本機はエレキットのTU8900を、アムトランスがTK=『管球王国』用にヴァージョンアップした完成品パワーアンプだ。300Bと2A3が無調整で差替え可能というのが最大の特徴。
本機にはアムトランス・ヴァージョンもあり、オリジナルの非オーディオ用カーボン被膜抵抗を1/2Wオーディオ用カーボン被膜抵抗AMRTに、また5Wのオーディオ用金属皮膜抵抗を採用。それと高音質オイルコンデンサーAMCYも採用して音質の向上を図っている。今回のTKヴァージョンは、抵抗をより大型の3/4W型に変更。5Wの金属皮膜抵抗とコンデンサーのAMCYは承前。さらにボリュウムをアルプス電気製に換装し、音量調整ノブを黒色に変更している。
回路は3段増幅で、12AU7による初段と2段目は直結し、最終段はコンデンサー結合。出力端から初段への負帰還は内部で有り無しを切り替えられ、ここでは無帰還で聴いている。全真空管を直流点火。電源トランスは、巻線からL/R ch独立している。本機は、出力管の差替えにはフィラメント電圧、B電圧の自動切換えで対応するのが特徴。2A3ではボリュウムノブの自照LEDが緑色に光り、300Bでは青色になる。
ゴールドライオンPX300B仕様を聴く。ECC82/12AU7はJJエレクトロニック製。CDプレーヤーと直結では、ほどよくスケール感と繊細さがバランスして表現の幅が広い。さらにプリアンプのウエスギU・BROS280Rを経由すると、やはり鮮度が増す。試聴が進むと堅固な構築感と柔軟な表情が相まってジャンルを選ばずに推進力が増し、より大きなスケール感が得られた。
参考試聴として、2021年製のウェスタン・エレクトリック300Bを差してみた。これは重厚にして、エネルギーの放出が尋常ではない。ビッグバンドジャズの本当に厚みのある輝かしい響きが立体展開され、ソロの高鳴りは天井を突き抜ける勢い。高密度な描写力や音場の構築感は余韻の精密描写に支えられている。ピアノの一音ずつ彫り込まれた明快なタッチも魅力だ。伴奏オーケストラの密に集合した響きがほぐれて、パート間の呼応が自然体なのも素敵だ。大型モニタースピーカーに対して出力トランスの限界はあるのだが、真空管のエージングが進めばさらに全方位的に表現力が増すだろう。
安心して300Bと2A3出力管の差替えができる、小型=高品位なシングルアンプを歓迎したい。