっぱり手作りっていいなぁと思いながら、感慨深く見させていただきました。KADOKAWAさんはこれから色んな作品をUHDブルーレイで発売されていくということで、『戦国自衛隊』がその第一弾ですけど、これを筆頭にご来場の皆さんはUHDブルーレイを入手なさって、お家で楽しんでいただけたら嬉しいなぁ、ありがたいなぁと思います。本日はありがとうございました」と挨拶をして、イベントが終了となった。

 映画は劇場で観て終わり、ではない。お気に入りの作品ならパッケージソフトで所有したり、サントラを楽しんだり、関連書籍を読んだりと、楽しみは広がっていく。それを満喫できる “究極にして最終形態” のパッケージを目指したKADOKAWAのUHDブルーレイを、映画ファンにぜひチェックしていただきたい。(取材・文:泉 哲也)

11月26日(土)〜12月2日(金)立川シネマシティにて、『戦国自衛隊』4K極音上映決定!

 今回の『戦国自衛隊』4K上映会の好評にお応えし、立川シネマシティでは同作の【極音】上映を1週間限定で開催する。「角川映画」全盛期のタイムスリップSF時代劇。主演は千葉真一、戦国時代に飛ばされてしまった自衛隊と侍たちの激突を描いた一作だ。良くも悪くも、今の映画からは失われてしまった、昭和の魂のようなものが焼き付けられている本作を “体感” して、アツくなっていただきたい。

●日時:2022年11月26日(土)〜12月2日(木)
●会場:シネマ・ワン fスタジオ
●料金:通常料金 ※各種割引適用
●チケット:通常スケジュールでWeb予約およびワン窓口販売

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