来る11月1日にオープン予定の「ジブリパーク」。昨日、開園に先立ってメディア向け内覧会が開催された。
ジブリパークは愛知県の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)内に設けられる、“森と相談しながら作っている、スタジオジブリの世界を表現した公園施設”だ。今回は第1期として「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3つのエリアがオープンする。
中でも「ジブリの大倉庫」にはスタジオジブリが手がけてきた作品世界を彷彿させる展示が満載。「三鷹の森ジブリ美術館」だけで上映されている短編作品が楽しめる「映像展示室オリヲン座」や、ジブリ作品に入り込んで写真撮影ができる「ジブリのなりきり名場面展」、『天空の城ラピュタ』のロボット兵に出会える「天空の庭」といった様々なスペースが準備されているのだ。
内覧会では、オリヲン座でスタジオジブリの宮崎吾朗監督と大村秀章愛知県知事による記者会見が行われた。
まず大村知事から、ジブリパークの成り立ちについての説明が行われた。
愛・地球博記念公園は、その名の通り2005年に開催された「愛・地球博」の会場跡地に作られている。愛知県では愛・地球博のレガシーを活かしていきたいという思いから、公園内にジブリパークを作ろうと企画したそうだ。
実際にプロジェクトが動き出したのは2017年の5月で、そこから5年5ヵ月で構想から第1期のオープンにこぎ着けたわけで、これは日本の同様の事業としては最短ではないかとのことだった。
大村知事は、「スタジオジブリのコンテンツがぎゅっと詰まったジブリパークを、一日でも早くお届けしたいという思いでやってきました。今回オープンする3エリアに加え、2つのエリアも準備しています。ジブリパークはどんどん発展してきます。
スタジオジブリさんの作品は、日本を代表するオリジナルコンテンツであり、わが国が生んだ文化の最高峰だと思っております。それが詰まったジブリパークを、日本中の人はもちろん、世界中の皆さんに楽しんでいただければと思っております」と語ってくれた。
続いてジブリパークの製作現場を指揮する宮崎悟郎監督が登壇し、挨拶を行った。
宮崎吾朗監督は、「ジブリパークを作る動機のひとつが、宮崎駿監督が長編作品から引退すると宣言をしたことでした。スタジオジブリが長編を作らないとすると、作品を後生に残していくのはどうしたらいいんだろうという発想からジブリパークがでてきたんです。なので、ジブリの色々なものをぎゅっと詰め込んで、多くの人にジブリ作品を忘れられないようにしたいっていう思いがありました。
ところが相変わらずまた裏切られまして、今宮崎駿監督は長編映画を作っておりまして、梯子を外された気持ちでいっぱいなんです(笑)。まあそういうことも含めて、1期工事がやっと終わって、今また2期工事が佳境ですので、きちんとお約束を守ってオープンできるようにしたいと思っております」と話していた。
また記者からの、三鷹の森美術館との連携企画を考えているかという質問に対し、「ジブリ美術館は僕らにとってひとつの総本山で、アニメーション映画を作るとはこういうことだというのを宮崎駿が表現した空間だと思うんです。ジブリ美術館発の展示はたくさんありますので、それを拡大した形でジブリパークでやるという連携が取れていくのではないでしょうか。
ジブリの大倉庫という場所を作ったきっかけが、これまでのスタジオジブリの展示会や、ジブリ美術館での展示用に造形物を作ってしまって、それが倉庫にたまって困っていたっていう現状がありました。なので、今後もジブリ美術館で造形物を作って、ここに持ち込むと思います。そういう意味で既に連携が取れていると思います」と語って、記者の笑いを誘っていた。
その会見に続いて、オリヲン座のオープニング作品である短編作品『くじらとり』が上映された。
オリヲン座は座席数170という空間で、昭和テイストのシック劇場(あるいはアンティークなヨーロッパの劇場)を彷彿させるまとまりになっている。座席は高低差がしっかりあり、スクリーンはやや高めの位置に取り付けられているので前の人の頭が気になることもない。フロントL/C/Rスピーカーはスクリーン裏に収められ、サラウンドスピーカーは左右の壁に各5台、サラウンドバックは4台取り付けられている。
上映が始まるとスクリーンに向かって右側にある明かり取りの窓にシャッターが降り、室内は全暗になった。映像はクリスティの劇場用DLPプロジェクターで投写されているそうで、パステル調の微妙な色合いまでしっかり描き分けており、明るさも充分。サウンドはセリフの再現が明瞭で、かつ誇張感のない自然なまとまりに仕上がっていた。
オリヲン座では今後もスタジオジブリ制作の短編アニメーション10作品を順番に上映していくとのことなので、それらを制覇するだけでも充分楽しめるのではないだろうか。できればいつか、この空間でジブリの長編作品も見てみたい、そんな風に感じた次第だ。
なおStereoSoundONLINEでは、ジブリパークにオリヲン座を作った意図や、施工で注意したことなどについて担当者にインタビューをお願いしている。その詳細は近日リポートするのでお楽しみに。(取材・文:泉 哲也)
©️ Studio Ghibli