このところ監督作が続々と公開されているいまおかしんじ監督の最新作となる『神田川のふたり』が、9月2日に公開を迎える。神田川周辺を舞台に、両片想いの幼馴染が遭遇するファンタジーな24時間を描いた、青春ロードムービー。ここでは本作で初主演を飾った上大迫祐希にインタビューした。

――よろしくお願いします。まずは公開を迎える今の心境をお聞かせください。
 主演として映画に出演させていただくのが初めてなので、今は、皆さんにどう受け取ってもらえるのかな、どう観てもらえるのかなという、ワクワクと緊張が入り混じった感じになっています。

――主演と聞いた時は?
 びっくりしました。でも、私をメインで使っていただけることがすごく嬉しくて、今できる精一杯をこの作品に入れ込もうという思いで取り組みました。

――主演というのは、俳優さんにとって憧れですよね。
 そうなんです。上京して、本格的にお芝居の仕事を始めてから4年ほど経ちますが、こんなに早く映画の主演をさせていただけるものなのかと、驚きと喜びが同時に湧き起こっています。

――タイミングも大きいですね。
 本当にそう思います。タイミングには恵まれているなって常々感じていて、いろいろな方との出会いも、すごく大切にしたいです。

――ちょっと話が飛びますけど、珍しいお名前ですね。
 私も、親戚以外には出会ったことがないんですよ。ただ、地元の鹿児島だと、上白石さんのように、“上”の文字が入った3文字苗字の方は、結構多いですね。

――さて、話を戻しまして、今回はオファーで出演が決まったと聞きました。監督からオファーの理由は聞きましたか?
 ありがたいことに、オファーをいただいて出演が決まりましたけど、監督から、直接そうしたお話は聞いたことがなくて……。(演じた)舞自身は、すごくおっちょこちょいで危なっかしい女の子だなという風には感じているんですけど(笑)、それが自分と似ているかと言われたら、そこまでははっちゃけてはいないと思います。

――はっちゃけるとは?
 怒ったり、泣いたりする感情が激しくて、振り切れちゃうところです。あとは、楽しそうだなって思ったところは思いっきり楽しむというように、針を振り切ってしまうところがあって、恐らく無邪気なんだろうなぁって思いました。

――台本を読んだ時にもそう感じた?
 はい。感情がすぐに表に出るので、割と分かりやすい女の子だなっていう印象はありましたね。でも、好きな人が相手だからでしょうけど、嘘をついてまで一緒にいたいという、行動的なところもある女の子と感じました。

――冒頭、智樹(平井亜門)と再会した時も、当初は友達に急かされていましたけど、いざ二人きりになったら、主導権を握っていました。
 友達と居た時は、緊張していたというか、ちょっと照れ臭ささがありましたけど、(智樹と)2人きりになったら、お互いに想い合っているということや、昔からの積み重ねから、素でいられたんじゃないかと思います。

――そのはっちゃけた部分は、どのように表現しようと思いましたか?
 ただのわがままな女の子にならないように、好きな人であること、昔から家族ぐるみの付き合いがあること、そうした関係を踏まえた上で、「無邪気さからくるわがままを言う子」という受け取り方をしてもらえるような表現を心掛けました。

――それが、久しぶりに会って大爆発した、と。
 本当にそうです。もっと一緒にいたい! っていう想いが強すぎたんでしょうね!

――仕草も独特というか、もじもじしている割には、急にすごい(変な)ことをします。
 2人で会話をしているところは、割と私の素ではあるんですけど、急に、ヒヒーンとかパオーンとかするじゃないですか(笑)。舞は本当に楽しそうなところに突っ走っていく子なので、自分でも思いっきり楽しもうとしてやり切りました。

――そのパオーンはもともと台本にあったのですか?
 いえ、現場で急遽取り入れられたものです。監督からの指示で、(ボートの)受付役の方が急にヒヒ~ンってやったので、それに合わせたというか、(舞が)共鳴してやったという感じですね。めちゃくちゃ笑いました。あと、智樹役の平井さんが笑い上戸なので、ずっとこらえているのを見ているのも、面白かったです。

――観ている方は、何が起きているんだろうと思いました。
 そうですよね。その意味では、コンビニの件もびっくりされたんじゃないでしょうか。私もびっくりしましたから。もう、突っ込みどころ満載ですよね。

