中央はプリメインアンプのエヌモード X-HA3 FT、その左はデジタルオーディオプレーヤーのアステルアンドケルン ACRO CA1000

Lumina I
色づけやピーク感がなく好バランス。CP が高く、初めてのスピーカーにも最適

──ここでは、イタリアの老舗ブランドであるソナス・ファ ベールのスピーカーを2モデル聴いていただきました。ひとつは同ブランドのエントリーモデル、Lumina I です。 ハイエンドスピーカーを数多く送り出しているソナス・ファベールが、比較的手にしやすい価格帯で展開している Lumina シリーズの末弟にあたる小型2ウェイモデルで、 同ブランドのスピーカーとして価格的にはかなりリーズナブルな製品になっています。

小岩井ことり(以下・小岩井)  エントリーモデルといっても、仕上げがとても上質ですね。キャビネットの側面と天面にレザーが張られたりしていて。木材のキャビネットの響きをレザーでチューニングしているのかな。これで10万円前後だったら、すごくコスパが高いと思います。

──プリメインアンプは最初に取り上げたエヌモード X-PM3 FT、再生機器は引き続きアステルアンドケルンのデジタルオーディオプレーヤー ACRO CA1000 で、ドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」と小岩井さんの「Sound Letter」を聴いてみましたが、いかがでしたか?

小岩井 Lumina I、いい音でした! この本(DigiFi『小岩井ことりと楽しむオーディオの世界』)を手に取ってくださる方は、どちらかというとポータブル系のオーディオ ファンが多いと思うんです。「ヘッドホンやイヤホンはいくつか持ってるけど、まだちゃんとしたスピーカーは持ってない」という方がけっこういらっしゃるのかなと。そういう方には自信を持っておすすめできるスピーカーです。変な色づけやピーク感がなくて、低音から高音までとてもバランスが整っていると思います。どの帯域にも気になるところがなくて、気持ちよく聴けるスピーカーですね。今日は一般的な日本の住宅よりも少し天井が高めのハウス・スタジオで聴いたんですけど、音の反射や残響も特に気にならなかったです。

 

ソナス・ファベール
Lumina I
¥108,000(ペア・税別)
●型式:2 ウェイ 2 スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:29mm ドーム型トゥイーター、120mm コーン型ウーファー
●出力音圧レベル:84dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2kHz
●インピーダンス:4 Ω
●寸法/重量:W148×H280×D220mm / 4.5kg
●仕上げ:ウォールナット、ウェンゲ、ピアノブラック
■問合せ先:(株)ノア ☎ 03(6902)0941

Profile
工芸品のように美しい佇まいと圧倒的なコストパフォーマンスの高さで日本でもベストセラーと なった、同社 Lumina シリーズのエントリーモデル。Sonetto シリーズのノウハウを凝縮する 形で開発されたシリーズというだけあり、一般的に「エントリーモデル」と呼ばれるスピーカー とは一線を画す上質さとパフォーマンスを兼ね備えている。

 

 

Sonetto I
分離感が向上して一音ごとが明瞭に。スタンドの有無でも聴き比べてほしい

──もうひとつ、同じソナス・ファベールの Sonetto I も聴いていただきました。こちらは Lumina シリーズより上級ラインで、価格も10万円ほどアップします。とはいえ、数ある同ブランドのスピーカーのなかでは、やはりこの Sonetto I もコストパフォーマンスがひじょうに高いと評判のモデルになっています。

小岩井 なるほど。こちらも仕上げが本当にきれいですね。 キャビネットを上から見ると、なんだかヴァイオリンみたい な曲線を描いていて、スピーカーというより楽器のようです。 きっと音質を追求した結果辿り着いた形なんでしょうね。

──これはソナス・ファベールが「リュート・シェイプ」 と呼んでいる形式で、キャビネット内部に平行面を作らないことで定在波の発生を抑えるという意図があります。まずは Lumina I と同じように、テーブルの上に設置して聴いてみました。

小岩井 Lumina I よりもキャビネットやユニットの口径が大きくなったこともあって、よりスピーカーで音を聴いて いるという体感度が上がりました。各パートの分離感も増して、ひとつひとつの音がよりはっきりと聞こえるように なったと思います。

──まずはテーブル上に置いて聴いて、そのあと Sonetto I 専用のスピーカースタンドに設置し直して聴き比べたので すが、スタンドに置いたほうがやはり音の印象はよくなり ましたね。

小岩井 そうですね。すごくよくなりました。テーブルに置いて聴いたときは、低音が少し滲んでいる感じがしたん です。いっぽうでスタンドに設置し直したら、雑味が取れ てすっきりした音になり、解像度もさらに上がったように 感じました。さっき「Sound Letter」のヴォーカルで気になったピーク感も和らいで、とても自然に伸びるようになりました。スタンド設置を前提にチューニングされた音なのか なと思います。見た目にもスタンドに置いたほうがカッコいいので、もしこのスピーカーが気になった方は、まずは スタンドの有無で聴き比べてみてほしいです。

 

ソナス・ファベール
Sonetto I
¥208,000(ペア・税別)
●型式:2 ウェイ 2 スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:29mm ドーム型トゥイーター、150mm コーン型ウーファー
●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:2.5kHz
●インピーダンス:4 Ω
●寸法/重量:W219×H359×D315mm / 7kg
●仕上げ:ウォールナット、ピアノブラック、マットホワイト
●専用スタンド:Stand Sonetto ¥66,000(ペア)(税別)

Profile
同社の名だたるスピーカーの伝統を受け継いだ Sonetto シリーズのエントリーモデル。リュート型のキャビネットや天面に張られた手縫いステッチ入りのレザーなど、外観における「ソナス・ファベールらしさ」も上位モデルからしっかり継承している。ボトム・バスレフ構造を採用し、背圧は正面下部のポートから放射される。

 

 

3つのシステムを聴いた感想。小岩井さんが魅力を感じた製品は?

──「システム 2」のディナウディオ Emit 20 と「システ ム 3」のソナス・ファベール Lumina I と Sonetto I。今回は3組のスピーカーを聴いていただきましたが、いかがで したか?

小岩井 私が 3 組のスピーカーのなかで特にいいなと思っ たのは Lumina I です。もちろん Emit 20 と Sonetto I もよかったけれど、Lumina I はリファレンス的にも聴ける色 づけのない音で、幅広い人におすすめできるスピーカーだ と思います。これを買ったら一生楽しく使い続けられるん じゃないかなと感じました。オーディオ機器って、グレー ドが高くなるほどその差は小さくなりますよね。たとえば Sonetto I の価格は Lumina I の倍だけど、音のよさも 2 倍 というわけじゃない。でも、さっきもお話ししたように、 容積が大きくなっているぶん、低域の量感や体感度は確実 に上がります。どちらを選ぶかは音の好みや部屋のサイズ、 再生音量によると思いますけど、どのスピーカーも価格を 考えれば絶対損のないスピーカーです。やっぱり、まずは スピーカーを大きな音で鳴らせる家を準備しないといけな いですね(笑)。

聞き手・構成:伊藤隆剛

 

ここで聴いた曲

『ナイトフライ』から「I.G.Y.」 (44.1kHz/16 ビット PCM)
ドナルド・フェイゲン
(ワーナー)

「Sound Letter Take 5」 (11.2MHz/1 ビット DSD)
小岩井ことり with Nicogi +
(ステレオサウンド)

 

 

本記事の掲載はDigiFi『小岩井ことりと楽しむオーディオの世界』