冒頭から登場の“アイツ”に興奮を隠しきれない!

 映画のオープニング。荒天のベーリング海で魚を収めた檻をドヒャアと飲み込むモササウルスが登場する。

 おお、お前、元気にしていたか。またでかくなったんじゃないか、と声をかけたくなる定番の名場面。本当は『ジュラシック・パークIII』(2001年)で登場する予定だった水棲爬虫類のチャンピオンだ。製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグらがもっとデカく、もっと強く、と注文をつけて喜んだ白亜紀後期のジョーズの親玉だが、そのときは登場させる余白がなく、映画デビューは14年ぶりのシリーズ再開作となった『ジュラシック・ワールド』(2015年)になった。

 文字通り海を根城にしていたヤクザの親分で、『ジュラシック・ワールド』では専用プールからジャンプしてサメを食ったり、突然プールから飛び出しティラノサウルス・レックスも手こずるハイブリッド恐竜インドミナス・レックスを水中にひきずりこんだりしていた。

 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018年)でも冒頭潜水艇をパックンチョ! 雷雨のなかヘリコプターの避難梯子につかまり、T・レックスから逃れたと思った男を待ってましたと丸呑みにする。ある意味、おいしい場面になると出てくる人気キャラクターなのだ。化石も世界各地で発見されている当時の海の覇者である。

 オープニングからモササウルスが期待通りの見せ場を披露する“ジュラシック・パーク・サーガ”の最新第6弾、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。前作『~炎の王国』で火山噴火に見舞われたイスラ・ヌブラル島から、恐竜たちが世界中に散らばって4年。彼らと人類のその後の運命を描く一作である。

 過去のシリーズは『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)のT・レックスのサンディエゴ上陸を除いて、舞台となるアミューズメント・パークが主舞台だったが、今回の物語は初めて世界各地に広がっている。

 太平洋岸北西部、テキサス州西部、ユタ州、地中海中央のマルタ島、北イタリアのドロミーティ山脈。各地でさまざまな冒険がくり広げられる。その景観、さまざまな背景のなかに響き渡る恐竜たちの咆哮がまずの見ものだといえるだろう。

サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・コールドブラム……懐かしのあの面々も集結

 オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、『~炎の王国』に登場した富豪ロックウッド卿の愛娘のクローンだった14歳の少女メイジー(イザベラ・サーモン)と山間の家でひっそりと暮らしているのだが、ヴェロキラプトルのブルーの子どもであるベータとメイジーが密猟者にさらわれたことから、恐竜の裏取引が行われているマルタ島にたどり着く。

『ジュラシック・ワールド』シリーズ1作目から登場しているブルーの横には、その子どもベータの姿が。ベータの小ささに、ブルーの子どもの頃を思い出してほっこりする人もいるのでは?

 『大脱走』のスティーヴ・マックィーンのようにバイクにまたがり、アトロキラプトル4匹に追われる猛烈なチェイスがまずの見せ場。石畳の街には高低差があり、ヴェロキラプトルをちょい大型にしたアトロキラプトルの爪が上から下から襲いかかる。

 迫力はあるけれど、これならボンド・カーと追手のチェイスと同じだな、と思うカットもある。でも、それも含めてこの躍動感はすごい。ゴースト、パンテーラ、タイガー、レッドと呼ばれる4頭の恐竜は、デジタル・エフェクトとアニマトロニクスを織り交ぜながら、縦横無尽に世界を駆け回っているのだ。

オーウェン(クリス・プラット)のバイクとアトロキラプトルが、地中海に浮かぶ美しい島で激しいチェイスを繰り広げる!

 撮影は『パール・ハーバー』、『アメイジング・スパイダーマン』、『ジュラシック・ワールド』のジョン・シュワルツマン。編集は『ゼロ・グラビティ』のマーク・サンガー。ついでに言えば音楽は『カールじいさんの空飛ぶ家』や『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、『バズ・ライトイヤー』、そして『ジュラシック・ワールド』トリロジーなど、近年売れ子のマイケル・ジアッキノ。もちろん遠くに響くテーマ曲はジョン・ウィリアムズで、これらを目に、耳にすると、『ジュラシック・パーク』(1993年)から30年、このサーガを追いかけてきた感慨が胸に迫る。

 興収はシリーズでどん尻だけれど、ぼくはジョー・ジョンストンが手がけた第3作の『ジュラシック・パークIII』も大好きなのだ。ユニバーサル映画のマークとアンブリン・エンターテイメントのロゴが、近づくT・レックスやスピノサウルスの地響きに揺れるオープニング・シーンのしゃれっ気。ウィリアム・H・メイシーとティア・レオーニという愛すべきB級夫婦のドタバタ。トランシーバーの呼び出し音の扱いや、吊り橋をゆっくりと歩いてくるプテラノドンという珍景もいい。

 これらを思い出すたびに、もういちどディスクをプレーヤーに載せたくなってしまうのだ。

 『~新たなる支配者』では、新登場の羽毛に覆われた肉食恐竜ピロラプトルとの戦いや、バイオシン社のCEOルイス・ドジスン(キャンベル・スコット)に引導を渡す毒吹き恐竜ディロフォサウルスの造形がいい。もちろん最大の陸上肉食恐竜として知られるギガノトサウルスとT・レックスの戦いも。

ギガノトサウルス(左) vs. T・レックス(右)の獰猛さは、やはりIMAXで観たい!

 それらの恐竜の合間を、クリス・プラットやブライス・ダラス・ハワード、サム・ニールやジェフ・ゴールドブラム、ローラ・ダーン、それにパイロット役のディワンダ・ワイズら新旧メンバーが息をひそめ、また反撃しながら逃げ回る。

 なかには多少苦しく思える筋書きもあるよ。無理くりのオールスター作品なのだから。でも、それでいいのだ。これで愛する“ジュラシック・パーク”は30年のフィナーレを迎えるのだから。

 ぼくももういちど映画館に観にいく。偶然ドイツにいる娘が夏休みで帰ってきたので。楽しみだ~、と騒いでいるので。グランドシネマサンシャイン池袋に行こうかな。IMAX 3Dで会いましょう。

エリー(左/ローラ・ダーン)とグラント(右/サム・ニール)の再会シーンに、『ジュラシック・パーク』シリーズファン歓喜!

『ジュラシック・パーク』&『ジュラシック・ワールド』のメンバーが一堂に会し、協力しあいながら状況を打開していく。ふたつのシリーズの融合は、まさに完結編にふさわさしいと言えるだろう

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

7月29日(金)新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋他全国ロードショー

監督:コリン・トレボロウ
脚本:エミリー・カーマイケル/コリン・トレボロウ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ/アレクサンドラ・ダービシャー/コリン・トレボロウ
出演:クリス・プラット/ブライス・ダラス・ハワード/ローラ・ダーン/ジェフ・ゴールドブラム/サム・ニール
原題:JURASSIC WORLD: DOMINION
2022年/アメリカ/2時間27分
配給:東宝東和
7月29日(金)全国超拡大ロードショー
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