スマートホンは、いまや世代、性別、地域の垣根を越えて広く浸透し、コミュニケーションツールとしてのみならず、日々の生活に欠かせないキーデバイスになっています。その傑出した能力は、当然ながら音楽再生の分野でも遺憾なく発揮されています。

ここでは、5月に小社から発行したムック「かんたん、わかりやすい スマホで始めるオーディオ&ネット動画再生読本」の中から、スマホを音楽の再生機として、ハイレゾ音源の醍醐味を体験するための知識、ノウハウ、システムづくりのあり方などを紹介した記事を、順次掲載していきます(全36回を予定)。

今回は、ワイヤレス(無線)イヤホン&ヘッドホンの音質を決める最大のポイントであるBluetoothの主な対応コーデックの特徴をかんたんにご紹介します。

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 Bluetoothの主な対応コーデックは下記の表の通り。大きく分類すると、SBC/AACがCD音質以下、aptX/aptX LLがCD音質相当、aptX HD/aptX Adaptive/LDACがハイレゾ相当のデータ伝送が可能だ(ただし、「ハイレゾ相当」なのであって、厳密にいえば「ハイレゾそのもの」ではない点にはご留意いただきたい)。

主なBluetooth対応コーデック

iPhoneは現在のところSBC/AACのみの対応であるいっぽう、Androidスマホのユーザーなら機種によっては、任意のBluetoothコーデックを選択できる。大きな選択基準になるのは、表にある4項目。このうち「レイテンシー(遅延)」は、スマホでの操作に対して音がわずかに遅れる現象を指し、Bluetoothの大きな課題とされている。ただし、このレイテンシーが大きいことで問題となるのは、主にゲームプレイ時や動画視聴時。音楽サブスクでも動画をたくさん観たいという方には低レイテンシーを謳う「aptX LL」がおすすめだが、音楽再生が中心という方は「レイテンシー」に関しては気にする必要はない。音質を最優先するならハイレゾ相当の音質をワイヤレスで実現する「aptX」「aptX HD」「aptX Adaptive」の『aptX系コーデック』か、あるいは「LDAC」を選びたい。特に「aptX Adaptive」は280kbps〜420kbpsの可変ビットレートで転送処理の安定化を図っている。「LDAC」は通信状況に合わせて自動的にビットレートを制御する技術を搭載し、安定的かつ高音質再生を目指している。

 現在のところSBC/AACのみの対応となっているiPhoneとワイヤレスイヤホン&ヘッドホンの組合せでは、ハイレゾ相当の音を聴くことはできないので注意が必要だ。

 Androidもメーカー/機種によって対応コーデックは異なるが、もしお手持ちのAndroidスマホがどのコーデックに対応しているかを知りたければ「設定」メニューから「開発者向けオプション」を表示させて(Android9以降は「設定」-「システム」-「デバイス情報」-「ビルド番号」を7回タップすると出現する)、そこから「Bluetoothオーディオコーデック」をタップすると、そのスマホがどのコーデックに対応しているかが分かる。スマホがaptX系コーデックやLDACなどに対応しているなら、対応のワイヤレスイヤホン&ヘッドホンを手に入れることでハイレゾ相当の高音質をワイヤレスで楽しめるようになる。

「バージョン」「プロファイル」「クラス」って何?

 本記事で解説している「コーデック」は、音声伝送の圧縮方式を示すが、もうひとつBluetooth対応製品の仕様でよく見かけるのが、「バージョン」と「プロファイル」だろう。

 「バージョン」は、Bluetooth規格の大元の仕様のことで、1999年のバージョン1から始まり、2004年にバージョン2.0、2009年にバージョン3.0と4.0が、2016年にバージョン5.0がリリースされた。最新版は2021年に発表されたバージョン5.3。通信方式に変更が加えられているが、基本的には複数の方式を同時に実装しているので、ユーザー的にはほぼ意識せずとも使用できるものと考えてよい。

 「プロファイル」はさまざまな種類のデバイスで使われるBluetoothの特性を管理するもので、オーディオ用としては「A2DP」が使われている。これもスマホとイヤホン、ヘッドホンを使う分には事実上全モデルがこのプロファイルに対応しているので、ユーザーは意識する必要がない。それ以外に電波強度を定めた「クラス」という概念もあるが、近距離で使う分にはこちらもあまり意識する必要性はない。

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