――コンビニシーンを含めた冒頭40分は、ワンカットで一発撮りでしたけど、練習・撮影はいかがでしたか?
 実は、本番は2回しか撮っていないんです。一度リハしてから本番、という流れでした。あらかじめ長回しがあるとは聞いていたんですけど、台本を読む限り、どこが長回しなのか分からなかったんです。途中でコンビニに寄ったり、変なおじさんに会うので、まさか冒頭40分が長回しだとは思わなかったですね(笑)。

 それと、現場に行って初めて分かったんですけど、出発地点から目的地までがあんなに長いとは思っていなくて! それに、台本には、シーンとシーンの合間にセリフがないので、その部分を(アドリブで)自分で埋めなくてはいけず、急遽当日に課題が出されたようで、結構焦りました。

――少しネタバレになりますが、智樹と別々になって、合流するまでの間に歌っているところも、アドリブですか?
 はい! もう全部アドリブですよ(笑)。現場で監督から“歌ってみる?”と言われて、“はい、歌います“と答えてあのシーンになりました。もうノリノリで歌っていました。

 あとは、移動中の智樹との会話も、基本はアドリブでしたね。そうそう、コンビニでおにぎりを買って食べるシーンでは、食べ終わったら自転車に乗って移動するという段どりでしたけど、私が食べきるのがめちゃくちゃ遅かったせいで、なかなか移動ができなくて、リアルに待たせてしまって、とにかく焦りました。

――観ていると、2ヵ所ぐらい明らかにミスしたかなと感じるシーンもありました。
 実は、やっちゃいました。普通に、間違えたとか言ってしまいましたけど、失敗ではなく、それも作中のセリフ、と受け取ってもらえたらいいな~と(笑)。

――さて、その後はなんとか智樹を引き留めて、デートっぽい時間を過ごすことになります。
 舞の中では、2人でいる時間を増やしたいと思っていたので、彼を引き止められればと。嘘でもなんでも、その内容についてはあまり深く考えていなくて、ただただ一緒の時間を作れたから楽しんで、カラオケではっちゃけまくっていたという感じです。その分、智樹には余計な心配をかけてしまったかもしれませんね。

――結局、嘘はバレてしまいます。
 智樹に「嘘だったんだ」って言われると、さすがに落ち込みますけど、切り替えも早くて! まだ一緒にいたいから、「神田の想いを伝えに行こう」なんて、どの口で言っているのかっていう感じですけど、まあ、智樹は本当に舞に対しては心が広いんだなって思いましたね。

――それだけ両想いなら、中学時代に告白すればよかったのにとも感じてしまいます。
 本当にそう思います。高校は別々になってしまったけど、舞のセリフで「夏祭りで会った」とあるように、自宅は近いのでしょうし、会う機会は結構あったんだろうと思います。ただ、中学のころと比べたら、話す機会は減ってしまったかなぐらいの感覚だったのではないでしょうか。見ていて可愛いなって思いました。

――ところで、冒頭、智樹がとある人物を助けることで、物語が動いてきます。
 私だったら、怖いというか危険を感じて助けないと思いますけど、智樹はそんなことは気にせず、意外とノリノリで助けていましたから、2人の面白そうの感覚は、ちょっと違うんだろうなって(笑)。ただ、智樹が助けるのなら手伝うぐらいの感じで、舞も行動したんだろうと思います。

――助けたのに、恩を仇で返されたような……。
 そうなんですよ。なんだかよく分からないものに巻き込まれてしまいますけど、きっと舞は楽しんでいるだろうなって思いながら演じていました。

――キスシーンもありました!
 初めてのキスシーン、頑張りました! 実はそれって、台本にはなかったんです。現場で急に“キスできる?”って監督に聞かれて、その流れでの初キスシーンになりました。

 その日は、お昼にカレーうどんを食べようと思っていたんですけど、普通のうどんにしてよかったです(笑)。とにかく初めてだったので、緊張している部分もあるかもしれませんが、それも高校生らしい初々しさと観てもらえたら嬉しいです。

