映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第87回をお送りします。今回取り上げるのは、3代におよぶ警察一家の行く末を描いた『警官の血』。白と黒の間で生きる彼らの姿を、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

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『警官の血』
10月28日(金)新宿バルト9ほか全国公開

 祖父、父、そして息子。親子3人の警察官一家の運命を描いた佐々木譲の長篇小説に材をとった一篇。

 本邦では2009年に江口洋介、吉岡秀隆、伊藤英明の主演で2夜連続のテレビムービーとして扱われた作品だが、2時間弱に尺が詰められた本作では当然大河小説然としたスタイルはとられていない。

 原作では三代目の孫にあたる青年、チェ・ミンジェを演じるのは、『パラサイト 半地下の家族』で家庭教師に扮していたチェ・ウシク。融通がきかぬように思える新人警官である彼が、潜入捜査という荒波にもまれ、父と祖父との運命の綾を追いながら、やがてはタフな警官に成長してゆく。好演だろう。

 対する広域捜査隊のエース警官パク・ガンユンに『お嬢さん』『工作 黒金星と呼ばれた男』のチョ・ジヌン。出所不明の捜査費を使い、情報屋を利用しながら暴力団や賭博、麻薬犯罪を追うタフガイだ。

 検察庁からパクの身辺調査を命じられたチェ・ミンジェは、彼の子分として行動をともにしながら、麻薬事件などを追うことになるが。

 俺たち警察官は世間の境界線上に立つ存在なのだ。黒と白、どちらに染まってもだめなんだ。真の警官になるか、卑劣な官僚になるか、道はふたつにひとつに分かれている。それをよく考えろ。

 父親と祖父の運命を思いながら、夜の街に立ち、銃撃戦などにも挑むミンジェ。雨と濃霧に世界が煙るノワール・タッチの一本だといえる。

 やがて剛腕な警官パクの横に車を停める青年ミンジェ。韓国ノワールの渋みに満ちた名シーンだ。

映画『警官の血』

10月28日(金)より、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほかにて全国ロードショー公開

原作:佐々木譲『警官の血』(新潮文庫刊)
監督:イ・ギュマン
出演:チョ・ジヌン、チェ・ウシク、パク・ヒスン、クォン・ユル、パク・ミョンフン
英題:The Policeman’s Lineage
配給:クロックワークス
2022年/韓国/119分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:福留友子/PG-12
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