ファーウェイから5月末に発売されたオーディオグラス「HUAWEI Eyewear」(市場想定価格¥32,780、税込)を長期体験取材してみた。メガネのテンプル(つる)の部分に小型スピーカーを内蔵した、装着するだけで音楽が楽しめるウェアラブルデバイスで、ラウンドフレームのボストン型と台形フレームのウェリントン型がラインナップされている。

 同様は昨年「HUAWEI×GENTLE MONSTER Eyewear Ⅱ」を発売しており、さらに他社からも同様の製品が登場しているが、Eyewearは何より軽いのがポイント。取材したボストン型では、約37.6gという軽量化が実現されている(ウェリントン型はフルリムが約36.8g、ハーフリムが約38.8g)。

 また、フロントフレームが取り外し可能で、度入りのレンズや、ブルーライトカット用に交換できるのも嬉しい(このサービスは有料で、全国のOWNDAYS店舗で対応してくれる)。

「HUAWEI Eyewear」の本体と同梱物一式

 搭載されたドライバーユニットは、128平方ミリメートルの振動板を持つダイナミック型。テンプルがラウンドしている部分にスリットが設けられ、ここから音を放射することで指向性を高めている。さらにテンプルの上側からは逆位相の音を再生することで、周囲への音漏れを打ち消している。

 Eyewearはマイクも内蔵しており、BluetoothでスマホやPCとつないで会話やリモート会議用にも使える。マイクは風切り音防止設計が採用されているので、自分の声を相手にクリアーに届けることができる。マルチポイント対応で、ふたつのデバイス間でのシームレスな切り替えが可能。

 その他、テンプル部にセンサーを搭載し、タッチ操作により曲のスキップや音量調整、通話の応答・終了などが可能。装着検知にも対応しており、Eyewearを外すと自動的に音楽を一時停止、3分以内に再び装着すると音楽再生を再開するといった便利機能も備えている。本体はIPX4の耐水性能を備えており、汗や水しぶきなども気にする必要はない。

スピーカードライバーを内蔵しているにしては、テンプルはかなりスマート。耳にかける部分の手前に細かいスリットが設けられており、ここから音が放射される仕組だ

 気になる使用時間はフル充電で約6時間の音楽連続再生、約 4.5時間の通話が可能。10分の充電で80分使える急速充電にも対応する。充電は専用充電コンバーターをテンプルの先端両端に取り付けて行う仕組だ(コネクターはUBS Type-C)。

 そんなEyewearのサウンドはどうか? と、その前にファーウェイでは先日、完全ワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds Pro 2」(¥26,800、税込)を発売している。こちらはマイクロ平面振動板ドライバー+11mmダイナミック型の音質訴求モデルで、コーデックもLDAC、AAC、SBCに対応済み(EyewearはAACとSBC)。

 FreeBuds Pro 2のインプレッションは野村ケンジさんが詳しく紹介してくれているのでそちらをお読みいただきたいが(下記リンク参照)、Eyewearそれとはまったく異なる音作りで、オープンな聴こえ方が心地いい。もちろん耳をふさがないからオープンなのは当たり前だが、それでいてしっかり音楽が認識できるのに驚いた。

 アンドロイドスマホのPixel6とペアリングして、いくつかの楽曲を聴いた。カーペンターズ、エリカ・バドゥ、メイヤ(コーデックはAACで、いずれも44.1kHz/16ビット/FLAC)では、ドライバーと耳の距離が近いので、思っていたよりクリアーでしっかりしたヴォーカルが聴き取れる。低音はさすがに控えめになるが、ここぞという時(『Baduism』のRimshotなど)にはテンプルが振動して、“低音の迫力” が擬似的に体感できた。

 音場は頭を包み込むようなイメージで、どちらかというと頭内定位に近いのだが、“耳に異物が入っていない” という開放感も相まって音楽に包まれるイリュージョンを味わえる。細かな情報まで聞き逃すまいと音楽に集中する、という聴き方には向かないが、もっと気楽に常に音楽に浸っていたいというユーザーにはぴったり。ながら聴きに近い使い方でも、音質はしっかりしておきたいという要望に応えるクォリティを備えている。

 そのため音量もついつい上げ気味になってしまい、気がついたらボリュウムが80%超えになっていた。だが、いわゆるイヤホン難聴の原因といわれる刺激的な音を聴いている印象にはならない。これも耳の外側で発した音を聴いているひとつのメリットかも。

Pixel6のアプリ画面より。コーデックはAACで接続されていることが確認できる。自宅で聴いていると、気がついたら結構なボリュウムにあげてしまっていた

 しかしこれくらいボリュウムを上げてしまうと、さすがに音漏れが心配になる。そこで通勤中のバスや電車、会社のデスクで試してみたが、どこからもクレームはでなかった。念のため電車内ではボリュウムを60〜70%くらいに抑えているが、隣に座っている学生が気にしている様子もなかった。Eyewearの音漏れ防止機能はかなり優秀なようだ。

 ただしオフィスの場合、どうしても隣の席の電話の声や会話が耳に入ってくる。お気に入りの音楽をBGMに原稿を書きたいと思っていたのだが、オフィス環境では無理。こういった使い方では、FreeBuds Pro 2のようなインイヤータイプがお薦めだ。

 また昨今のリモート会議でイヤホンをしながら会話をするのがうっとおしいと感じている方も多いはず。特にインイヤータイプでは自分の声がこもって響き、個人的にとても気持ちが悪い。ということで、Eyewearを使ってリモート会議に参加してみた。

充電は付属アダプターをテンプルの先端にマグネットで取り付け、写真下側のパーツにUSB Type-Cケーブルをつなげばいい。またこの部分のボタンを長押しすることでペアリングが可能になる

 これまで老眼鏡を除いて眼鏡を使う習慣がなかったので、眼鏡をかけてPCを観ることに若干の違和感を覚えたが、会議の内容も充分聴き取れるし、僕の発言も他のメンバーにきちんと届いているようで、これは使えそう。運動不足解消のウォーキングからリモート会議、仕事のGBMなどEyewearを多方面で活用してみたいと思った次第だ。

 気になったのは、先述した充電コンバーターのしまい方。コンバーター自体は軽量なので本体と一緒に持ち歩きたいが、付属のケースにはしまうスペースがない。一方で引き出しなどに入れてしまうと、他のケーブルと紛れそうだ(片付け下手なので)。ケースにコンバーター用のポケットでもあればよかったんだけどなぁ。(取材・文:泉 哲也)

編集部の若手にEyewearを体験してもらった。クリアーなサウンドが結構衝撃だった模様