Amazon(アマゾン)から、6月末に最新世代の「Fire 7 タブレット」(¥6,980、税込)が発売された。

 型番の通り7インチディスプレイ(水平1024×垂直600画素)を搭載し、さらに2GバイトのRAMと2.0GHzのクワッドコアプロセッサーも内蔵することで、前世代機に比べて処理速度を最大30%高速化している。

 また1回の充電での持続時間も従来機から40%増え、最大10時間の利用が可能。さらに充電ケーブルにUSB Type-C(2.0)を採用することで、ポータブル用途で一層使いやすくなっている。

オプションの純正カバーを取り付けた様子(左)。カバーを開くと右のように7インチ画面が現れる

 アマゾンではkindleやdマガジンなどの電子書籍リーダーや、Prime Video、Netflix、Disney+といった動画鑑賞で活用してもらいたいと考えているようで、16Gバイトの内蔵ストレージに加えて、microSDカード(別売)をセットすれば最大1Tバイトまで容量が拡張できるようになっている。

 今回、Fire 7タブレットの取材機を借用できたので、日常使いのお供として試してみた。

 本体サイズはW181×H118×D9.7mmで、重さは282g。なお今回はFire 7用の純正カバー(¥2,980、税込)も一緒に借用している。こちらは表面がファブリック仕上げで、スタンドとしても使用可能。重さ135.6gなので、装着して持ち歩く場合は合計417.6gということになる。

 開梱して電源を入れると、ネットワークへの接続が求められる(Fire7は通信機能を内蔵していない)。自宅の無線LANに接続し、アマゾンのアカウントとパスワードを入力すれば、履歴を参照して他のデバイスで購入済みの電子書籍やアマゾンサービスの設定も自動的に行ってくれた。

音楽ソースを楽しむのなら、有線/無線のイヤホンはぜひ使いたいところ。Bluetoothイヤホンとのペアリングも簡単にできる

 まずAmazon Musicアプリを起動し、音楽を聴いてみる。ちなみにAmazon Music HDなどの契約をしていれば、空間オーディオの再生も可能だ。その場合は、アプリのメイン画面右上から「設定」を選び、「ドルビーアトモス/360 Reality Audio」をオンにしておけばいい。

 ……のだけれど、Fire 7タブレットの内蔵スピーカーはモノーラルで、音楽再生用としては正直厳しい。とはいえ、先述のようにポータブル用途がメインと思われるので、ほとんどの場合は有線イヤホン(3.5mmミニジャックを搭載)、またはBluetoothイヤホンと組み合わせて使うものと思われる。

 そこで有線イヤホンのfinal「B1」をつないで、Amazon Musicからビートルズ『Get Back(Rooftop Performance)』の「Get Back(Take1)」と、『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラからタイトル曲を再生する。サウンドは全体にすっきりしたサウンドで、低域の強調感はない。B1の音作りという点もあるだろうが、ヴォーカルが聴き取りやすい中域重視の方向性だ。

 ちなみにこの2曲はハイレゾでも配信されているが、Fire 7のDAC等の仕様は公表されていない。これまでの同社製タブレットと同とであれば、48kHz/24ビットまでの対応と思われるが、詳細は未確認だ。

空間オーディオで配信されているコンテンツを再生する場合は、本体の「設定」メニューを開いて、「ドルビーアトモス/360 reality Audio」の項目をオンにしておく

 続いてBluetoothイヤホンのNoble Audio「FALCON PRO」とペアリングし、同じ楽曲を再生してみる。コーデックは非公開だが、おそらくAACでつながっているのではないだろうか(Fire HD 8等もAAC対応だったので)。

 サウンドはB1より低域の量感が増す方向で、でもヴォーカルはクリアーに再現される。ロックとしてのバランスがいい。通勤時の電車やバスの中でやや大きめのボリュウム(本体のバーで7割を超えたあたり)でもうるさい感じにはならない。普段、スマホでAmazon Musicを楽しんでいる方なら、Fire 7に交換しても不満はないだろう。

 またこのコンテンツは空間オーディオ(ドルビーアトモス)でも配信されている。再生画面左下の「ULTRA HD」「ATMOS」マークをタップすると「オーディオ品質」が表示され、そこでドルビーアトモスでの再生とステレオ再生が切り替え可能だ。

 実際にこのふたつを聴き比べてみたが、ドルビーアトモスにすると頭の両サイドまで空間が広がったような印象になる。反面センター定位がやや曖昧になるようで、ヴォーカルの迫力、押し出し感がなくなってしまう。このあたりは曲の種類に応じて使い分けてみるといいかもしれない。

本体正面右サイドに操作ボタンや接続端子が並ぶ。写真左からメインスイッチ、ボリュウム、マイク、USB Type-C、3.5mmイヤホンジャック

 次にPrime Videoのアプリを起動し、映画コンテンツを見てみることに。お馴染み『トップガン』『ブルース・ブラザーズ』を再生したが、画面サイズ的には寂しさを禁じ得ない。7インチというサイズでは、細部まで作り込んだ映像を充分に楽しむというわけにはいかないということだろう。

 ただし、(個人的な感想だけど)テレビドラマやアニメならそこまで神経質にならなくてもいいので、7インチ画面でもそれなりに楽しめた。Fire 7で内容をチェックし、気にいったコンテンツはFire TV Stickを使って自宅のテレビで見るという使い方もよさそうだ。

 Prime Videoの音はBluetoothイヤホンでチェックしたが、音楽と同様に低域をおおらかに再現する、聴きやすいサウンドだった。リップシンクはわずかにずれているが、音楽作品等でなければほぼ気にならない程度に収まっている。

 最後に、kindle機能を使って電子書籍を試してみた。最近は老眼が進んで、暗い環境では文庫本の文字が読みづらい……のだが、電子書籍なら文字サイズもある程度調整できるし、画面が光ってくれるので周囲の明るさも気にしなくていい。これは有り難い。

Fire HD 8 Plusタブレット(写真右)と比べてみた。画面サイズ1インチの差だが、幅・高さとも20mmほど小さくなり、重さも73g軽量化されている

 十数年ぶりに『アルジャーノンに花束を』を読み返してみたが、冒頭のひらがなで記載された本文からうるっとくる。電車等では電灯の映り込みがちょっと気になったが、本体の向きや座る場所を工夫すれば解消できるはずだ。ここのところは上のような理由から通勤で本を読む時間が減っていたのだが、Fire 7があればまた読書習慣を取り戻せるかもしれない、と思った次第だ。

 最近は音楽再生も動画鑑賞も情報収集もすべてスマホという方も多いだろう。確かにそれは便利ではあるが、画面サイズによって文字が読みにくいとか、バッテリーの持ちが心配といった問題もある。Fire 7をサブデバイスとして使って、音楽再生や電子書籍といった機能を切り分けてみるというのもひとつの方法ではないだろうか。

 Fire 7のレスポンスは決して速くはないが、音楽や動画再生、書籍表示といった目的で使う分にはストレスはないと思う。とはいえ無線LANの環境次第では楽曲の読み込みがストップするケースもあったので、そういった点が気になる方はあらかじめ楽曲をダウンロードしておいた方がいいかもしれない。(取材・文:泉 哲也)