横幅215㎜のコンパクトなボディにUSB DAC機能も盛り込んだティアック製プリメインアンプの最新モデル。パソコン/サーバーなどとのUSB接続時にはDSD最大11.2MHz、PCM最大192kHz/32ビットに対応しているのが従来機から進化したポイントだ。

INTEGRATED AMPLIFIER
TEAC
AI-301DA-Z
オープン価格(実勢価格5万2,800円前後)

●最大出力:40W+40W(4Ω)、20W+20W(8Ω)
●接続端子:デジタル音声入力3系統(光、同軸、USBタイプB)、アナログ音声入力2系統(RCA×2)、ヘッドホン出力1系統(6.3mm)、サブウーファー用プリアウト1系統(RCA)
●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜192kHz/32ビット(PCM)、〜11.2MHz(DSD) ●対応Bluetoothコーデック:SBC、AAC、aptX
●カラー:シルバー、ブラック
●寸法/質量:W215×H61×D254mm/2.1kg
●問合せ先:ティアック(株)AVお客様相談室 TEL 0570(000)701

 デスクトップでパソコンなどと接続してコンパクトに本格的なオーディオ再生が楽しめることが魅力で、置き場所の自由度の高いコンパクトサイズもあって、魅力は大きい。しかも、光/同軸デジタル入力も備えており、CDプレーヤーなどのオーディオ機器と接続できるほか、薄型テレビとも組み合わせて使うこともできる。光デジタル音声出力で接続すれば、薄型テレビの電源に連動。また学習リモコン機能を備えており、テレビのリモコンを使ってアンプの音量調整ができるなど、使い勝手にも優れる。

 さらにブルートゥースレシーバー機能を持つので、スマホなどの音楽もワイヤレスで再生が可能。コーデックもSBC、AACに加えてaptXにも対応しており、ワイヤレスでもより高音質で楽しめる。このような幅広い機能性を持ち、プライベートでの使用はもちろん、リビングスペースに置くなど、さまざまな使い方ができるモデルだ。

↑3系統のデジタル入力と2系統のアナログ入力を備え、PCやテレビ、CDプレーヤーと接続できる。特にリビングやデスクトップオーディオを想定した製品だ

 まずはアナログ入力でCD再生を行なった。プレーヤーはデノンのDCD-SX1リミテッドを使っている。「CARAVAN/情家みえ」では、ベースやドラムの分厚い音もリズム感豊かに力強く鳴る。落ち着いた感触の音で出音の勢いなどはややゆったりとしているし、ヴォーカルを含めて中高域もしっとりとした上品さがある。実売で5万円ほどのアンプとは思えない音だ。

 パワーアンプはiCEpower社のD級アンプで最大出力は40W+40W(4Ω)。それでもリファレンスのモニターオーディオPL300Ⅱをよくぞここまでと感心するほどきちんと鳴らしている。このあたりはこれまでのモデルからの技術の蓄積を感じる。もちろん、オーケストラなどのスケールの雄大さはいくぶんコンパクトになるし、音量を上げていくとパワー不足も感じるが、個室やリビングなどの家庭環境で使うならば気にならないだろう。

↑パワーアンプ部はデンマークのICEパワーのモジュールを用いる。入力信号の忠実な増幅を目指したHCOM(Hybrid feedback Controlled Oscillating Modulator)方式、MECC(Multivariable Enhanced Cascade Control)フィードバックループなど、ティアックのハーフサイズプリメインアンプで実績を積んだ機能を踏襲した。DACにはバーブラウンPCM1795を搭載し、PCM192/32ビット、DSD11.2MHzの音源に対応している

ハイレゾ音源もAVも
価格以上のサウンドを実感

 続いて、ノートパソコン(MacBook Air)と組み合わせてUSB接続で聴いた。再生ソフトはAudirvana Studioを使用。試聴では一般的なアシンクロナス伝送としているが、このほかに4種類の転送モードを選べるUSB伝送技術「Bulk Pet」にも対応している。ヤニック・ネゼ=セガン/ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の『チャイコフスキー:交響曲第6番』を聴くと、中高域は鮮やかかつ軽やかでよく弾み、低域は逆にどっしりと安定した鳴り方で、メリハリの聴いた音になる。テンポ感がよく、小気味よい印象で、個々の楽器の音も鮮やか。音場の広がりやスケール感はややコンパクトに感じるが、ひとつひとつの音が生き生きと鳴っている感じが魅力だ。

 DSD音源は、11.2MHz収録の『驚異のスーパーガムラン』から「ヤマサリ」を聴いた。さまざまな種類の打楽器をきわめて速いリズムで打ち鳴らすガムランの独特な演奏を鮮明な音で楽しめた。金属の打楽器の長い余韻も美しく、空間に広がっていく様子もしっかりと描かれる。また、個々の楽器の粒立ちのよさとそれらの響きが調和していく様子もていねいで、DSD11.2MHz音源の持つ生音に迫るような鮮度の高さをしっかりと再現できていた。

 光デジタル接続による薄型テレビとの組合せでは、はっきりと歯切れよい音で聴きやすい音を楽しめた。『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』では、悪魔払いの激しいセリフのやりとりも鮮明で力強いし、ポルターガイスト現象での部屋の家具などが飛び回る様子も迫力は充分。どっしりとした低音は映画と相性がよく、アクション映画なども存分に楽しめるはず。もちろん、大音量を求めるとさすがに力不足を感じるが、一般的な家庭の使用では大きな不満にはないはず。また、本機にはCCFL方式採用の高音質なヘッドホンアンプも備えるので、深夜のリスニングでも鮮度の高い音を楽しめる。

 人気の高いコンパクトなオーディオ機器は音質を求めると物足りなさを感じるものも少なくないが、本機ならばサイズを超えた実力の高さを満喫できるはずだ。

↑付属のリモコンで入力切り替えなどを行なう。赤外線学習機能でテレビのリモコンに連動して電源オンオフとボリュウム操作を学習させることができ、テレビ連携に便利だ

【関連記事】

【本記事の掲載号は HiVi5月号】