去る7月22日(金)、シネマート新宿にて公開中の映画『さよなら、バンドアパート』の舞台挨拶が行なわれ、出演者の髙石あかり、上村侑、宮野ケイジ監督が登壇、撮影エピソードなどを語った。

 本作は、コロナ禍のもっと前、東日本大震災よりも前の大阪で、音楽の道に進みたいとささやかな夢を持っていた主人公・川嶋(清家ゆきち)が、ユリ(森田望智)との出逢いによって、ミュージシャンとしてプロデビュー、挫折を経て再生する様が描かれる。原作は、juJoeのボーカルとギターを担当する平井拓郎による同名小説。

 劇中の役柄の印象と異なる金髪姿で登場した髙石。MCが「まるでバンドマンのよう」と話すと会場から笑いが起き、和やかな雰囲気に。髙石が演じたのは主人公・川嶋(清家ゆきち)の中学時代の初恋の相手・美咲。「上村さん演じる中学生の川嶋に、歌の才能があるということを伝えて、肯定する役柄。川嶋の心の拠り所になる、すごくパワーのあるシーンを演じさせて頂きました」と振り返る。

 その中学生時代の川嶋を演じた上村は、「監督から、『中学時代のシーンは別の映画だと考えて演じてほしい』と言われたんです。なので台本に捉われずに、美咲にもまっすぐ、音楽にもまっすぐな、普通の中学生を意識して演じました。」と明かした。

 宮野監督が「おふたりに演じて頂いたのは、大人になってバンドマンとして活躍する川嶋の心の拠り所となる重要なシーン。中学生に見える俳優さんであれば誰でも良かったわけではなかったんです。川嶋の中にいつまでも残っている場面と言葉をしっかり担える二人に演じてもらって本当に良かったです」と満足そうにキャステングについて明かすと、ふたりから笑みがこぼれた。

 話題は撮影中のエピソードへ。自転車で二人乗りするシーンには苦労があったという。

 上村が「髙石さんと二人乗りをするシーンがあるんですけど、手元がブレブレで。写ってなくてよかったです」と明かすと、髙石も「横が田んぼだったんですけど、何度も落ちそうになって。焦りましたね(笑)」と答えた。

 ギターの演奏にも初挑戦したという上村。「撮影前の顔合わせの時に宮野監督から教えてもらいました。川嶋がバンドマンとして勇気を出して一歩を踏み出す演奏シーンになるように意識しました」と苦労を語ると、髙石も「本当にお上手で。もっと自信満々で良いのに」と熱くアピールした。

 また、宮野監督は「映画化するにあたって絞りこんだのですが、原作の小説では中学時代のエピソードが豊富。ぜひ会があれば中学時代を描いたスピンオフをやりたいです」と告白すると、会場からは拍手が。上村と髙石も驚きながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。

 なお、宮野監督は髙石の演じた美咲について「美咲の延長上にユリがいるという狙いで(美咲を)演じてもらった」とその設定について話し、「言い方を変えれば、ユリの中学生時代はこんな感じだったんだろうなって思いながら、(髙石の演技を)観ていた」という。そして、「だから、最後の草原のシーンでは、これはユリの言葉なのか、美咲の言葉なのかを分からないようにしたかったので、あえて顔を写さないようしたんです」と演出の意図を明かしていた。

映画『さよなら、バンドアパート』

シネマート新宿ほか全国順次公開中
配給・宣伝:MAP
配給協力:ミカタ・エンタテインメント
(C)2021「さよなら、バンドアパート」製作委員会