NHKが現在公開中の「第50回 番組技術展」の、後編をお届けします。

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(7)編集機用AI自動ぼかし加工プラグイン

 撮影した映像に入り込んだ顔にボカシを入れたり、取材地を特定されないために周囲をぼかすなど、映像素材では特定の部分にボカシを入れることが多くあるが、人の手をかけて行なう作業は結構な手間になるという。そこで、編集ソフトにプラグインという形で、自動的に狙ったところにボカシを入れるソフトが開発された。1分ほどの素材であっても、人の手で任意の場所(人の顔)にボカシを入れる場合、簡単なものでも5分ほどかかるという。それが複数人に及ぶ場合は、かける人数分の時間がかかる。そこでこのプラグインを使うと、AIがボカシの必要な場所を検出し、自動的に入れてくれるようになる。NHKの番組で言えば『ドキュメント72時間』などでの使用実績もあるという。

▲編集システムPrunusでのデモ。会場にいる記者の顔をAIが認識し、実際にボカシをいれているのが分かる。マスクをしていても反応する

(8)スマホ固定撮影システム

 ドラマ『光秀のスマホ』で使用されたシステム。戦国時代に生きる光秀がスマホを持っていたら? という内容で、スマホ越しの映像(使用者目線)を撮影するために、カメラ(ミラーレス一眼)とスマホを治具上に固定。出演者(演者)が実際にそれを装着(首からかける)、スマホ画面はプログラムということだが、スマホを操作しながら演技し、動き回り、撮影する、というもの。

▲このシステムを使うと、左のディスプレイに映っている映像が撮影できる

(11)機構レス 顔出しカメラシステム

 災害や事件が起きた時に、いち早くニュースを送出するための常設を目指す報道用システム。カメラとプロンプター、照明が一体化されており、キャスターはその前に座って、プロンプターに表示されるニュース(原稿)を即座に読み上げ、番組を送り出すことができる、というもの。カメラは4K対応で、カメラマンが画角を調整しなくても、自動的にフレーミングしてくれる機能を内蔵(3ポジション)。人の顔が中央にくるもの、地図を写すために人の顔を画面の右側に動かして固定するものなどがプリセットされている。

▲システムをキャスターの側から見た図。プロンプターの「マグニチュード」の文字の奥に、カメラが見える

(12)自動原稿トリミングシステム

 ニュース番組では、キャスターの手元におかれた原稿を天井カメラで撮影。その映像をプロンプターに表示し、キャスターはそれを読み上げているという(顔を正面に向かせるため)。その際、きちんと原稿(文字部分)をキャッチするためのシステムがこれ。紙の四辺にARマーカーが印刷されており、撮影した映像をPC内で検出。きちんと文字(原稿)部分がプロンプターに表示されるように調整してくれるという。

(15)音響透過マスク

 ネーミングそのままのマスク。コロナ禍によってマスク生活が続いているが、マスク越しの会話では、高域部分がマスクされてしまい(こもってしまい)、聞き取りにくい声(音声)となってしまう。それを解消するのがこのマスク。本来のマスクの機能(飛沫防止など)を維持しながら、フィルターの一部を、不織布よりも繊維の細かいナノフィルターに交換。これによって、高域部分の透過率を大幅に向上させているという。開発に協力したナフィアスとともに、将来的には商品化も検討しているということだ。

(20)避難所用ローカル放送スマホ配信システム

 災害発生時、NHKでは避難所にテレビ視聴システムを持ち込み、避難者たちにニュース番組の視聴機会の提供を行なっているという。いわゆる街頭テレビのような設置となるため、より多くの人に情報(番組)を届けるために既発されたのが、本システム。受信した番組を、Wi-Fiを使って配信。避難している人たちは手持ちのスマホを使ってニュース番組を見られるようになる、という仕組み。QRコードを読み込むことで(Wi-Fi接続用と番組視聴用の2回)、使えるようになる。

▲金属製のケースの中に、パソコン、Wi-Fiルーターを収納可能。パソコンに電源とアンテナ線をつないで使う

(22)生字幕同期機能を実現するテレビ受信機

 現在の放送(テレビ)には、リアルタイムで字幕を表示する機能が搭載されているが、生放送では、同時作成している字幕が、どうしても出演者の発声に遅れてしまう。それを解消するのがこのシステム。仕組みは簡単で、字幕の制作時間分、映像を遅らせて(およそ30秒)、映像と字幕を同期させる、というもの。現在、番組配信サービスNHKプラスの見逃し配信で運用中ということで、今後は、テレビにこの機能を実装していきたいということだ。

▲生字幕同期機能を搭載した試作機。同期のための信号は、ネットワーク経由で受信する仕様