――さて、主演作を経験して、ご自身の中で成長を感じる部分はありましたか?
 本作では、主演として現場に入らせてもらいましたけど、皆さんを引っ張っていけるほどの力量はまだまだでしたし、ずっと、緊張していました。ただ、昔から好奇心は旺盛なほうで、楽しそうって思ったことはすぐ行動に移すタイプだったので、そういう面は発揮できたかな、そのお陰で、なんとか撮影を乗り切れたのかな、と感じています。

 最近は、出演させていただく作品も増えてきたので、緊張するばかりではなくて、少しずつではありますけど、現場にも慣れてきたし、楽しめるようにはなってきましたから、そうした面では成長できているのかなと思います。あとは、映画って撮ってから公開までの間が長いので、その期間はずっと、どう仕上がるのかなとか、(観客に)どう受け取ってもらえるかっていうことを考えるのが楽しみで、すごくワクワクしています。

――劇中では歌声も披露されていて、とてもよく通るいい声だなと感じました。
 ありがとうございます。嬉しいです。私自身も、歌うことに対しては興味があるので、今後、お見せできる機会があったら頑張りたいです。

――最後に、今後演じてみたい役柄、設定がありましたら教えてください。
 今回の舞も、昨年公開の『スパゲティコード・ラブ』で演じた小川花も、自分と似ているところが結構多いなと感じていたので、できたら真逆の役を演じてみたいです。悪者というか、危険な雰囲気や感じを持った人(役)を演じられたら、楽しいだろうなって思います。

映画『神田川のふたり』

9月2日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

<公開記念舞台挨拶>
■実施日
2022年9月3日(土)
■実施時間
池袋シネマ・ロサ 11時40分の回上映終了後
アップリンク吉祥寺 14時25分の回上映終了後
■登壇者
上大迫祐希 平井亜門 いまおかしんじ監督 (以上予定) ※両館共通
■チケット
<池袋シネマ・ロサ>
チケットぴあの以下ページにて販売中
https://w.pia.jp/t/kandagawanofutari/
<アップリンク吉祥寺>
8月31日(水)10時00分より劇場WEBサイトにて販売開始
https://joji.uplink.co.jp/schedule

<キャスト>
上大迫祐希 平井亜門

<スタッフ>
監督:いまおかしんじ
脚本:川﨑龍太、上野絵美
2021年/日本/カラー/83分/ビスタサイズ/5.1ch/DCP/G
配給・宣伝 アイエス・フィールド
(C)2021 Sunny Rain

<あらすじ>
川をのぼった先にあるもの……。
亡きクラスメイトの想いを届けるため、ふたりはゆく。

高校2年生の舞と智樹は中学時代のクラスメイトの葬儀の帰り、久しぶりに二人きりで神田川沿いで自転車を押していた。二人は互いに気があったものの、思いを伝えられず別々の高校へ進学していたが、どうもその気持ちはまだ続いているようだ。

東京都杉並区永福町の幸福橋から高井戸方面へ神田川沿いを上る二人は、上下オレンジ色のスウェットに両手首を縄で縛られ倒れている謎の男に遭遇するが、その遭遇がきっかけで下高井戸八幡神社へ行くことになる。神社で亡きクラスメイトが想いを寄せているみおという名の女性との恋が成就するようにと祈願した絵馬を発見した二人。井の頭恩賜公園のボート乗り場で働くみおに亡きクラスメイトの想いを伝えるため、舞と智樹は神田川の源流である井の頭恩賜公園へ向かうことに。

上大迫祐希 プロフィール/舞 役
2000年、鹿児島県出身。
2019年に上京し本格的に女優業を開始。丸山健志監督の映画『スパゲティコード・ラブ』(21年)で長編映画初出演ながら主要キャストに抜擢される。本作で長編映画の初主演を飾る。

主な出演は、CMでは「カネボウ化粧品/KATE」(20年)、「グリコ/ポッキー」(21年)、「ポケモンユナイト」(21年)など。舞台では「無風/あの匂い」(20年)、「日本語私辞典」(21年)、朗読劇「星と光の旅」(21年)など。

2022年は本作のほか、ラッパ屋リーディング公演Vol.2「ショウは終わった」、ABEMA「恋愛ドラマな恋がしたい ~Kiss me like a princess~」など数多く出演。今後の活躍が期待される新進女優。

ヘアメイク:伊藤里香