あるはずのない駅――きさらぎ駅――に迷い込んだ女性の投稿をきっかけに、SNSを通して広く流布した都市伝説「きさらぎ駅」。そのストーリーに着想を得て製作されたホラー作、その名も『きさらぎ駅』が、6月3日より公開となる。

 メガホンを執るのは、数々の名作ホラー作を手掛けてきた永江二朗監督。元ネタを大胆にアレンジし、そこに現代風なテイストを振りかけながらも、緩急併せ持った新感覚のホラー作にまとめている。

 そして、主演を務めるのは、本作が映画初主演となる恒松祐里。多くの話題作に出演し、印象的な演技を見せてきた彼女が、初の主演、そしてホラーというジャンルに挑戦した。ここではその恒松に、公開に先駆けて出演の感想を聞いた。

――出演おめでとうございます。まずは、出演が決まった時のことを教えてください。
 ありがとうございます。私の密かな目標を達成できる時期に主演が決まって、とても嬉しかったです。

――密かな目標とは?
 22歳の内に主演をするというものなんですけど、その22は私のラッキーナンバーなんです。まあ、猫が好きなので猫の日の2月22日とか、中学校の時の出席番号が22 番だったということからきているんですけど、漠然と22歳にいいことが起こりそうだなと思って、その目標を立てたんです。そうしたら、それが叶いました(笑)!

――映画の内容(ホラー作)を知った時は?
 この作品に関わるまで、きさらぎ駅のことを知らなかったので、“えっ、きさらぎ駅って何?”という感じでした。実は私、ホラーはちょっと苦手でして……、台本を読むのもすごく怖かったんです。ただ、読んでいくうちに、たくさんの伏線が回収されていく様子が楽しくて、爽快感溢れる面白いホラー作品だと感じて、読み終わった時には“楽しかった!”となりました。

――ホラー作でありがちな、現場での怖い体験は?
 おかげさまで、遭いませんでした。

――演じられた堤春奈の印象は?
 意思が強くて、前に進む力の大きく、しっかりした女の子だと感じました。とは言っても、演じる上ではキャラの個性を引き立てるのではなく、割と身近にいそうな女の子――普通の女の子、普通の女子大生――という雰囲気を重視してお芝居しました。そうすることで、映画を観てくださるお客さんに、もしかしたら(この事件が)自分に起こりえるかもしれないとか、彼女が最後にする選択に、共感を持ってもらえるかもしれないと思って、そうしました。

 後半になって、物語が動き出していくと、どんどん日常会話的なお芝居が増えていくので、(私の演じた)春奈がどういう子なのかということが、皆さんにもより見えてくると思います。注目してください。

――恒松さんの普段の役作りの方法は?
 演じる役の人生――生まれた時から撮影に至るまでの期間――に何があったのか、何を考えてきたのか、好きなもの、嫌いなものなどなどを、役になりきって書いていくんです。普段は、そういう作業をしてから、撮影に臨んでいます。

――今回演じた春奈について、ご自身に近いとか遠いなどの感想はありましたか?
 近くもないし、遠くもないという、微妙な距離感でしたね(笑)。ただし、興味があることに対してまっすぐに進んでいくところは、似ているのかなと思いました。反面、彼女は怖い話に興味がありますけど、私は苦手なので、そこは大きな違いです。

――序盤で、きさらぎ駅を経験した葉山純子(佐藤江梨子)の家へ取材に行きます。現場はいかがでした?
 あの部屋のセットは、強く印象に残っていますね。小鳥の巣箱みたいなものがあったりして、とにかくすごく不気味で、私も撮影とはいえびっくりしていました。それから、佐藤さんの登場の仕方もすごく不穏な雰囲気が充満していて、やっぱりホラー作品なんだなって、現場では思っていました。

――そんな不気味な状況の中で、きさらぎ駅について取材を進めます。その話に、そんなに強い興味があった、と。
 葉山(佐藤)さんとお話をしていく中で、もしかしたらきさらぎ駅に行けるかもしれない! っていう手がかりを掴むんです。恐らく多くの人が、世界中で自分だけがこの謎に気づいてしまった! という時って、試してみたくなる傾向があると思うんです。簡単なことでもーー例えば、食べ物の組み合わせで言えば、これとこれが抜群にいいって分かったら、人に教えたくなったり、あるいは自分でチャレンジしてみたくなったりすると思いませんか。そういう感覚と、彼女の持つきさらぎ駅への強い好奇心が作用して……という展開になったのだと感じています。

