IN50 Signature+Emit 20
音場感豊かで温かみのある音、ゆったりと音楽に浸れる

──ここではプリメインアンプ+スピーカーの組合せを用意しました。プリメインアンプはアトールのIN50 Signature、スピーカーはディナウディオのEmit 20です。アトールはフランスのオーディオ専業ブランドで、アンプやプレーヤー、D/Aコンバーターなどを製造しています。特にプリメインアンプは、エントリーラインであるこの50シリーズのほか、100/200/300シリーズなど、ラインナップが豊富です。このIN50 Signatureはもともとアンプメーカーとしてスタートした同社のノウハウを結集したアナログアンプになります。別売のボードを増設することで、PCM信号やDSD信号のUSB入力にも対応します。

小岩井ことり(以下・小岩井) 先のエヌモードX-PM3 FTはハーフサイズのコンパクトなアンプでしたが、こちらはフルサイズで本格的なオーディオ機器の雰囲気がありますね。いよいよ『DigiFi』さんらしい感じのシステムになってきました(笑)。

──いっぽう、ディナウディオはデンマークの老舗スピーカーブランドで、Bluetoothスピーカーやホームシアター用の埋め込みスピーカー、フロアースタンド型のハイエンドスピーカーまで、幅広いラインナップを展開しています。Emitシリーズは同ブランドのパッシヴスピーカーのなかではベーシックラインにあたり、2モデルあるブックシェルフ型の大きいほうのサイズがこのEmit 20です。最初に小岩井さんが試聴時によく聴かれるというドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」を再生してみましたが、印象はいかがでしたか?

小岩井 エヌモードX-PM3 FTと組み合せて聴いたソナス・ファベールのLumina Iのウーファーは120mm径で、こちらのEmit 20は180mm径。Lumina Iの印象については後のページで詳しくお話ししますが、やっぱり口径が大きいぶんだけ低域の体感要素が増して、迫力がありますね。身体で感じられる振動が、シンプルに大きくなったと思います。音量をある程度上げて再生すると、部屋の隅々まで音源の空気感が浸透していく様子が伝わってきました。このアトールのプリメインアンプとのマッチングもよかったと思います。余裕をもってスピーカーを鳴らしているという感じがあったし、どこか温かさを感じる音でした。

──実は、ディナウディオを取り扱う輸入代理店が「Emit 20との組合せに最適」と推奨するプリメインアンプのひとつが、アトールIN50 Signatureなんです。それで今回もこの組合せで小岩井さんに聴いていただくことにしたのですが、なかなかいい感じでしたね。

小岩井 はい。音場感が豊かで、ゆったりと音楽に浸ることができました。

 

スピーカーシステム
ディナウディオ Emit 20
¥170,000(ペア・税別)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:28mmドーム型トゥイーター
        180mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●クロスオーバー周波数:3.8kHz
●インピーダンス:6Ω
●寸法/重量:W205×H370×D325mm/10.3kg
●備考:写真はサテンブラック、他にサテンホワイト、ウォールナット仕上げあり

Profile
1977年にデンマークで設立されたディナウディオのスピーカーのなかでも、エントリーラインで手に取りやすいEmitシリーズ。2021年にシリーズの全製品がリファインされたばかりだ。上位シリーズと同様、ミッドレンジ/ウーファーには独自の複合素材の振動板を採用。同シリーズで5.1chへの展開も可能だ。

 

プリメインアンプ
アトール IN50 Signature
¥125,000(税別)
●接続端子:アナログ音声入力5系統(RCA)、アナログ音声出力1系統(RCA)、バイパス1系統(RCA)、プリ出力2系統(RCA)、ヘッドホン出力×1系統(6.35mmステレオジャック)
●出力:50W×2(8Ω)/70W×2(4Ω)
●寸法/質量:W440×H90×D300mm /7kg
●備考:オプションでデジタルボード(USB Type-B入力×1、同軸入力×2、光入力×2、Bluetooth入力×1)およびフォノボード(MM/MC対応)あり。写真はシルバー、他にブラック仕上げあり
■問合せ先:スピーカーともにDYNAUDIO JAPAN(株) ☎ 03(5542)3545

Profile
1997年にフランスで設立されたアトール。このIN50 Signatureは、170VAのトロイダルトランスを搭載する同社エントリーラインのプリメインアンプ。上位モデルのIN 100 Signatureのエッセンスを引き継ぎながら、必要に応じて仕様を簡略化することでリーズナブルな価格の製品にまとめ上げている。

 

 

Emit 20
弦楽器を気持ちよく聴かせる豊かな低音、日本の住環境にマッチしたサイズ感も

──続いて、アンプを替えることによってスピーカーの音がどのように変るかを確認するため、IN50 SignatureをX-PM3FTに替えて聴いてみました。どんなふうに変りましたか?

小岩井 最初のシステムでX-PM3 FTの音について「高域が気持ちよく伸びていて、低域は比較的すっきりと聴かせる」と言いましたが、その個性はEmit 20と組み合せたときにも色濃く反映されていると思いました。比べて聴けば、パワー感はIN50 Signatureのほうがあるけれど、X-PM3 FTらしいすっきり感もやっぱり魅力的ですね。「Sound Letter」のギターのニュアンスがとても細やかで、澄んだ空気感もよく伝わってきます。スピーカーについては、Emit 20はLumina Iよりも低音の量感が豊かなので、たとえば弦楽器でもチェロやコントラバスの低い音を聴くと気持ちがいいかも、と思いました。

──ブックシェルフ型のスピーカーですが、とても豊かな低音を聴かせてくれるスピーカーですね。そういう意味ではIN50 Signatureとの組合せのほうがこのスピーカーの特性を引き出しているかもしれませんが、X-PM3 FTとの組合せで聴けるすっきり感も好ましい。

小岩井 そう思います。フロアースタンド型のスピーカーだと「うちの部屋で鳴らすのはキツいかな」と思う方がけっこう多いと思うんです。実際、私も「大きなスピーカーを置くなら家を買わないとなぁ」と思ったりしますし(笑)。住環境的に、日本ではそう気軽には置けないですよね。でも、このぐらいのサイズのブックシェルフ型なら一般的な日本の住環境でも鳴らしやすいし、いい感じで鳴ってくれると思います。いまの私の部屋でも、頑張れば置けるかも。

聞き手・構成:伊藤隆剛

 

ここで聴いた曲

『ナイトフライ』から「I.G.Y.」(44.1kHz/16ビット PCM)
ドナルド・フェイゲン
(ワーナー)

「Sound Letter Take 5」(11.2MHz/1ビット DSD)
小岩井ことり with Nicogi+
(ステレオサウンド)

 

 

本記事の掲載はDigiFi『小岩井ことりと楽しむオーディオの世界』