イヤホン、プレーヤーなどで次々と意欲的な製品を発売しているフィーオから、シングルドライバーモデルの最上位機として、FD7が登場した。ドライバーには口径12㎜のピュア・ベリリウム振動板を搭載。異なる帯域間の時間遅延の解消のためのディフューザーや、セミオープン型の構造なども採用している。さらに口径の異なる3種の音道管が交換可能で音の違いを楽しめるほか、イヤーチップにはSpinFit製をはじめとした6種がサイズ別に用意されている。そして、224本の高純度単結晶純銀素材を芯線としたケーブルは2.5㎜/4.4㎜バランス、3.5㎜アンバランスのプラグに交換可能と、きわめて充実したカスタマイズ性を備えている。

EARPHONE
FiiO
FD7
オープン価格(実勢価格7万9,200円前後)

●使用ユニット:12mm径ダイナミック型
●再生周波数帯域:10Hz~40kHz ●インピーダンス:50Ω
●寸法/質量:ケーブル長120mm/11g(片側。ケーブル除く)
●問合せ先:(株)エミライ
 https://www.fiio.jp/contact/contact-before/

↑内径の違う3種類の音導管を備えたことが特徴的。大きい径から順に、サウンドステージ重視、バランスのよい標準タイプ、低域重視といった違いがある。ケーブルは2.5mm/3.5mm/4.4mmのプラグが交換できる仕様で、さまざまなイヤホンジャックに対応する

 まずは音道管を標準的なバランス重視型を使い、2.5㎜バランス接続で手持ちのアステル&ケルンSP1000と接続して聴いた。「チャイコフスキー:交響曲第6番」を聴くと、音の広がりは実に開放的で、頭内定位ではあるのだが頭の中だけで響くような感じがなく、自然にオーケストラのステージが思い浮かぶ。個々の音の粒立ちもよく、目の覚めるような鮮やかさだ。内径が一番太い空間重視型の音道管では、空間の広がりがさらに大きくなり、ヌケのよい空間感が心地よい。逆に低音型だと低音はややタイトだがより力強くダイナミックな感触になる。音道管を標準のバランス型に戻してAimerを聴くと、激しいピアノや終始ハイテンポで叩きまくるドラムスなど、音数がたっぷりでごちゃっとした印象になりがちな演奏を実に粒立ちよく再現。それでいて個々のプレイの力の入り方や、キレ味とスピード感たっぷりのドラムスのエネルギー感も損なわれない。高性能というだけでなく、実に楽しい音だ。

 さらにヴォーカル重視型のイヤーチップを試してみたが、たしかに声のエネルギー感や密度感が高まる。バランスはややドンシャリ気味になるが、ヴォーカルがしっかりと前に出る鳴り方なので不自然さはない。素の実力はかなり高く、それを好みの音にチューニングできるのが実に面白い。ハイファイ偏重になりがちな高級モデルの中で、性能の高さだけでなく楽しさをも感じさせてくれるユニークな製品だ。

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【本記事の掲載号は HiVi4月号】