――そのおかげで、春奈の運命は大きく変化していきますが、そうした状況の中でも、コミカルなシーンがありました。
 監督は常々、緊張と笑いは紙一重と仰っていて、中盤からは緊迫感のあるシーンが続いていたこともあって、ここでちょっと笑いが入ってもいいよね、という監督のこだわりなんです。そこに少し笑える要素があることで、最後によりズドンとくる展開になったのかなと思います。

 加えて、永江監督は“ホラー映画は数学だ”とも仰っていて、振り返るシーンの撮影では、そのタイミングを1秒遅らせてとか、0.5秒早めてというように、細かい指示をされていました。本当に監督は、人を驚かせるタイミングを体で会得しているようで、ホラー感を増す技術は身に付いたかなと感じています。

――本作では、一人称視点の映像=FPSの撮影手法が採用されています。撮影はどのように行なわれたのでしょう。
 私はその現場にはいなかったので、聞いた話になりますが、専門のスタッフ(カメラマン)さんがいて、彼女の頭にカメラを装着して、その彼女が段取りに合わせた動き(=芝居)をしながらワンカットで撮影したということです。綿密にリハをして、タイミングを計りながらの撮影になっていたそうで、本当に大変だろうなって感じました。

――ちなみに、今回は有名な都市伝説を映画化していますが、恒松さんの記憶に残っているものはありますか?
 怖いものが苦手なので、なるべく頭には入れないようにしているんです。1回、頭の片隅に残ってしまうと、もう、夜道が歩けなくなってしまいますから。だから、いいことしか聞かないようにしています(笑)。

――「きさらぎ駅」に出演して、多少は怖いものへの耐性は付きましたか?**
 現場では、幸いにも怖い体験はありませんでしたし、叫ぶお芝居とかは、なかなか経験できるものではありませんから、逆に楽しく過ごせました。

――本作の見どころを紹介いただくと。
 やはり、FPSのシーンですよ。観てくださる方が、実際にきさらぎ駅の世界に入り込んでいる感覚になれると思いますし、VRゲームの要領で、一緒に攻略している雰囲気が味わえるはずです。この先どうしようって、自分の頭で考えていける、まさに体験するホラー作品になりました。楽しんでください。

――最後に、今後の目標があれば教えてください。
 大きなところでは、昔から海外ドラマが好きで、海外ドラマを見て育ってきたので、いつか海外ドラマに出ることが目標です。

――具体的には?
 犯罪捜査ものをよく見ていたので、そのジャンルのドラマに出たいですね。役柄としては、実際に犯人逮捕に向かうのにも興味はありますけど、どちらかと言えば、科学の力を使って犯人を特定したり、手口を明らかにする、ちょっとヲタク気質の技術官を演じてみたいです。頑張ります。

映画『きさらぎ駅』

6月3日(金)より全国公開

<Story>
繰り返される悲劇――この悪夢から抜け出すことはできるのか?
大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。

ようやく純子への連絡先を知り、数ヵ月にわたりメールでやり取りした結果、春奈は遂に純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。春奈を出迎えた純子はどこか影のある雰囲気を持つ女性。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対して、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべながらも春奈からの問いかけに静かに頷く。

続けて、純子から「きさらぎ駅」へたどり着いた経緯、その後の出来事などを聞いた。その内容は春奈には到底信じられるものではなかったが、純子の話の中で春奈はなぜ純子だけが「きさらぎ駅」へたどり着くことができたヒントに気づく。

純子の別れた春奈は自然に「きさらぎ駅」の舞台となった遠州鉄道の駅へ向かう。この選択が春奈の運命を大きく狂わせることになってゆく。

<キャスト>
恒松祐里 本田望結 莉子 寺坂頼我 木原瑠生 瀧七海 堰沢結衣 / 芹澤興人 / 佐藤江梨子

<スタッフ>
監督:永江二朗 脚本:宮本武史 制作プロダクション:キャンター 配給:イオンエンターテイメント/ナカチカ 製作:2022「きさらぎ駅」製作委員会(キャンター / イオンエンターテイメント / ナカチカ / BBB / 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ)
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

スタイリング:武久真理江
ヘアメイク:安海督曜